つるぎのかなた /渋谷瑞也


つるぎのかなた (電撃文庫)
つるぎのかなた (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年2月刊。
面白かった!
青春を剣に捧げた少年少女の闘志が交錯する剣道物語。
視点変更が多いため読みにくさはあるものの、熱く盛り上がるときの勢いが素晴らしい。
特に終盤の戦いは主人公達の高揚感に引きずられるように読みふけってしまいました。

たったひとつの頂点を目指して衝突する最強と最強。
あまりにも激しく、それでいて爽やかなライバル関係が最高でした。いやほんと最高だった。

粗いところはたくさんあるけれど、これは良い青春スポ根小説だと思う!
夏に2巻が出るようなので、続きも楽しみです。

☆あらすじ☆
第25回電撃小説大賞《金賞》受賞作!
「好きじゃないんだ、剣道。……俺を斬れる奴、もういないから」
かつて“最強”と呼ばれながら、その座を降りた少年がいた――。
“御剣”の神童・悠。もう二度と剣は握らないと決めた彼はしかし、再び剣の道に舞い戻る。
悠を変えたのは、初めて肩を並べる仲間たち、彼に惹かれる美しき『剣姫』吹雪、そして――孤高の頂でただひたすらに悠を追い続けていた、高校剣道界最強の男・快晴。
二人が剣を交えた先で至るのは、約束の向こう、つるぎのかなた。
「いくぞ悠。お前を斬るのは、この僕だ!」
剣に全てを捧げ、覇を競う高校生たちの青春剣道物語、堂々開幕!

以下、ネタバレありの感想です。

 

かつて頂点を極めながらも、剣を捨てた少年・水上悠
しかし転校先の高校で剣道部に勧誘された悠は、辞めるはずだった剣の道に再び戻ることに。
その先で待っていたのは、かつて「約束」を交わした男・乾快晴
約束を忘れずに高校剣道界最強となった快晴の強さと、悠の強さに折れない部活仲間たちの強さに知り、悠は再び剣道の頂点を目指すことになるのです。

 

水上悠が剣士として再生する物語としては割とストレートな構成。
ただ、それを悠を取り囲む複数の人物の視点を通し、多角的に描いていくところが本作の特徴だと思います。

この視点変更、かなり頻繁に行われるんですよね。しかも視点人物になるキャラがとても多い。
そのため読んでいて少し落ち着かない感じがありました。
まぁでも視点を切り替えるときは段落を変えてくれるから何とか読めるか——— と思っていたら肝心の試合シーンで視点がごちゃつき出す始末。
改行もせず視点を入れ替えるから、地の文のモノローグが誰の気持ちなのか、キャラの動きを追っているのは誰なのか、読みながら一瞬迷ってしまうんです。
うーん、読みやすい文体とは言えないかな・・・・・・

 

でもこれがまた不思議な効果を生んでいて。

 

特に試合シーンは、視点が混ざり合うからこそ生まれる不思議な一体感を感じました。
悠VS快晴のラストバトルとかね。
二人の闘志が溶け合い、互いの存在だけを全身で感じ取り、そうして戦いに没頭していく—— それがダイレクトに伝わってくる。
試合の緊張感と高揚感、強敵と剣を交える喜び、「勝ちたい」「負けたくない」という強い意思。
試合中に彼らが発する様々な感情が、視点が混ざることで2倍にも3倍にも膨れあがるようでした。文章が混沌と化していくほど、描かれる熱量が高まっていくような・・・?

まぁ読みにくいんですけどね。何してるのか分かりづらいと思う箇所もあったし。
でも考えるな!感じろ!という勢いがあった。強い感情に引きずられるような興奮があった。そこが素晴らしいと思いました。

 

キャラも良いんだよなぁ。
主人公の悠とライバルの快晴の関係性とかめっちゃ好きです。ザ・ライバル!って感じで実に良い。
途中までは小生意気な悠のキャラがあまり好きじゃなかったんだけど、快晴と絡み始めてからは2人セットで好感度爆上げでした。

高みに到達して剣を捨てた男と、高みを求めて剣を磨いた男。
共に孤高の時代を経て、ようやく肩を並べた二人が目指すのは「つるぎのかなた」。

そういう二人が、最強をかけた真剣勝負を「ふたりっきりのてっぺんで遊ぶ」って表現するのがめちゃめちゃエモいんです。
あの日交わした約束の先に、「今」があるんだって思えるから。
鬼のような形相で闘志を燃やすくせに、根底に無邪気な友情があるのが最高なんだよなぁ。試合後の2ショット写真、はちゃめちゃに良い・・・・・・

 

