あなたのことを、嫌いになるから。 /氷高悠



あなたのことを、嫌いになるから。 (講談社ラノベ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2019年8月刊。
人を好きになったら死ぬ少年と、彼のことが大好きでたまらない少女。
文字通り必死の恋をする高校生二人の青春を描いた恋愛小説です。
好みなカップルなのだけど、テーマを考えると少し描写に物足りなさを感じました。
色んな要素が悪くないのに、全体として見ると勿体なさが気になるんだよなぁ・・・・・・

☆あらすじ☆
感情が昂ぶると、最悪、死に至る病――『感情性自己免疫疾患』。
そう診断されて以来、僕にとって、感情なんて無価値なものだ。
喜び、怒り、哀しみ、楽しみ――どんな感情も、僕を蝕む存在。
だから僕は、感情を持たない。誰のことも、好きにならない。
そんな僕に向かって、クラスメートの奈々川恵実さんが言い放つ。
「――私は、四東くんのことが好きっ!!」
僕が誰かを好きになるなんて、あり得ないはずだったんだ。
だって誰かを好きになったら、僕は命を落としてしまうのだから。
だけど芽生えていく自分の感情を、止めることはできなくて……。
これは、感情を持たない僕と、感情豊かな彼女の物語。

以下、ネタバレありの感想です。

 

「感情性自己免疫疾患」により、強い感情を抱くことができない少年・四東愛都
母の虐待により感情を殺すことに慣れてしまっていた愛都だったが、クラスメイトの奈々川恵実の直球な好意に絆され、やがて彼女に惹かれていく。
しかし愛都が抱えるのは「人を好きになったら死ぬ病」。
恋か、命か。
愛都は選択を迫られることになるのです。

 

テーマ自体はめちゃめちゃ好き。
大好きな人がいて、相手も自分のことを大好きで。でも感情のままに恋をしていたら、いずれ自分は死んでしまう。
恋を貫いて死ぬのなら、自分は満足できるだろう。しかし遺された彼女はどうなってしまうのか・・・・・・
そういう、ままならない恋心ってとても感情を揺さぶります。
忘れようと思っても忘れられない。でも忘れなければ死んでしまうっていう苦しさもエモい。

 

そんな状況で恋をする主人公カップルもまた可愛い。
あけっぴろげに好きだ幸せだと伝える恵実の天真爛漫さは魅力的で、これは確かに愛都が惹かれるのも分かる。
愛都が恵実に恋をしていく過程がまた良いんですよね〜
「かわいいな」から「触れたいな」になって、「この関係に名前をつけたくない」という迷いを経て、好きだという気持ちがどうしようもないものになる。
その流れはとても自然で、等身大で、きゅんと胸を疼かせるものでした。

 

ただ、うーん、、愛都と恵実のバカップルなノリは、これがラブコメなら何も考えずニヨニヨ楽しく読めたと思うんです。
でも本作って「命がけの恋」を描いているわけじゃないですか。
そう考えると何か違うなって・・・・・・
好きなテーマと好きなカップルなのに、それが合わさることにバランスの悪さを感じてしまいました。

 

命懸けで恋してる二人の姿にいまいち気持ちが入らなかったのは、恵実の恋心の掘り下げが足りないからかな。
なぜ恵実は愛都をそこまで好きになったのかが、私にはよく分かりませんでした。死を選ぶほどの恋を受け入れるって相当なものだと思うんだけど・・・・・・
正直、序盤の愛都は適当な相槌を打ってるだけだし、恵実の方も相手の反応を求めない会話を続けているので、ちょっとAIに話しかけてる子みたいな雰囲気があって。
そこで「めっちゃ好き!」とか言われても「どこを??」ってなるというか。
なんか恵実の人物像が薄いというか曖昧なんだよなぁ。
愛都の方は「恵実の距離感の心地良さ」という、理解しやすくて説得力もあって病気との関連性もばっちりなポイントがあったのに。

 

序盤でそういう違和感を覚えたまま、恵実を掘り下げることなく話が進んでいくため、なんとなく悲恋的な展開に乗れなかったんだと思います。
エモい話なのに片手落ちに見えて感情移入できなかったんだよなぁ。

 

そこらへん、「ずっと傍で見守ってきた」という強い背景がある春乃ちゃんの恋心の方が説得力もあったし共感できたんだよなぁ。
彼女と比べてしまうことも違和感を拭えない一因だったかもしれません。

 

用意された素材はどれも好きだったのに、料理の仕方が惜しかった。
良いところもたくさんある作品だけに「勿体ない」が先走って批判的な感想になってしまいました。すみません。
上にも書いたけれど「愛都の恋」はとても素敵でした。本当に素敵だったんだよ。

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