筺底のエルピス6 四百億の昼と夜 /オキシタケヒコ


筺底のエルピス 6 -四百億の昼と夜- (ガガガ文庫 お 5-6)
筺底のエルピス 6 -四百億の昼と夜- (ガガガ文庫 お 5-6)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
2019年1月刊。
面白かったー!!!
待望の、待ッッッッッ望のエルピス最新刊。
凄かったです。興奮しすぎて眼球から血が出るかと思いました。こんな凄い作品を読めていいのか。

だって伏線回収がすごすぎる。
歴史の裏側が紐解かれるなかで、「えっ、(歴史上の)その事件に(エルピス独自の)その設定がはまっちゃうの??」と動揺しまくりでした。
その先にあるのはパズルが美しく完成した時のような快感と達成感と、どうしようもない不安感。
こんな歴史ドラマを作り上げるなんて、オキシタケヒコ神の脳内はどうなってるんだ。

ちなみに今回で私の「筺底のエルピス」最推しキャラが決まりました。猊下かわいいよ猊下。どうしてこんな可愛いの猊下。もはや猊下のことしか考えられない。これが愛・・・・・

☆あらすじ☆
ゲート組織の過去に広がる、巨大な真相――。
殺戮因果連鎖憑依体――
古来より『鬼』や『悪魔』と呼ばれてきたその存在は、感染する殺意であり、次元の裏側から送り込まれた人類絶滅のプログラム。未来を閉ざすその脅威に立ち向かうためには、衝突や非干渉を続けてきた鬼狩りの派閥――三つのゲート組織を和解させる必要があった。
バチカンの《ゲオルギウス会》との同盟が締結された今、日本の《門部》と敵対するゲート組織は不死者の軍勢《I》のみ。組織の裁定権を握る式務の一員となった百刈圭は、和解交渉の特使として、世界を牛耳る巨大な秘密結社のもとに赴くこととなる。
一方その頃、鬼狩りの訓練生となった若者たちも、各ゲート組織に君臨する異星知性体の目的を独自に考察しようとしていた。海を隔てた二つの場所で、真実に肉薄していく彼らが目の当たりにする、星界の影に覆われた、この世の真の様相とは。
不死者の首魁《プロフェッサー》と対峙し、夜空を見上げ、すべての真相にたどり着いたその先で、若き狩人たちが足を踏み出すことになる標なき道は、果たして、いかなる荒野へと続くのか――。
人類の存亡をかけた、影なる戦士たちの一大叙事詩。終わりが始まる、継続の第6弾。

以下、ネタバレありの感想というていの猊下語りです。嘘です(嘘じゃない)

 

いや、猊下については勿論語りたいんだけど、そもそも6巻は語りたいこと山盛りなんですよね。
感想を整理するのが大変だ。というわけで箇条書き形式で行きます。

 

表紙を飾った少年少女

6巻表紙を飾ったのは、結、伊吹、光一という意外なトリオ。

ほぼ部外者でありながら鬼狩りの組織と関わることになり、その組織の根幹を紐解こうと悪戦苦闘する若者達。
誰も期待していなかった割に、どんどん問題の核心に迫っていくところにワクワクしたりビクビクしたりしました(あまり知ると消されちゃう・・・!)

思考停止状態の関係者たちと違い、彼らは純粋な好奇心と探究心で謎を見つめるんですよね。そこがエネルギッシュで良い。
たとえその先に望まぬ答えがあっても、必死に支え合って向き合おうとする姿もとても良い・・・・・・

 

エンブリオ!・・・・・・えっ

若者組が必死で謎を検討する一方、式部となった百刈圭は日本を離れ《I》の本拠地へ。
ゲオルギウス会と同盟を結び、今度は《I》とも協調路線に進むのか〜とワクワクしてたら「あの女」が出てきた私の気持ちをわかってください。

 

「あの女」・・・・・・正確には「あの女」と「あの女」なのだけど。

 

もうさー、テンガロンハットかぶってマカロニウエスタン風のコーデ決めた女医(どう見てもカタギではない)が出てきた段階で「ひぇ〜w」ってなったのに、その直後にサプライズでエンブリオを出してくるとか読者のトラウマ刺激して殺す気ですか?殺す気ですよね??勘弁してよ・・・!

