ただいま、ふたりの宝石箱 /あさばみゆき


ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫)
ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年1月刊。
癒やし系恋愛小説でした。こういうのとても好き。
鎧をぎっしりと着込んで心を守り、全てに対して壁を作って生きてきた主人公。
心に深い傷を負った彼女の再生は、ある男性との出会いから始まります。
人との距離感に思い悩み、揺れ動く心を繊細に描く作品でした。
踏み込むのは怖い。踏み込まれるのも怖い。誰かに寄りかかるのはもっと怖い。
1歩進んでは2歩下がるような臆病な彼女にヤキモキしつつ、二人の恋の行方にドキドキと胸が高鳴りました。
こういう小説は定期的に摂取していきたい。面白かったです。

☆あらすじ☆
ホイールを回そう。もう一度、私が輝くために。
仮面をかぶったまま仕事をこなし、<期待の逸材(ホープダイヤ)>と呼ばれていた涼子。
ある日ぷつんと切れてしまった糸に気づき退職してから、譲り受けた古民家で日がな趣味のアクセサリーづくりをして暮らしていた。
そんな家に店子として住むことになったのは、宝飾職人の「希美」さん。
趣味も合うと楽しみにしていた涼子だったが、やってきたのは優しげな雰囲気のきれいな顔をした男性で――?
心を潤す、あたたかな再生の物語。

以下、ネタバレありの感想です。

 

 

ある出来事をきっかけに心が折れ、突発的に会社を辞めた高星涼子
無職のまま持ち家で生活をするも貯金の残額は心許なく、生活費の足しにするために店子を入れることを決意する。
てっきり女性だと思い込んでいた店子が若い男性だったことに驚きつつも、涼子は宝石職人・佐伯希美とのぎこちない共同生活を始めることになる—— というストーリー。

 

人との間の適正距離の難しさをしみじみ感じる物語でした。
「普遍的に正解な距離感」なんてものは存在しなくて。
時と場合と人をみて、ここまでなら近づいていいのかな?もう少し離れた方がいいのかな?と考えながら慎重に距離をはかっても、上手くいかずに失敗することは多いし、相手が間違えたことで不快になることもある。
ケースバイケースが複雑すぎて本当に難しい・・・・・・そして、本作はそういう難しさに頭を悩ませ続ける主人公の物語でした。

 

幼少期のトラウマと不完全燃焼の恋に囚われつづける涼子。
深く傷ついた心を鉄壁の鎧で守る彼女は、まさにゼロか百かでしか距離をとれない人間なのだと思います。
誰にも心の中に入って欲しくないと守りに徹して、そうして臆病になっているから誰の心にも踏み込めない。
誰かに心を開いてもらうなら、自分も心を開かねばならない。そういう風に考える真面目さが更に彼女を頑なにさせるのでしょう。
希美のことを気にしつつ彼を突き放してしまう不器用さはとても痛々しくてもどかしい。

 

でも、その背景にある事情を知ると怯える彼女が不憫で仕方なくなるんです。
誰かに寄りかかって生きたくないと気を張る姿も、無防備な心を預けるのが怖いと不安に苛まれる姿も、心に傷を負ったまま時間を止めた幼い少女に見えてしまう。

天涯孤独の身からようやく得た家族を、自分が壊したという罪悪感。
養母の殺意を全身に浴び、矜恃すら踏みにじられた絶望感。
ただ一人の味方に恋をしてしまい、置いて行かれてしまった失望感。

どれも痛々しい・・・・・・
こんなのめちゃめちゃ傷つくじゃん。自分にはもう誰もいないんだって硬度マックスの女ができあがるのも分かる・・・・・・

 

せめて晃がもっと早く真摯に向き合って断ってくれたら良かったのに。
ルピナスの小説に託した想いは素敵だったけれど、いい年したおじさんが8年も引っ張るんじゃないよ・・・!と憤慨する気持ちもあったりして。
まぁ、臆病だったんですよね。踏み込めない涼子も、逃げ続けた晃も。
むしろ一度距離を置いたがために正しい距離の取り方を見失ってしまったんじゃないかな。
誰よりも近い存在だったからこそ遠くなってしまうと戻れないというのはある、気がする。

 

そんな涼子の心に優しく触れていく希美。
彼のように自然体で正しい距離をとれる人ってすごいと思う。それだけでプリンス感ある。
最初は大家と店子の線引きを踏み越えず、でも徐々に距離が近くなり、それでいて涼子が内心で怯えているときは踏み込まない(しかしここぞという大事なときは越権行為も躊躇わない)・・・・・・完璧か!完璧ですね!?
敬語がところどころ外れてるのも、彼なりの距離の詰め方だったんでしょうか。不意打ちで近づく距離にいちいち過敏に反応する涼子が可愛かった笑
やや出来すぎクンのきらいはあるものの、涼子の拒絶にふて腐れたりしてクスッとする可愛さがある人でした。いやむしろそういう隙も含めて完璧か??

 

頑な涼子の心を希美が解きほぐしていくストーリーはとても優しくて心が癒やされました。
そして同じくらい心を癒やしてくれたのは作中に登場する様々な「きらきらしたもの」。
特に万華鏡がいいですよねぇ。私ものぞいてみたい。
ペンダントタイプの万華鏡って実際にあるのかな?
落ち込んだときとかに覗き込んだら素敵なリフレッシュになりそう。

 

きらきらしながらゆらゆらと揺れ動く万華鏡は、まさに涼子と希美の恋そのもの。
たくさん傷ついた涼子だからこそ、これからの人生は希美にたっぷり甘やかされて幸せのなかで微睡んでほしいな。

良い恋愛小説でした。次回作も楽しみです。

ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫)

ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫)

あさば みゆき
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