世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)1 /黒留ハガネ


世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ) 1 (オーバーラップ文庫)
世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ) 1 (オーバーラップ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年2月刊。
めちゃめちゃ笑った!
超能力に目覚めて筋トレよろしく鍛えまくり、どんな戦いにも対応できる無敵の超能力者になったものの、そもそも敵がいねぇんだよ!という絶望から始まるマッチポンプギャグコメディ。

現代日本の高校生が超能力に目覚めてもラノベやアニメのような非日常は起こらない。
高校卒業して大学生になっても何も起こらない。
大学卒業して社畜になってもやっぱり何も起こらない。

それなら俺が作ってやろうじゃねーか!と、無慈悲な現実を前に涙を拭いて立ち上がった男の物語です。
この主人公の語り口がキレッキレで、何ごともなく超能力を鍛えているだけのシーンですら超面白いからマジすごい(語彙力)

自分が欲しかったロマンあふれる青春を若人に味わってもらおう、その姿に自己投影してほっこりしよう、というマッチポンプあしながおじさんのお話でもあります。ヒーローはつくれる!

本当に楽しかった。平凡ループな日常に疲れた際のリフレッシュにどうぞ。

☆あらすじ☆
最強の超能力を最高に無駄遣い
ある日突然、超能力に目覚めた佐護杵光(さごきねみつ)。
そしてその力を狙う悪の組織が、突如彼の前に現れ――なかった。
隣の家の幼馴染が実は退魔師の子孫だと発覚し――なかった!
謎の美少女が転入し――なかった!!
平和過ぎる日常に逆ギレした佐護は、自分自身が秘密結社になる事を決意する。
日本中を探して見つけた有能美女・鏑木栞(かぶらぎしおり)を副官に引き入れ秘密結社「天照」を創設、資金調達事業も成功。
蓮見燈華(はすみとうか)、高橋翔太(たかはししょうた)という新メンバーも加えたところ、ついに世界を滅ぼす魔王が現れ――なかった!
そこで佐護は、とある計画を思いつくことになり……?
ひとりの最強能力者が紡ぐ、圧倒的マッチポンプギャグコメディ、開幕!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

17歳のある日、煎餅の欠片を拾おうとして念力能力の存在に気づいた主人公・佐護杵光
最初は3gの物体を押したり引いたりするだけのショボい能力だったものの、筋トレの要領で鍛えれば成長することに気づいた佐護は、夢中で特訓に明け暮れます。
筋肉痛ならぬ念力痛に苦しみつつも、訓練によって様々な念力の使い方を発見していく佐護。
これは超能力で俺TUEEEが始まるのでは?非日常でヤバい敵との戦いに巻き込まれてしまうのでは?(ワクワク)と期待しながら訓練に明け暮れた佐護は、高校を卒業し、大学も卒業し、社畜として心をすり減らす日常の中で悟るのです。非日常は待っていても来ない、と。

 

というわけで、俺TUEEEな超能力に目覚めたものの普通すぎる日常にガッカリした主人公のお話。
ノリの良い主人公の語り口のおかげで、何も起こらない段階でもめちゃめちゃ楽しいんです。
何も起こらないまま大学まで卒業してしまったときは「どうするんだよこれ。社会人になっちまうぞ」と私と佐護とのシンクロ率は100%だった。
笑うやんこんなのww 日常が無事すぎて吐きそうww

 

序盤の佐護とか、誰にも能力話さないし一生懸命探しても仲間も敵もいないしで、セリフもなく黙々と筋トレならぬ念力トレーニングしてるだけなんですよ。
それなのにこんな面白いってすごくない?いや独自のトレーニング理論が読み応えあって楽しいというのもあるのだけど。
「頑張ったらこんなことができるようになった!」というアドレナリン全開のテンションから「でも敵がいないから使い道はない・・・」って虚無タイムに突入するのが切なすぎてww 高低差やめろww

 

ほんっとーに何も起きないまま通り過ぎていった佐護の青春。
どれだけ鍛えた超能力も社畜の役には立たず、夜中にひとり疲れ切った体を缶ビールでなぐさめる毎日。
ふと見た深夜アニメでは、超能力者の主人公が美少女相手に大活躍している。
いいなぁ・・・・・・俺もこういう青春が送りたかった・・・・・・俺だってこの主人公みたいなこと出来るのに・・・・・・

 

・・・・・・泣ける!

 

これは泣けるよ!!(笑うけど!)

 

だって佐護がどれだけストイックに能力を鍛えていたか、どれだけひとりぼっちで奮闘していたか、どれだけ非日常を待ち望んでいたか、読者は散々知っているわけじゃないですか。
もうめちゃめちゃ同情するよね。宝の持ち腐れ感半端なくてつらみ。

 

でもこの物語はここからが本題。更に面白くなっていくのです。

 

それは逆転の発想。非日常が来ないなら自分で非日常を作ればいいじゃない。
そうだ超能力者の敵となる「世界の闇」を作ろう。「世界の闇」と戦うヒーローたちの秘密結社を作ろう。それだけの力が佐護にはある。
筋肉は裏切らない。念力も裏切らない!