 

・・・・・・なんてビクビクしてたのに。

 

なんだこの結末は!
「えっ・・・怖っ!」って声出して泣いた。
てかエンブリオ・・・・・・え・・・・・・そんなあっさり・・・・・・え?

 

門部最強はやはり女医なのでは?
女医ひとりで門部の風評を著しく下げてる(上げてる?)気もするし。
先生、怯えた猊下が尿漏れしちゃうからほどほどにしてあげて・・・・・・

 

猊下可愛すぎる問題

よし、ここが本題です(違)

 

満を持して初登場、ゲオルギウス会の〈休眠者〉であるギスラン・コンドロワイエール“千年枢機卿”猊下
toi8さんのイラスト(165頁)を見て下さいな。めちゃくちゃイケメンです。フランスのイケオジです。美しいです。憂いがちな下まつげと顎ひげが超セクシーです。
でもこの挿絵の猊下、「女にも男にもモテなくなるから僕の悪口言うのやめて!じゃないと泣いちゃうからねっ!おねがいでござる(;ω;)」って言ってるんですよね。この顔で「ござる」口調て。キャラが濃すぎて笑うでしょこんなの。

 

猊下、門部でいうなら阿黍さんのポジションにいる最強クラスの柩使いなのに、こんな泣き虫3歳児みたいなメンタルでいいんですか。
小心者すぎて作中ずっと尿漏れと戦っていたし、プロフェッサーに「こっちで括約筋締めとくから安心してね」(!)とか言われちゃうし、眼球シュミレーションも手加減してもらってるし、シュミレーション中ずっと「K殿〜K殿どこ〜?泣」って迷子みたいになってたし、もうなんなのこの可愛いひと!

 

ちなみに私が何度読んでも笑う猊下のセリフは「某を・・・・・・鬱に落とし込ませたかったのであるなら・・・・・・大成功でござるぞ・・・・・・」です。猊下かわいいよ猊下。誰もそんなこと狙ってなかったと思うよ。

 

猊下、「休眠者」として背負ってきた過去がクソ重いのもまた良いんですよねぇ。

誰よりも愛を信じ、誰の中にも愛があると信じる猊下。
信仰心に篤い博愛主義者でありながら、その能力は相手の身体の自由を問答無用で奪ってしまうという凶悪なもの。

なんというか、「愛を説きながら力でねじ伏せる」という存在の歪さが良いんですよね。
それでいてサイコパスではなく、根っから純粋無垢な精神性であることが更に良い。
だってさ、こんな血まみれの使命を背負わされて、必要なときだけ起こされる道具みたいな扱いで、それでも少年のような純朴さを失わないってすごくないです?それ自体かなり狂ってない?
猊下、二重にも三重にも捻れた結果、奇跡的に真っ直ぐ育った(ように見える)感じが堪らなく好きです。その軸にあるのが愛と信仰なのも色々振り切れてて尊い。

 

は〜、猊下のキャラほんと好き〜〜

尿意我慢できなくてプロフェッサーの死体(?)を放置してトイレしちゃう締まりなさも可愛い〜〜(顔赤くして戻ってくるのも可愛いけど百刈さんずっと横で音を聞いてたの?どんまい)
ラストの華麗なる三点着地とドヤ顔も可愛かったので万雷の拍手と共に褒め倒したいと思います。

 

四百億の昼と夜

ここからが本当の本題。

百刈圭、プロフェッサー、猊下が一堂に会する3組織の鼎談。
そこでプロフェッサーによって語られるのは、この星が歩んできた歴史の真実でした。

 

3つの鬼狩りの組織を率いる、3体の異性知性体。
彼らは何者で、どんな目的で、何をしてきたのか。

 

シュミレーションという形で「始まり」から歴史を振り返るのだけど、これがもう本当に素晴らしい読み応えでした。

史実を交えつつ「歴史の裏側」を紐解き、新たな歴史観を浮かび上がらせる。
それは、今までの伏線を緻密に回収し、史実に当てはめ、その本当の意味を教えてくれることでもあってーー

