スーサイド少女 /衛元藤吾



スーサイド少女 (講談社ラノベ文庫 え 2-1-1)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2019年8月刊。
たまに無性に読みたくなる講ラノ文庫の暗黒青春小説。
読むと心がざわつくし、気持ち悪さに吐き気がするし、嫌な方の共感もあって嫌悪で死にたくなるんだけど、それでもどこか惹かれる部分があって。
本作もそういう作品。とある美しい先輩の「自殺」にまつわる、悪意と虚無に彩られた青春の物語でした。
色々と感情が剥き出しすぎてゾッとした・・・・・・挿絵もやばい。
そのくせ最後まで読むと気持ちがスッとするんだからタチが悪いのです(褒め言葉)
少し描写的に気になる部分はあったものの、面白かったです。

☆あらすじ☆
立入禁止の校舎の屋上を主な生息地としている捻じくれた高校生・因幡文は、飛び降り自殺をしようとしてやめた先輩の鈴鹿涼子を目撃する。死の間際にあっても何の色も映さない鈴鹿の瞳に興味を覚えた因幡は、いじめられていて球体関節人形と因幡にしか心を開かない捻じくれた後輩・小刑部智世とともに、鈴鹿のストーキングを開始する。鈴鹿の日常はシンプルで、時折死のうとしては無感動にやめる、その繰り返し。尾行、ゴミ漁り、盗聴……。小刑部の類まれなストーキング技術で、因幡は鈴鹿の心の奥底に潜り込んでいく。愚か者と煙の集まる場所で、彼らの捻じくれた青春が風に揺られる。寂しくなったら読んでほしい、奇妙なストーカーと自殺先輩のお話。

以下、ネタバレありの感想です。

 

いつものように屋上で本を読んでいた因幡文は、屋上から飛び降りようとする鈴鹿涼子の姿を目撃する。
結局自殺を取りやめた涼子を見つめながら、彼女の瞳に何の感情も浮かんでいなかったことが気になる因幡。

鈴鹿は死にたいのだろうか?
どうして死にたいのか。どうして死ぬのをやめたのか。
彼女が死ぬその時に、彼女はどんな気持ちを抱くのか。

鈴鹿のことを知りたいという衝動から、因幡は鈴鹿をストーキングする日々を送ることになるのです。

 

この主人公、もうね、本当に気持ちが悪かった・・・・・・

のんびり屋上で過ごしながら「今頃後輩ちゃんは殴られているんだろうなぁ。そうじゃない自分は幸運だ」とか思ってる時点でゾッとしました。
そういう気持ちはとても正直なのかもしれないけれど、あまりにも剥き出しな無関心と自分本位な感情に寒気がするのは仕方ない。ちょっとわかるけどわかりたくない。

 

人から感情を向けられることを嫌がり、「傍観者」に徹したいという因幡。
そんな彼が鈴鹿に魅せられ、彼女の観察を始めるのです。
尾行するし盗聴するしゴミは漁るしで、本人が知っているとはいえストーカーの行動はとても不気味。
ここまで自主的に動いといてよくもまぁ「傍観者でいたい」とか言えるよなって思うし、その矛盾に本人が微妙に無自覚なことがまた腹立たしくて。

 

なので、ある意味、私には後輩・小刑部智世の気持ちの方が理解しやすかった。

だって傷だらけの小刑部には無関心で何らかの行動を起こそうなんて欠片も思っていないのに、ポッと出の自殺志願女には興味津々で付け回しているんですよ。
自分のときはイジメの現場に居合わせてもぼんやり眺めていたくせに、監禁された鈴鹿の救出にはせっせと駆けつける。
そのダブスタっぷりは、小刑部に「因幡にとって鈴鹿が特別であること」を強烈に見せつけたことでしょう。
それよって生じる小刑部の苛立ちや焦燥、嫉妬は、おなじみというか、他に比べるとまだ理解しやすい気持ちに思えました。

何の感情も挟まない透明な無関心が心地よかったと言いつつ、小刑部は因幡に自分を見てほしかったと思うんですよね。
因幡に見えるように暴行の傷あとを晒していたフシがあるし。ヤンデレでメンヘラだよなぁ、この子。

 

まぁ小刑部が理解しやすいとはいえ、いかんせん本作で最恐な小刑部なので、好感が持てるかというと別の話になるのだけど。
もう恐いほんと恐い。ミステリアスクールビューティーの化けの皮をはぐために小刑部が起こした行動の数々がとっても恐い。
彼女なりに因幡の役に立とうとしたんだろうけど、私怨8割超えでしょ絶対。恐い。

 

因幡が執着する鈴鹿にムカついた小刑部という三角関係のなかで、3人がそれぞれ抱える事情が明かされ、それに触れるなかで激震するように動く3人の心を描き、やがて「鈴鹿の自殺」へと繋がっていく本作。

他者から向けられた悪意、他者に向けた悪意、そして傍観者に徹したい因幡の心。
本来隠すべき人の醜悪さと脆さを徹底的に描きつつ、奥底に隠されていた本心すら剥き出しに暴いていく。
そんな、一切の容赦がない物語でした。

 

というか女性陣への容赦が全然なかったのか。
因幡自身は割と最後までのほほんと観察者気取りでしたし。
女の子2人の凄絶な殴り合いを「勇ましいな〜」くらいの感想で眺めてる男。何なんだよ、あんた、ほんと何なんだよ・・・!

 

その因幡も、傍観者に徹しきれずに踏み出して乗り越えてしまったので、うん、彼もこれから変わっていくのでしょう。
まぁでも私の好み的に言えば、主人公の因幡にもう少し劇的な変化がほしかったかなぁ。
タイトルが「スーサイド少女」なので、彼があくまで語り手(もしくは少女たちの衝突を引き起こす舞台装置)に徹するのは仕方ないのかもしれないけれど。

 

読みながらずっと因幡にムカムカしていたのだけど、読み終えてしまうと不思議と気持ちがスッキリしていました。
群れからはぐれ、他者の感情を嫌悪し、それでも誰かとの繋がりを求めてしまった3人のお話だったのかな。
あれだけのことがあったのに、なんだか仲良しだなぁと思える関係に収まったのは驚きでしたけどね。これもこれで青春だと思えてしまう。そんな物語でした。

 

思ったより楽しめたのだけど、「鈴鹿が死ぬときに何を思うのかが知りたい」という因幡の行動理由を念入りに繰り返し描写されている点は気になりました。同じこと何度も言ってるなって。
表現の繰り返しで嵩増し感はあるのに、痺れを切らした小刑部が動き出すまでは「なにやってるんだろう、こいつら・・・」という虚無感が割と強かったような。そこが惜しかった。小刑部が動き出してからは面白いのだけど。

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