和桜国のレディ 淑女は一日にしてならず /冬村蜜柑


和桜国のレディ ~淑女は一日にしてならず~ (ビーズログ文庫)
和桜国のレディ ~淑女は一日にしてならず~ (ビーズログ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2019年1月刊。
貧民層の少女が貴族の手によってレディへと育てられていく様子を描いた和風ファンタジー。
「マイ・フェア・レディ」系のお話ですね。
粗野で無教養な少女が少しずつ「淑女」へと変わっていく様子がじっくりと丁寧に描かれる作品でした。
明治期の日本を彷彿とさせつつ、「魔法が存在する女王の国」というファンタジーが光る舞台の華やかさも素敵だと思います。
ただ、個人的に引っかかるところもあり、構成が上手いところと粗いところの落差が気になる作品でもありました。
すごく綺麗に終わっているのだけど、これって続くのだろうか?続くなら、女王様をどうか・・・・・・

☆あらすじ☆
桜の化身とされる女王が治める和桜国。
いろははその日が女王の観桜会と知らず、桜の枝を切ろうと騒ぎを起こして捕らえられてしまう。
罪を償う代わりに「女王に謁見できるようなレディ」となるよう告げられたいろはは、宮廷魔術師である強面の男・紫乃宮圭人の邸で淑女教育を受けることに。
まずは読み書きからいろはのレディへの一歩が始ま……る!?

以下、ネタバレありの作品です。

 

若干17歳の女王・樹乃花姫が治める和桜国。
女王の命令で貧民街の少女・田原いろはを「レディ」に育てなければならなくなった宮廷魔術師主席・紫乃宮圭人は、彼女を伯爵邸に連れ帰り、読み書きすらできないいろはを淑女にすべく教育を施していくのです。

 

正直、このレディ教育が始まる流れは個人的にしっくりきませんでした。
女王の象徴たる神聖な桜を、女王の目の前で切り落とした愚かな貧民の小娘。
この娘の処遇と警備上の責任問題で会議が紛糾するなかで、じゃあ女王に目通りできるようなレディにしましょう!という話に落ち着くのが良く分からない・・・・・・なんで!?って私も思ったよ、圭人さん。流石に贖罪とするのは無理筋では・・・・・・
これ、レディに教育して貴族と結婚させる→貴族籍をゲット→女王に謁見→女王から桜の枝を下賜→桜伐採の罪をウヤムヤにする(?)という流れらしいのだけど、最後を読むまで分からないから唐突感があるし、その流れを知ってもいまいち腑に落ちない私がいます。

 

とりあえず、それはさておき。

 

2年間の淑女教育という限られた時間の中で、教養を身につけ、自力で生きる術も手に入れていくいろは。
最初は手負いの獣のようにバスタオル1枚で走り回っていた子どもが、淑やかな女性として少しずつ変わっていく姿には目を瞠るものがありました。
特に「日記」の使い方が良かった。
ひらがなだらけで子どもっぽい文章が、少しずつ漢字を増やし、語彙を増やし、繊細な情緒も表現できるようになっていく。
そこに1番色濃くいろはの変化を感じ取ることができるんです。
その変化に時間の流れも感じるから、副題の「淑女は一日にしてならず」を思い出しながら感慨深く感じたりもして。こういうのは好きだな。

 

淑女へと変わりゆく時間のなかで、いろはと圭人は温かな関係を積み重ねていきます。
この二人の関係も悪くなかった。自分に色んなものを与えてくれた圭人にいろはが惹かれていく心情はすごく理解できるもので、そういう情緒が芽生えたことにも彼女の成長を感じるのです。
一方の圭人は、うーん、家族愛的な感情から恋愛感情へとぐいっと変わるところに割とギョッとしたり(いやだって最初14歳・・・)
年齢差への葛藤もみせるのだけど最後だけなので、いまいち描写に物足りなさを感じました。

 

恋愛面でいえば、ラストで突如当て馬化してあっさり散った二人の少年の扱いも雑じゃないかなー?と思ったんですよね。
そこに至るまで二人の心情なんてほとんど触れてなかったような?
クライマックスを盛り上げるために都合良く動かされた感じが拭えませんでした。

 

そもそもクライマックスもそんなに盛り上がってないんだよなぁ。
いろはが淑女となっていく過程はとても丁寧に描かれているのだけど、物語全体をみると起伏に欠けるようにも感じるのです。
舞踏会がヤマ場と言えばそうなんだけど、特に大きな障害もなくあっさり終わったな、という印象が強いんですよね。

 

というか、私は女王さまを交えた三角関係の決着をヤマ場にするんだと期待していたんですよ。
「なんでもできるはずなのに、不自由な身分ですわ、女王って」というセリフからも伝わる女王の苦しみが印象的だったし、圭人への明かせぬ想いもとても切なかったので。

表面上は優秀で慈悲深い女王。
その裏にいるのは本当の名前すら呼んで貰えない孤独な少女。

そんな風に繰り返し女王の内心を描いていたじゃないですか。だからこそ、どういう形で彼女の苦悩を昇華させるのか見物だなって思ってたんですよ。ぶっちゃけ、いろはより女王の恋の結末の方が気になっていたくらいだった。

それなのに女王の救済はほぼ無しとか・・・・・・

流れ的に彼女が失恋するのは仕方ないのだけど、それにしても女王が引いた貧乏くじが不憫すぎませんか。
孤独の中で片想いしていた相手を、自分が慈悲をかけたポッと出の娘に奪わるとか・・・・・・

それでも二人を祝福し、いろはを「レディ」と認めた女王様は本当に名君だと思います。
まぁ、そんな状況に落ちても彼女は「恋に破れた少女」ではなく「慈悲深き女王」でいるしかないのだと思うと泣けるけれど。
ああ、お願いだから誰か彼女を幸せにして!

 

色々と書いたけれど、世界観の可愛らしさが素敵な作品だったし、マイフェアレディ的なストーリーは綺麗にまとまっていて良かったと思います。
「王」と「桜」をかけたりする、言葉遊びの華やかさも好きでした。でも魔法設定は若干持て余し気味だったかな?

 

いろはの物語としては綺麗に終わっていますが、女王救済のために続刊希望です。よろしくお願いします!


 

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