 

というわけでマッチポンプのはじまりはじまり。

 

面白いのは、このマッチポンプが佐護自身のためだけにあるわけじゃないということ。
だって彼はそれが自作自演であることを知っているのだから、本当の意味で彼が望んだ「非日常」ではないんですよ。
失われた青春が戻ってくるわけではないのです。

 

でも佐護にとっては「ごっこ遊び」でしかなくても、何も知らない構成員にとっては新鮮で刺激に満ちた「非日常」。
フレッシュな中高生を非日常に連れ込み、超能力に目覚めさせ、悪と戦う使命を与える。
そうすれば高校生は退屈を感じない中二な非日常を満喫できるし、そんな彼らの姿に自己投影することで自分もほっこりできて嬉しいはずだ・・・!

というマッチポンプだけどWin-Winを目指す「あしながおじさん」の物語でもあるのです。
趣味が悪いと言うなかれ。いや悪いんだけど。でも面白いから良いんだよ。
「子ども心を捨てられなかった大人」の悪あがき感が超楽しい。「大人」であるところが最高なんです。全力本気のごっこ遊びの真髄をみた・・・!

 

佐護が半ギレで開き直った以降は登場人物が増え、物語はどんどん賑やかになっていきます。
特に共犯者兼副官兼スポンサーの鏑木栞のキャラが濃くて好きw
鏑木さんの資金力と行動力のおかげで物語は躍動感が増すし、佐護とロマンを通じ合ってるところにほのぼのします。
ノリノリで「秘密結社のクールでミステリアスな大人ごっこ」をして、こっそりサムズアップ交わすシーンとかね。二人とも可愛すぎか。
一緒に設定を考えてる時とかめちゃめちゃ楽しそうで、みてる私まで楽しくなるw

 

そんな悪い大人達に目を付けられた、何も知らない構成員の二人。
念仏系女子中学生・蓮見燈華と、開眼させられた男子中学生・高橋翔太
「よーし、おじさんボーイミーツガール仕掛けちゃうぞー!」から始まる二人の出会い、めっちゃベタな現代異能バトルの導入になっているんですよね。
このシナリオ作った佐護の気持ちわかるwwこういうの私も大好きww

 

そんな裏事情を知らず、秘密結社の構成員として自己を磨いていく燈華と翔太。
どんどんキラキラしていく二人の距離感や日常はとても青春感あって良い。
佐護もほっこり。私もほっこり。
物語の内にも外にもデバカメだらけですね。

 

翔太の負けイベや、ラストの「人間卒業実技試験」(高校入試に専念する前に派手な思い出つくっとこうね!)も、完全なるマッチポンプなのに面白くてすごい。
佐護も鏑木はノリノリだし燈華と翔太は最高に輝いていたし、みんなハッピーだね!骨折ったのは痛そうだったけど!(てかイグを鍛えるために自分をグサグサ傷つけてきた佐護、はたから見るとだいぶヤバくない・・・?)

 

あー楽しかった!
ラストで秘密結社の存在の片鱗に世間が感づいたけど、ここからどうなるのでしょうか。
マッチポンプの規模の拡大と、翔太くんがどこまで面白くなれるのかに期待したいところ。

 

ところで特別編登場の特殊情報捜査官ニコラス刑事は本編でも絡むのだろうか?
それともこれは結局みんなロマンを求めてるんだよ・・・というアレなのか。

 

次巻も楽しみに待っています!


 

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「世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)1 /黒留ハガネ」への2件のフィードバック

  1. なろう版の鏑木さんが整形を繰り返して理想の自分になろうと努力している設定が消えてしまったのが少し悲しい以外はとても良かったです
    異常な量の設定と奇抜な展開で有名な作者さんでずっと応援してたので好評で嬉しいです

    1. コメントありがとうございます。

      なろう版の鏑木さんに整形設定あったんですね・・・!
      美容整形だと人を選びそうな話になるからかな。編集部の判断でしょうか。
      それだけ強い印象を与える設定だと、WEB版からの読者さんからすればキャラクターが欠けてしまうような気持ちになるかもしれませんね。お気持ち、お察し致します。

      それはさておいても、書籍版もすごく楽しかったですね!
      設定の作り込み、本当にすごいです。分量も読み応えもあるのに隙あらば笑わせてくるからスラスラ読めてしまうところも良い!

      遅ればせながら私も応援していきたいと思います。一緒に盛り上げていきましょう!(^^)/

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