悠と快晴の最強対決を盛り上げ、二人をサポートする周囲も良キャラ揃いだと思います。
入部したあとも孤独を引きずる悠を、めげずに「部活仲間」として叱咤激励する剣道部メンバーがそれぞれ素敵。
一生懸命に悠と向き合う仲間がいたからこそ、悠は変わることができたんですよね。それを如実に感じた試合中の一幕が良かった。
快晴だけに集中していた悠が、試合中に一瞬だけ仲間たちを視界にいれ、彼らからのエールを受け取る。
あんなに孤高をこじらせていた悠が、土壇場で部活仲間の存在を思い出すんですよ。おまえ変わったなぁ〜!と胸アツな瞬間でした。
そういう関係性を築けた剣道部の絆に感動したし、部活青春モノの醍醐味を感じました。

 

日常を盛り上げるラブコメパートも結構良かった。
これってダブルヒロインものになるのかな?
二人のヒロインはどちらも魅力的なのだけど、私は深瀬史織派ですね。
剣道初心者というポジションが上手い具合に光っていたし、何より、したたかなところが好き。優しくて強い心の在り方が好きです。
個人的には、悠に欠けている部分を埋めてくれるのは史織みたいな女の子だと思う。

 

もう一人のヒロイン・乾吹雪もポンコツ可愛かったのだけど、この脳筋ちゃんは快晴のヒロインでもある気がするんですよね。
険悪な関係と思わせて、次第に明らかになっていくブラコンみがキュートだったし笑

 

でもまぁ現状どちらのヒロインも快晴に負けてるんですけど。ライバルが強すぎる。
もはやこれメインヒロインは快晴では・・・・・・悠にとって一番は快晴だし快晴も譲る気がないから両想いでは・・・・・・(うたた寝して肩に頭のっけるシチュを男同士でやっちゃう?それ、そこでやっちゃうの!?笑)

 

キャラが多い弊害もあったけれど、そのわちゃわちゃ感も楽しい作品でした。
1巻で生まれた剣道部の絆は、2巻の団体戦でどう発揮されるのか。
続きも期待したいと思います。


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「つるぎのかなた /渋谷瑞也」への2件のフィードバック

  1. ラノベだとすごく珍しいスポーツもの、しかも剣道。かなり攻めた題材選択でまずそこに驚きました。それでおっかなびっくり読み始めたんですが……、剣道の知識ゼロの僕でもとても楽しく読むことが出来たと思います。僕はスポーツものって「そのスポーツを全く知らない人を上手く引き込めるか」が一番重要だと思ってるんですが、つるぎのかなたはそれを軽々クリアしていたと思います。
    視点変更の忙しなさは「毒でもあり味でもある」と思いました。試合中はみかこさんの言う通り一体感を生み出す要因、味として機能していたんですが、ところどころ毒のように感じることもあり……、ただ味として機能しているシーンのことも考えると一概に「直して」とは言えず歯がゆさが……。これからどうなっていくのか、期待半分、不安半分という感じです。
    粗削りだけど勢いがあって面白い、というのは、前回受賞作の「錆喰いビスコ」と似ている気もして、とても面白かったです。2巻発売も楽しみに待ちたいと思います。
    あ、あと僕も史織ちゃん派です。強かメガネ美少女最高。

    1. スズナリンゴさん、コメントありがとうございます。

      ラノベだとスポーツも剣道も、なかなかレアですもんね。
      とっつきにくさはあると思います。私も「剣道まったく分からないけど楽しめるかなぁ?」とおっかなびっくり読みましたし笑
      仰るとおり、知識ゼロでも楽しめることが第一で、その点は何の問題もなくスムーズに楽しめる作品でしたね!
      具体的なイメージが持てない場面も少しあったんですけど、なんとなく勢いで読めちゃいました(^^)

      >視点変更の忙しなさは「毒でもあり味でもある」と思いました。

      同感です!
      視点変更の多さは、やはり読みにくいと思うのです。読みにくさはスピード感を削ぎますし、こちらの集中力も欠いてしまいます。
      それを踏まえても勢いと熱さを感じさせるところが凄いのですが、どこまで計算していたのか・・・・・・
      受賞作は文体や構成が荒削りでも2巻目から上手く昇華できるパターンもあるので(「錆喰いビスコ」はまさにそうだと思います)、次に期待したいですね。

      >あ、あと僕も史織ちゃん派です。強かメガネ美少女最高。

      なかま!!
      史織ちゃん良いですよね。ひとり違うポジションから悠を導くところとか、ズルいんだけど優しいところとか、メガネとかメガネとか、めちゃめちゃ可愛かったです。がんばってほしいなぁ

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