夏へのトンネル、さよならの出口/八目迷



夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年7月刊。
失った妹のことを心に抱え続ける少年。
彼が偶然見つけたのは「欲しいものがなんでも手に入る」という噂がある不思議なトンネルだったーー

夏の暑さがつれてくる、過去に残してきた後悔の記憶。
それを覆せるかもしれないハイリスクな希望。
そして、過去と今と未来を繋ぐ、ひと夏のボーイミーツガール。

この時期になると、夏に読みたくなるノスタルジックで良い青春小説が登場しますね。本作もとても面白かったです。

☆あらすじ☆
「ウラシマトンネルって、知ってる? そのトンネルに入ったら、欲しいものがなんでも手に入るの」
「なんでも?」
「なんでも。でもね、ウラシマトンネルはただでは帰してくれなくて――」
海に面する田舎町・香崎。
夏の日のある朝、高二の塔野カオルは、『ウラシマトンネル』という都市伝説を耳にした。
それは、中に入れば年を取る代わりに欲しいものがなんでも手に入るというお伽噺のようなトンネルだった。
その日の夜、カオルは偶然にも『ウラシマトンネル』らしきトンネルを発見する。
最愛の妹・カレンを五年前に事故で亡くした彼は、トンネルを前に、あることを思いつく。
――『ウラシマトンネル』に入れば、カレンを取り戻せるかもしれない。
放課後に一人でトンネルの検証を開始したカオルだったが、そんな彼の後をこっそりとつける人物がいた。
転校生の花城あんず。クラスでは浮いた存在になっている彼女は、カオルに興味を持つ。
二人は互いの欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶのだが……。
優しさと切なさに満ちたひと夏の青春を繊細な筆致で描き、第13回小学館ライトノベル大賞のガガガ賞と審査員特別賞のW受賞を果たした話題作。

以下、ネタバレありの感想です。

 

妹・カレンを自分の不注意で死なせた過去を抱える高校生・塔野カオル
夏のある日、塔野は「ウラシマトンネル」と呼ばれる都市伝説上のトンネルを見つけます。

噂の通り「欲しいものがなんでも手に入る」のならば、このトンネルの先にカレンがいるのではないか。
カレンを取り戻すことができるのではないか。

あるのかないのか分からないほど微かな希望。
それに反し、トンネル内で1秒過ごせば外の世界では40分が過ぎているというリスクだけは異様に大きい。

しかし諦められない塔野は、偶然関わるようになった転校生・花城あんずと手を組み、「ウラシマトンネル」を調べることを決意するのです。

 

この「ウラシマトンネル」をふたりで探索する非日常と、塔野と花城がおくる普通の日常が描かれていく本作。
ウラシマトンネルの特性ゆえに探索自体はなかなか進まないのだけど、そこで起こる様々な不思議が塔野と花城の事情を少しずつ暴いていき、それが二人の変化へと繋がっていく。
そんな、日常と非日常が交錯していく構成がとても面白かったです。

 

特に塔野の変化は良かった。
最初は過去にとらわれてばかりで他人に興味がなくて、唯一の友人にすらテキトーな物言いばかり。
家庭崩壊の引き金を引いた自覚があるためか、どこか上の空で日々を過ごす塔野。
そんな彼が、日常をぶち壊すかのように振る舞う花城に惹かれ、彼女との繋がりが現実への楔になっていく、というのが良いんです。
カレンへの未練(過去)と花城への恋心(現在)が塔野の中で衝突し、過去を乗り越えて現実を受け入れ、そしてウラシマトンネルを通り抜けて未来へ駆けていく。
終盤の疾走感はジュブナイルSFとしてのカタルシスが最高だったと思います。本当に面白かった。

 

一方で、ヒロイン・花城のキャラクターは個人的にちょっと消化不良だったり。
イジメを仕掛けてきたクラスメイトの鼻っ柱をへし折ったり(物理)、不良をシャーペンでめった刺しにしたり、序盤はエキセントリックな行動が目立っていてヤベェ感がすごいのだけど、塔野も言っていたようにマイルールを曲げないだけで普通の子なんですよね。
中盤以降は特に「普通の女の子っぽさ」が強く出ていて、その一方で最初のインパクトは急速に薄れ、ヤベェ感が好きだっただけに少し寂しく感じました。
うーん、なんというか、序盤と中盤以降の花城に若干のチグハグを感じるんですよね。彼女の秘密もウラシマトンネルを冒険する理由としてはもう一声インパクトが欲しかったかな・・・・・・

 

とはいえ、終盤の花城の行動は、この物語のヒロインとしてすごく素敵だったと思います。
もしも花城が待つだけで再会する結末だったら微妙な気持ちになっていたかも。一緒に冒険した二人だからこそ、リスクも二人で負ってほしかったから。
だからこの結末にはスッキリできたし満足でした。

 

ちなみに塔野はそんなに時間飛ばしたら実際問題色々やばくないか?どうするんだ??と心配していたのだけど、正直微妙に浮いてるように感じていた漫画家設定がオチに使われて少し楽しくなりました。なんか納得した笑

 

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