漫画家先生とメシスタント /仲村つばき


漫画家先生とメシスタント (富士見L文庫)
漫画家先生とメシスタント (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2019年2月刊。
漫画家優遇アパートの管理人の娘が、食生活ボロボロな漫画家たちに手料理を振る舞いながら、彼らの仕事風景を見守っていく物語。
SNS宣伝や漫画アプリの話など、デジタル転換期の漫画業界にまつわる小ネタが散りばめられていて面白かったです。
主人公がつくる素朴なおうちごはんがとても美味しそうだったんだけど、自分の食生活を振り返ってビクッとしたり笑

仲村つばきさんはこれがライト文芸デビューになるのかな?
イラストのあきさんとのタッグは「シンデレラ伯爵家の靴箱館」以来ですね(あれ好きだったな〜)
話は綺麗に終わっているけれど、続きがあるなら読みたいです。

☆あらすじ☆
人気少女漫画家は男性の二人組!? 彼らの“メシスタント”はじめました。
大泉学園駅にあるアパート「ヒット荘」。大家の娘のときわは、店子の鈴木さんが空腹で倒れているのを見つける。冷やし中華を作ってあげたことがきっかけで、鈴木さんが人気少女漫画家の作画担当と知ることに!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

漫画文化を愛する父が、古き良き漫画家コミュニティを作るために始めた「ヒット荘」

そのヒット荘に大好きな少女漫画「恋色ノスタルジック」の作家・藤原ホイップが住んでいて、しかも先生は男性2人組ユニットで、さらには三食栄養ゼリーで済ませて行き倒れるような悲惨な食生活をしていた—— 

・・・・・・という衝撃の事実を知った女子高生・一ノ瀬ときわは、憧れの作家の現実に戸惑いつつも、彼らのために家庭料理を振る舞うようになるのです。

 

修羅場に陥ってるときは食生活から崩れていきますよね。わかる。
女子高生ながら主婦力高いときわのサポート、漫画家先生たちはとても嬉しかったことでしょう。ごはんレンチンすら面倒くさいって重症ですもんね。早晩病気になっていたと思う。
そんな漫画家たちに振る舞うときわの料理は、栄養面に慎重に気を配った美味しいごはん。
彼女の料理からは「健康でいられますように」という願いを強く感じます。
こんなに栄養面を意識するのは母の病死が影響しているわけだけど、それでも高校生のうちからここまで配慮できるっていうのが偉すぎて尊敬しつつ、自分の食生活を振り返って焦る気持ちが生まれました・・・・・・

さて、女子高生にご飯の面倒をみてもらう少女漫画家「藤原ホイップ」。
その正体はサラリーマンの鈴木圭太と大学生の長山レオ
少女漫画家が男性っていうケース、実際どれくらいあるのでしょうか。
兼業漫画家もどれくらいの割合でいるんだろう。小説家はほとんどが兼業と聞くものの、漫画家って作業量が小説家よりも大変なイメージあるし。いくら作画のみとはいえ、かなり生活きつそう・・・・・・だから普段から食生活が犠牲になるのか。

 

そんな「藤原ホイップ」のお世話をしながら、ときわは少女漫画家たちに起こる様々なトラブルに立ちあわせてしまいます。
本作はこの漫画家が抱えるトラブルの話が一番面白かったです。アプリ作家と本誌作家の作画意識の違いとかね。
私が読んでるアプリ(マンガワンとかマンガパーク)は横にスライドして1ページずつ見ていくタイプだから普通の紙書籍と見方はあまり変わらないのだけど、そういえば『チーズ・イン・ザ・トラップ』とかは縦スクロール前提だったな。
あと、中国では縦スクロール漫画の独自文化が花開いてるっていう話をこないだTwitterで見た気がします。
媒体の違いって、表現者にとってはかなり難しい問題なのでしょうね。
そういえばアプリを前提とする作品は見開きをあまり使わない傾向にあるかも?
逆に見開きをたくさん使う作風の漫画は電子書籍では読み心地が微妙ですし。私も内藤泰弘さんの作品とか岩本ナオさんの作品とかは電子書籍じゃ魅力が落ちるから紙媒体で買うもんなぁ。
このあたり、デジタル過渡期の漫画家の試行錯誤をもう少し読んでみたかったな、と思いました。

 

それと、SNS宣伝の話はタイムリーだなぁと思いながら読みました。
つい最近も「タイトルを変えて商業漫画の1話をSNS上に掲載すること」が問題になっていましたし。
あれは一見して宣伝だと分からないスタイルを問題視する人が多かったし、本作のケースと問題の根っこは似ている気がする。
まぁ、本作に出てきたやり口の方が悪質ですけどね。
二次創作ファンアートをバズらせて自作の宣伝をリプツリーに貼り付けるとかねぇ。リアルなら炎上しかねない。
犯人が身内だったから作中ではなぁなぁで収められたけれど、身内とは言えアウトだと思うんだけどな・・・・・・
ときわとは和解していたけれど、レオと同じく私もこの子だいぶ苦手だ。

 

漫画家たちの創作風景を見守りつつ、ときわ自身の中でも変わっていくものがあり、青春小説としても面白かった本作。
なかでも、オタク文化を愛する人間がオタクではない周囲に自分をさらけ出すことは勇気がいること、という話がすごく印象に残っていて。
私はときわと同じようなことを高校時代にしていた人間なので、彼女の気持ちにすごく共感してしまいました。
漫画趣味はともかく、少女小説やラノベの方は結局隠し通しちゃったなー。今もか。
そんな私にはときわの勇気が眩しく、ラストの彼女の言葉は心に刺さりました。

 

さて、夢をみつけ、それに向かって歩きだすという形で綺麗に締めているけれど、続きはあるのでしょうか。
ときわと圭太の関係も気になるけれど、年齢差がある彼らの恋は、ときわが大人になってからじゃないと動かなそう。
JKに手を出す男はやばい、という認識をあれだけ念押ししてましたから。
でもボイレコプレゼントのくだりは仲村つばき作品のヒーローらしくてクスッとしました。なんかズレてる感じが笑

とは言え、続きがあるなら読みたいです。
楽しみに待っています。


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