くれない姫は暴虐の王と絆を紡ぐ /奥乃桜子


【電子オリジナル】くれない姫は暴虐の王と絆を紡ぐ (集英社コバルト文庫)
【電子オリジナル】くれない姫は暴虐の王と絆を紡ぐ (集英社コバルト文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2019年2月刊。
コバルト文庫の電子オリジナル作品。
客人と魂を繋ぎ、危険な神域へ侵入する彼らの命綱となる魂緒姫。
なかでも最上の魂緒姫と言われるヒロインが客として迎えたのは、家臣すら恐れる狂気の武人。その男は最奥にある宝を求めていた。
共に他者からは「情がない」と蔑まれる二人の出会いは、やがて二人が抱える不遇の運命を変えていくことになるのです。
設定もストーリーも余すところなく描かれていて、1冊で綺麗にまとめた作品だと思います。良い少女小説でした。

☆あらすじ☆
情を持たない魂緒姫と、人の心を持たない鬼将軍。二人が出会ったとき、その絆は愛に変わる。
瘴気に満ちた「神座の森」には、人に益を与える「神世草」が生えている。それを求める貴人たちのため、彼らと「魂緒の糸」を繋ぎその身を守るのが、魂緒姫と言われる娘たちだ。
中でも「最上の魂緒姫」と称賛される紅。常に心を鎮め強固な糸を紡ぐ彼女は、一方でその情のなさを人々に罵られてもいた。
ある日、紅は新たな貴人の相手を命じられる。その人とは「母殺しの鬼将軍」と、誰もが恐れる武人・五条隆光。
常に不機嫌で、気に入らないことがあるとすぐに刀を抜く隆光を、家臣たちはひそかに恨んでいた。
だが紅だけは、隆光の暴挙の裏に秘められた孤独に気づいてしまった。
二人が心を通わせるとき、運命が大きく動き出す……。

以下、ネタバレありの感想です。

 

女神が囚われ続ける「神座の森」。
「神座の森」にのみ生える不思議な神世草を求める客人たちを手伝う魂緒姫には特殊な能力がある。
それは、客人の人となりを知り、その心に寄り添って理解することで強い魂緒の糸を紡ぐこと。
この魂緒の糸が魂緒姫と客人をつなぎ、瘴気に満ちた森のなかで彼らを守ることになるのです。

 

主人公・は、六人いる魂緒姫のなかでも「最上の魂緒姫」と呼ばれる少女。
一方で、紅はどんな傍若無人な相手の心も理解しつつ自身の心は全く揺らさないことから「情なき女」と蔑まれてきた。

そんな彼女の前に現れたのは、戦乱の世を平定して将軍となりながらも、情の欠片もないと恐れられる五条隆光
噂に違わぬ暴虐ぶりをみせる隆光を恐れつつ、紅は彼の瞳の奥に揺れる孤独を見つけ、役目に関係なく彼自身に興味を抱くようになるのです。

 

心を理解すればするほど、簡単に切れない強い魂緒の糸を紡ぐことができる。
しかし、もしも恋に落ちてしまえば、その想いは珠緒の糸を焼き切ってしまう。

この二つの設定を軸に、「魂緒姫の役目」と「芽生えた恋心」の中で揺れる紅の心情を描いていく物語でした。

 

知れば知るほど紅に近しい存在である隆光。
彼の心を知らなければ、彼の望みを叶えるほど強い魂緒の糸を紡げない。
しかし彼の心を知れば知るほど、紅はどうしようもなく彼に惹かれてしまうのです。
その想いは隆光を殺してしまうことになるのに。

 

「魂緒姫」という役目が負う様々な枷が、紅の恋を切なく盛り上げていくんですよね。
いつもなら出来る心のコントロールもままならない。必死で心の奥に想いを沈めても、不意に浮かび上がってきてしまう。
芽生えたばかりの恋心の可愛らしさと、それがどれだけ重い「罪」なのかを理解しているからこその焦躁。
その落差こそ本作の肝だったように思います。

 

一方で、紅に心の鎧を取り払われる隆光は、次第に彼女に対して素顔を見せるようになります。
最初は狂気に魅入られた鬼のような振る舞いが目立ち、心を知ろうと近づく紅にすら刃を向けた隆光。
このヒーロー大丈夫かいな・・・と不安に思うのも束の間、紅が見破る彼の本性の哀しさに目が離せなくなりました。
隆光はどこまでも優しい男だと思うんですよね。貧乏くじを率先して引きに行くタイプというか。
兄の方が有能だから、という彼の言には首を傾げたくなるのだけど(後日談はともかく本編は普通にイヤなヤツだったじゃん!)、自分を殺して他人のために尽くした姿勢は筋が通っていて素敵だったと思います。

 

さて、あまりにも紅の恋を切なく盛り上げるものだから、まさかの心中エンドもあり得るのか!?とドキドキしたものの、綺麗な大団円を迎えてくれてホッとしました。
まぁやっぱり隆光の兄に対する評価はブラコン入りすぎだと思うけれど。ううむ。最後だけ良い人っぽく振る舞っても私は忘れないぞ!

 

負荷の強い物語だったものの、細かい伏線の回収やキャラの掘り下げなど余すところなく描ききり、ストレスを残さない読後感でした。
1冊で綺麗に話をまとめているので満足感も良し。

欲を言えば、もう少し神域の描写がほしかったかな。
「神座の森」という面白い舞台が目の前に用意されているにも関わらず、その外での準備パートが長いので微妙に期待したものからズレてしまった感じ。設定的に仕方ないのだけど、もう少し色々と舞台を移動しても良かったんじゃないかと思って。動きが少ないというか。
まぁこのへんは好みの問題でしょうけど。クライマックスではちゃんと森の中のことも描かれているわけだし。

 

良い少女小説でした。次回作も楽しみです。


 

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