ばけもの和紙庵の花嫁さん /糸森環


ばけもの和紙庵の花嫁さん (メゾン文庫)
ばけもの和紙庵の花嫁さん (メゾン文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2019年3月刊。
「ばけもの」と呼ばれる人外のものと人間が共存する世界を舞台に、お見合いで出会った二人の恋と日常を描いた物語。
現代日本でありながら不思議と隣り合わせな世界観がとても素敵でした。
「紙」にまつわる様々な謎や、そこに絡めて語られる日本文化のお話も面白かったです。
肝心の仮夫婦関係は適度な甘さと距離感が良かったものの、終盤が少し駆け足気味に感じた点が惜しい。本当に惜しい・・・・・・
もしシリーズ化するなら続きも読むと思います。

☆あらすじ☆
心に傷を負い、故郷の函館に戻ってきた桃子のお見合い相手は、烏(からす)の<ばけもの>の青年だった!?
お見合いの席に現れた烏、元親に驚きつつも、桃子は互いの見極め期間として「お試し夫婦」になることを提案。結婚に夢は見ない。たとえ相手が烏でも相性がよければいい。烏姿の元親とのお付き合いを開始した桃子だったが、ある日青年姿の元親に遭遇して……!?
和紙屋の店主のばけものの青年との、ほっこり系お見合いラブ

以下、ネタバレありの感想です。

 

「ばけもの」と呼ばれる様々な異形のものと人間が共存する現代日本。
結婚直前までいった恋人と破局した桜田桃子は、地元の函館に戻ったところ騙し討ちのような形でお見合いの席に座らされる。
そこで引き合わされたのは、和紙の店「こより庵」の主であり、烏のばけものでもある青年・八代元親
傷心でやけくそな心情もあり、勢いで元親とのお試し夫婦を提案した桃子は、そのまま彼との関係をスタートさせることになるのです。

 

まず世界観がとても面白いと思いました。
日常の中に異形が馴染んでいて、そのまま歴史を紡いできた世界。
人外のものたちを「ばけもの」と呼ぶけれど、そこに侮蔑の意味合いは薄く(ないとは言わない。人と人外の間に差別意識あるいは区別意識が存在するところもまたリアルな味わいがある)、どちらかというと「かぶきもの」「しゃれもの」みたいなニュアンスで「化けるもの=ばけもの」と呼んでいるような雰囲気を感じました。
このへんの絶妙なさじ加減が抜群に上手いですね。さすが糸森さん。

 

そんな世界で仮夫婦となった桃子と元親。
最初は烏の姿しか見せない元親にふわふわと現実味のない印象を抱いていた桃子が、元親の人型をみたり彼の仕事風景をのぞいたりするうちに、次第に心が惹かれていくようになる—— という桃子の一連の感情の動きは丁寧に描かれていたと思います。

自分を選ばなかった元彼への恨みめいた未練の感情もぴりりとしたアクセントになっていましたし。
それだけ彼を深く愛していた、というのも勿論あるのでしょう。
でも、どちらかと言えば、ただ自分の感情の置き所を見失っている戸惑いの方を強く感じるんですよね。
恋愛感情的な未練と言うより、自分の望んでいた未来像への執着を切れない感じというか。その辺が妙に生々しいんですよね。

あと、自分が羞恥心や絶望感でヘコんでいるときに周囲に慰められると「本当は裏でバカにしてるんじゃないのか?」と被害妄想と八つ当たりがミックスした感情を抱いて全部シャットアウトしてしまうというの、めちゃめちゃ分かる〜〜〜ってなりました。
不義理なのは十分に理解していても、自分の心を守るだけでいっぱいいっぱいなんだよね・・・と酷く共感してしまった。

 

桃子サイドが丁寧だったぶん、元親サイドの話がふわっとした感じにまとまったのは少し残念でした。
中学時代のエピソード、元親の恋愛感情を描く上で結構重要な話なんだろうと楽しみにしていたんですよ。
だからラストで又聞き&簡潔に説明されて終わったのが無念すぎる・・・・・・
ていうか一緒に探したってだけじゃ一目惚れの理由として不十分では!?まだ烏姿を自然に気遣った話の方が分かる。
うーーーーーーーん、、、、、これはあれでしょうか?続刊があれば深く語られるやつとか??

 

それはさておき。

 

元親の店に持ち込まれる、紙にまつわる様々な不思議エピソードの数々は面白かったです。
「紙」という身近なものに、「ばけもの」という不思議な存在をうまく絡める感じ。
ばけものの書いた言葉には力が宿るという設定がまた楽しい。

随所で触れられる日本における「流し」の文化も興味深いものでした。
「とにかくなんでもかんでも流すんですよ」という言葉の通り、罪も傷も願いも全て流してまっさらにしてしまう。
それが良いときもあれば悪いときもあるけれど、リセットできることへの優しさを感じたりもしました。

 

元親と過ごした日々によって、心に負った傷やかつての思い出も流すことができた桃子。
これから二人がどんな夫婦になるのか楽しみです。続きに期待します。

ばけもの和紙庵の花嫁さん (メゾン文庫)

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糸森 環
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