天下一蹴 今川氏真無用剣 /蝸牛くも


天下一蹴 今川氏真無用剣 (GAノベル)
天下一蹴 今川氏真無用剣 (GAノベル)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年1月刊。
「ゴブリンスレイヤー」の作者の幻のデビュー作。新人賞の最終選考に残った作品とのこと。

わずか一代で国を滅ぼした天下御免の無用者・今川彦五郎氏真。
旧知の家康にお使いを頼まれた彦五郎は、愛する妻と共に、信長に蹴鞠を見せるため京都に向かうのです。
その「おつかい」の意味を重々承知した上で。

時代劇に馴染みが薄い私でも十分に楽しめる時代小説でした。
剣術槍術忍術が衝突するちゃんばら合戦。そこできらりと光るは蹴鞠の技。そんな破天荒なエンタメ感がすごく楽しかったです。
あと夫婦愛がとても良かったんですよね・・・・・・天下に無用と言われようとも「それがどうした」と支え合う夫婦の絆が尊い。

☆あらすじ☆
第六天魔王・織田信長が桶狭間で討った今川義元。その義元の佩刀、「義元左文字」は「それを持つ者は天下を取る運命にある」という。
信長のいる京までその刀を届ける密命を徳川家康より授かったのは、義元の息子――大名としての今川家を滅ぼしたとされる天下御免の無用者、今川氏真であった。
「己は駿河彦五郎。飛鳥井流と、新当流を少々」
今は彦五郎と名乗っている氏真は、和歌と蹴鞠を愛し、その妻、蔵春とともに京へと向かう。
その旅路を阻むは「甲賀金烏衆」。
剣風吹きすさぶ京への街道に剣聖直伝の彦五郎の剣が、鍔鳴る!
蝸牛くも×伊藤悠が贈る剣戟エンタテインメント小説!

以下、ネタバレありの感想です。

 

信長公に蹴鞠を披露して欲しい、という頼み事とともに、家康から渡された一振りの刀。
それは、「その持ち主は天下を取る運命にある」と伝えられる義元左文字。

家康の手によって「信長に天下太刀が渡ることを阻止しようとする敵をあぶりだす刺客」に仕立てあげられたことを承知しつつ、今川彦五郎氏真は妻・蔵春とともに飄々と京都を目指して歩み続けるのです。

 

彼らの道中に現れるのは怪人物・黒式尉に差し向けられた忍びの者。
章ごとにひとりずつ現れ、いざ尋常に勝負!とする感じは私の中の時代劇イメージとぴったりでワクワクしました(このイメージ、甲賀忍法帖で植え付けられた感がある)
敵が使う忍術や剣術も面白いけれど、不意を打つ彦五郎の蹴鞠の技とか、ただのお供じゃないんだよ!とばかりに勇猛なガンアクションをみせてくれる蔵春も最高。
才能任せではなく理詰めで戦うスタイルなのも良いですよね。いかに自分の有利な状況に持ち込めるか、というクレバーな戦いっぷりが良い。
個人的には一番最初の屋根上での戦い方がほんと好きです。同時に読んだコミカライズの描写が凄かったというのもある。

 

そして何より本作はキャラクターが良い!
まず主人公の彦五郎。
桶狭間で父が討たれたのち、今川を維持できずに滅ぼした無能と呼ばれる男。
そういう暗い背景を滲ませつつも、飄々とした態度で歌を詠む姿が無性に目を引くんですよね。
才能はあれど性分が時代に合わず、まさしく「浮き世離れ」した佇まいを感じるというか。
自由に生きていると言えば聞こえはいいけれど、どことなくそのまま消えてしまいそうな不安を煽る人でもあって。
ああ、これは奥さんは目が離せないわ・・・・・・と蔵春の気持ちに寄り添ってしまいます。

 

だからかなぁ、私は蔵春がめちゃめちゃ好きです。
というかこの夫婦がすごい好き。
軽口を叩きながら仲良く旅をし、窮地には息ぴったりで支え合い、そして互いをとても大事にしている。
どん底を二人で乗り越え、一緒に時代の主流を外れたからこそ生まれた絆なのかな。嘲笑をかぶっても二人で生きていこうとする強さにこそ惹かれます。
回想シーンの蔵春の「私が認めるだけじゃ生きていたくない?」って言葉も好きだし、それに対する彦五郎の「君は、まるで金剛石のような人だなぁ」って返しも素敵。あっ蔵春が婆娑羅姿なのは、そういう理由・・・あっあっ、す、好き・・・!ってなりました。
何もかもが優しくない世界で、ただひとりの優しい伴侶と共に生きる「二人ぼっち」感が最高なんだよな〜〜〜

 

夫婦モノとして予想以上に面白かったし、時代小説に馴染みのない私でも楽しめる良い作品でした。
ちなみに黒式尉の正体はめちゃめちゃ驚いきました。これ分かった人どれだけいるんだろう。

彦五郎と蔵春の旅は紆余曲折を経てゴールに辿り着いたけれど、シリーズも1冊こっきりなのでしょうか。もっと読んでみたいなぁ。
はてさて、「一巻の終わり」はどっちの意味だろう。


 

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