今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います /夕鷺かのう


今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います (集英社オレンジ文庫)
今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います (集英社オレンジ文庫)

評価:★★★☆☆
2019年1月刊。
少女小説で活躍する夕鷺かのうさんのオレンジ文庫デビュー作。
夕鷺かのうさんと言えば、物騒なタイトルやシチュエーションで目をひきつつ、賑やかなコメディに仕上げる作風が持ち味だと個人的には思っていて、本作のタイトルも「そうは言っても楽しい感じになるんでしょ〜!」と期待しつつ読んだんです。・・・・・・読んでしまったんです。

いやぁ、まさか、ブラックな職場を舞台にした鬱グロ系ホラーの連作短編集だったとは。タイトル、マジでそういう話だった。

帯にデカデカと「あー!スッキリした♡」と書いてありますが、個人的にはあまりスッキリできず、読後も胸にモヤモヤが残っています。
グロ描写に力が入っているし、気持ちが引きずられるような鬱描写は流石。
客観的にみれば割と面白い作品だとは思うものの、ちょっと私向きではなかったようです。

☆あらすじ☆
些細なことから上司・岸本の執拗な嫌がらせを受けるようになった玲美。疲弊しきった玲美は、彼を殺したいと夢想するようになる。こいつの頭をぐしゃりと潰してやれたら―。業績を掠め取る係長、若い女子を目の敵にするお局、会社に寄生する豚野郎。こんな最低なヤツらが迎える結末とは!?会社で頑張るすべての人々に捧げる、ちょっとブラックなお仕事小説!

以下、ネタバレありの感想です。

 

本作に収録されているのは、「職場の上司がパワハラクソ野郎すぎて鬱になりそうです」というスタートから始まる3本の短編。

どれもブラック上司に苦しめられる憂鬱な日常から始まり、主人公が殺意あるいは自殺願望を心に育て続けるなかで不思議な出来事が起こるーーという流れで話が進みます。

ホラー的なノリで描かれ、最後もゾワッとする形で締めるので、ちょっと「世にも奇妙な物語」を見てる感じに近いかも。

 

とりあえず1本ずつ感想を。

 

表題作。
上司がクソ野郎すぎて精神的にも肉体的にも追い詰められ、友人の結婚式の引き出物カタログで金属バッドを注文してしまった主人公。
そこまでは気晴らしのジョークみたいなものだったのに、縁切り神社の絵馬に「誰にもバレないように殺させて」と書いてから、彼女は不思議な夢を見るようになるーー という話。

 

もうさぁ、撲殺シーンがとてもグロいんですよ。
頭を上から吹き飛ばし、潰して、びちょびちょのグチャグチャにしていく様子がとても丁寧に描かれていました。
ていうか本当に撲殺するんかい。読む前は何かの比喩かと思ってたよ夕鷺さん・・・!

 

しかも夢オチじゃない上に、このオチである。
まぁ大人だろうと社会人だろうと嫌なものは嫌だし吐き出さないとやっていられないのでしょう。みんな共犯。誰もが加害者。

 

余談ですが、縁切り神社といえば、私は京都の安井金比羅宮に行ったことがあります。
あれは冷やかしで行ってはいけない場所ですね。がっつり個人情報を出した上で切実な呪いを書いた絵馬がたくさんあった・・・・・・

 

上司がクソ野郎すぎて精神的にも肉(以下略)で、天井に丁度良い梁とフックがあるから「あれで首吊って死んだらどうなるかな〜」と妄想する主人公の話。

 

これが3本の中では一番まともに(?)因果応報を書いてるやつかもしれません。結局彼女は何もしてないんだが。
あと首つり死体の描写に力が入っていました。うん。あの梁はなんだったのかなぁ。ホラーだなぁ。

 

上司がクソ野郎(以下略)で、同僚と一緒に隠しファイル「引き継がれ書」に怨念書き綴る主人公の話。

この主人公、精神的にガリガリ削られつつも、他2本に比べると安定しているんですよね(味方が多いからだろう)
ただ、ストーリー自体は一番パニックホラーの色合いが強かったと思います。

積もり積もった人々の怨念は呪いと化し、ついに現実に侵蝕し始めるのだ・・・!
こういうホラー、割とよく見る。

作中で本人達も気づいていたけど、上司だけでなく会社の体質自体が問題なので逃げること自体は大正解だと思います。
でも上司をそのまま放置してバイバイ!という結末は、物語的に「スッキリ」かと言われると首を傾げてしまう。
いや、第一話みたいに無惨に死んでほしいわけではないのだけど。でもなー。うーん。

 

 

3本とも読んでる間はドキドキしたし、そういう意味では面白い作品だったと思います。
ただ、撲殺、自滅、放置の3つの結末はどれもスッキリするものではなく、ホラー小説ならこれで良いかもしれないけれど、私の好みではありませんでした。
問題の解決は全て不思議要素にお任せしてしまうので、力を込めて描かれた鬱描写に対し、カタルシスの物足りなさを感じるんですよね。
「お仕事小説」なら私は主人公が自力で困難に打ち勝つ系の話が好きなので。

うーん。作者の作風への先入観を捨て、お仕事小説として読まなければ楽しめたのかなぁ。
でも夕鷺さんの文章は好きなんですよね。
本作も基本的に鬱々としてるんだけど、たまにポロッとコミカルな表現が出てきたりしていたし(撲殺シーンもコミカルといえばコミカル?)

個人的には、次は明るくて楽しいお仕事小説が読みたいなぁ・・・・・・と思ったり・・・・・・

 

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