あらかじめ与えられていたピースが、ぱちりぱちりとあるべき場所に収まっていくような気持ち良さ。
ジャンヌダルクとか太平洋大戦とか月面着陸とか。エルピス史観とも言える歴史ドラマがめちゃくちゃ楽しくて、同時に心の底からゾッとしました。

 

なるほど、これは「歴史」を人の手に取り戻すための戦いだったのか。
3組織の始まりの物語はとても切なく、悲恋じみている。それでも彼らは人として、人のために在った。
それがとても嬉しく、同時に、危ういバランスの上に成立している「今」への不安に心が揺さぶられてしまいます。

 

エルピスの何がスゴイって、4巻であれだけの地獄を描いた上で6巻の真実を明かしたことだと思うんですよ。
サブタイの意味が分かったときの衝撃と、その無限ループを止めるために阿黍さんたちが取った方策のエグみが、4巻を知っているのと知らないのとでは全然違う。

たった一度の捨環戦ですら人は地獄を見るのに。
この世界はどれだけの業と哀しみの上に成り立っているのか。

その重みを理解させるために4巻はあったんですね。
カナエの苦しみをあれだけ綿密に描いていなければ、19回もの捨環戦をこなした阿黍が背負ったモノすら理解できなかったかもしれない。
でも今だから分かる・・・・・・分かってしまうことが、こんなにも苦しい。

 

阿黍宗佑と百刈圭

真の人類史が紐解かれるシミュレーションの中で、徐々に異彩を放っていく百刈圭。
人が受け止めるには壮大で狂気的な真実。
それを全て飲み干した段階で百刈さんの異質さが際立っていたのだけど(全年齢版の猊下かわいい)、途中のあれは本当に焦りました。
いや「スイッチ切るて言ってたのに!切り離すって何!」とは思っていたんだけどね。

 

でも本当によかった。百刈さんは百刈さんだった。

 

論理をねじ伏せる愛を、計画に邪魔な幻想であり不要であると語るプロフェッサー。
神の愛を心から信じ、他者の中にも愛を感じ、愛だけが争いを止めることができると説く猊下。

そんな二人に挟まれながら、世界の真実を知った百刈さんが出した答えが本当に素敵だったんです。
なんだろう、自分を矮小な存在だと考えている百刈さんらしくてホッとするというか。
自分の傍にいる親しく愛しい人たちの存在を忘れず、彼らを守りたいという小さくても大切な願いを捨てないでくれたことが、とてもとても嬉しい。思わず感極まってしまいました。

 

だってそれは阿黍さんとは違う道だから。
今回のお話で「阿黍宗佑」という人間がどんな人生を歩んできたのかも語られてきたけれど、百刈さんにはこの道を歩んで欲しくなかったから・・・・・・

 

阿黍さんって、むしろ愛情の深い人だと思うんです。プロフェッサーもそうだけど。
じゃなきゃ人類のために、約束のためにここまで頑張れない。
それでも阿黍さんは愛を天秤から下ろすしかなかった。
愛した人との約束のために、愛した人を切り捨てなきゃいけなかった。
その生き方はとても悲しく、でも彼らがそうやって心身を削りながら時間を稼いだからこそ、百刈さんたちが愛を選べるチャンスを得たのだと思うと、人間の巡り巡る運命の環を思って頭がクラクラしてきます。
ごめんちょっと何言ってるか分かんないですよね。ううむ、語彙が足りない・・・泣

 

でもさ、百刈さんが愛を選んだ直後に、阿黍さんは愛した人の面影に倒れるっていうの皮肉ききすぎじゃないですか?
鬼?オキシタケヒコ神は鬼神だった?

 

愛ってなんだよ・・・・・・救いにもなり、足かせにもなり、制御もできない。
ほんと何をどうすれば正解なの?ううう、考えすぎると私のメンタルが軋むから、そうだ猊下を愛でよう・・・・・・

 

カナエと叶

色々と悩ましくても、希望は愛の中にあってほしいと思う私がいます。
そして愛は幸せを呼ぶものであってほしい。特に地獄を見て苦しんだ人には。

 

話を戻して、冒頭の会話のこと。
誰と誰が喋っているのか分かってくると、私の中で何とも言えない感情の嵐が吹き荒れました。

 

まるで双子のように息ぴったりに言葉を投げ合う二人。
つらつらと流れるような会話の中に混ざり込むのは、「死にたくない」「生きたい」の言葉でーー

 

もうさ、やめてくれよ・・・!彼女の地獄は終わったんじゃなかったのかよ・・・!
いや終わってないのは分かっていたけど!

