言鯨【イサナ】16号 /九岡望


言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA)
言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年1月刊。
『エスケヱプ・スピヰド』(電撃文庫)の九岡望さんによる待望の新作小説。
めちゃくちゃ面白かったです。
砂に覆われた大地で生きる少年が、世界を創造し今なお人々の生活を支える神『言鯨』の正体に迫る物語です。
謎と緊張に満ちた冒険譚にワクワクしたし、その先に待つ哀しい真実と、神秘を感じるクライマックスが最高でした。
うーん、これはネタバレなしに語るのが難しいなぁ。
とりあえず、エスケで九岡さんの作る世界観に惚れた人に読んでほしいなー、と思ったり。

☆あらすじ☆
神“言鯨(イサナ)”によって造られたとされる砂の時代。
骨摘みのキャラバンで働く歴史学者志望の少年・旗魚(カジキ)は、裏の運び屋・鯱(シヤチ)と歴史学者・浅蜊(アサリ)に出会う。
接近を禁じられた言鯨の遺骸の調査に赴くという憧れの人物に同行することになり胸躍る旗魚だったが、遺骸を見た浅蜊が妙な言葉を口にした瞬間、世界が一変し始めた――。

以下、ネタバレありの感想です。
ネタバレ踏まずに読んだ方が楽しい作品だと思うので、要注意で。

 

地球ではない何処かのことを考えるとき、ファンタジーなら「世界」で、SFなら「星」。そんな風に無意識に思考を切り替えてしまうんだなぁ、と今更気づきました。
本作の舞台についても、最初は「砂に覆われた世界ってロマンあるな」と見ていた場所が、物語が進むにつれて「砂の惑星だったのか」と認識が変化するんです。このファンタジー脳からSF脳に切り替わる感覚が個人的にはすごく面白くて好き。
主人公達はずっと同じ場所にいるのに、見え方だけが塗り変わる感じ。
こういうのをセンスオブワンダーっていうんでしたっけ。わかんないけど、めっちゃ楽しい。

 

というわけで、(ハヤカワ文庫から出ている時点でSFであることを隠す意味はないのかもしれないが)、本作はSF小説です。

 

砂漠で覆われた大地、そこに遺骸をさらす【言鯨】、【言鯨】からとれる言骨によって生活を支える人々。
まずはそんな特殊な用語に満ちた世界観にワクワクしました。見知らぬ世界に足を踏み込む高揚感がたまらない。
どういう仕組みで動いている世界なのかを理解するまで多少は戸惑うのだけど、それもまた醍醐味ですよね。
細部まで丁寧に作り込まれているから、とても読み応えがありました。

 

物語の主人公は、そんな砂の世界で生きる少年・旗魚
憧れの歴史学者・浅蜊と出会ったことをきっかけに、旗魚は【言鯨】に隠された真実と、それによってもたらされる世界崩壊の危機に巻き込まれていくことになるのです。

 

序盤からみっちりとした情報を叩き込み、その消化もままならないうちに言鯨の覚醒と仲間の消失という大事件が起こる。
まさに怒濤の展開なのだけど、本当にすごいのはここからだった。
悲劇が逃亡劇へと切り替わり、旗魚にも変化が起こり、協力者を得ながら転がるように真実へと迫っていく。
その流れがとてもスピーディで面白いんです。ぐいぐい読ませる力が強い。

 

真実に触れていく旗魚だけでなく、彼と行動を共にする珊瑚もまたキャラが立っていて魅力的でした。
全員が自分の意思を強く持っているため、物語はさながら群像劇のような味わい。多角的かつ躍動的な物語の構成と、そこで描かれるドラマが素晴らしいのです。
個人的には、こういうところがエスケの九岡さんだな〜と思ったり。
味方だけでなく敵側の掘り下げも丁寧なので、それぞれの信念や意思の衝突が胸に響く。
ラストへ向けてどんどん熱量を高め、そのまま燃え尽きてしまうような・・・・・・そういう熱さと切なさを感じました。本当にとても良かった。

 

エスケの九岡さんっぽいといえば、エスケ読者なら「蟲」の存在にニヤッとしてしまったのでは?私はしました笑
虫全般苦手なんだけど、九岡さんの描く虫や蟲は強くて愛嬌があって好きなんだよなぁ。

 

怒濤の展開を繰り広げた少年の冒険は、やがて星の秘密にまで辿り着きます。
創世の物語はまさに神話的だったけど、その全てを知った旗魚が迎えた結末もまた神秘的で神話的なものでした。
物語で出てくるのは「言鯨15号」なのに何故タイトルは「16号」なのだろう?という疑問はラストを読んで納得。
16番目となった彼は、旅の果てに出会いを得ることができるのかな。
真実を知りたいと夢見る少年に相応しいロマンチックな結末だったと思います。ちょっぴり切ないけれど。

良い作品でした。九岡さんの次回作も楽しみです。


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