 

「私、恨まない。あなたのこと」というセリフに叶ちゃんたちの潔さと強さを感じ、私は「百刈さぁぁぁん!!!!」と心で絶叫しました。

こんなに苦しんだ子を、もう二度と失わせちゃダメだ・・・・・・
たとえ存在を許されないドッペルゲンガーであっても、私は叶にもカナエにも生き残って欲しい。

ていうか百刈さん本当にしっかりして。カナエたちの心を支える百刈さんの存在の大きさを感じつつ、大丈夫かいな百刈さんだもんな・・・という色恋方面での頼りなさに不安を覚えてしまいます。

 

カナエちゃんたちを救うのも愛であってほしい。
それがどういう形で実を結ぶのかは分からないけれど、二人には幸せな結末が待っていてほしいです。

 

ハッピーエンドはどこに?

ていうかエルピスキャラ全員に幸せが待っていてほしいんだけど、相変わらずハッピーエンドが遠いんですよね。
6巻でますますハピエンのハードルが上がった気がするし。

 

今回で多くの伏線が回収されたものの、対峙すべき敵の正体がハッキリしただけで、戦い自体はここからが本番なんですよね。
もはや何をどうすれば問題をクリアできるのか、阿呆の私にはさっぱり分からない。

というか、動き始めた「終わり」ってどうやって止めるの?現状最強戦力も奪われてるんだけど??(セカンドハートの絶望感やめろ・・・!
あと待って冬九郎兄さん待って今回出番控えめだと思ってたのに、そんな、え、そんな・・・・・・(リーゼントのそんな使い方ってある??収納した???)

 

絶望の箱を解体し、底に残った希望を掬い上げることができるのか。

 

ハッピーエンドはどこにあるのでしょう。
とりあえず私はエルピス最推しキャラとなった猊下が死なないことを祈るばかりです。猊下がニコニコ笑顔でラブ&ピースできたらハピエンってことでよろしくお願いします。頼む・・・・・・じゃないと捨環戦するしかなくなる・・・・・・

 

そういえば、異星知性体の正体と狙いは分かったけれど(これだけ話を展開して鬼退治しつつ白鬼を守れって話に戻るのすごすぎでは?)、そもそもそんな面倒くさい手間をかけてまで手に入れたい白鬼って何なんですかね?というか、殺戮因果連鎖憑依体って本当に何なの?

 

続きが楽しみすぎて死にそうです。
次はいつになるのかなー・・・・・・どれだけ時間がかかっても待ちますけどね!でも早めがいいな!!


 

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「筺底のエルピス6 四百億の昼と夜 /オキシタケヒコ」への2件のフィードバック

  1. 本の終盤には今年のベストどころか人生ベストノベルになりそうな予感がしてきて、カナエみたく今エルピス読む大切さに気づいてこの後私死ぬのかなと思いました!
    人にこれほどの物語が紡げるとは思えないので、神の存在証明はオキシタケヒコ神の手により今ここに成ったので猊下の信じる神はきっといるよ‼︎

    1. ななみさん、コメントありがとうございます。

      >本の終盤には今年のベストどころか人生ベストノベルになりそうな予感がしてきて、カナエみたく今エルピス読む大切さに気づいてこの後私死ぬのかなと思いました!

      わかりますー!!めっちゃわかります!!
      こんなにも面白い話をリアルタイムで追いかける喜び、最高ですよね!私も幸せすぎて死にそうです・・・!

      >人にこれほどの物語が紡げるとは思えないので、神の存在証明はオキシタケヒコ神の手により今ここに成ったので猊下の信じる神はきっといるよ‼︎

      なるほど笑笑
      オキシタケヒコ神がいる以上は猊下の信じる神もまたいて良し。
      猊下が心の赴くままに神を信じ愛を信じてニコニコしてくれたら私は幸せなので、ななみさんの考え方はとてもラブ&ピースですね・・・!

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