わたしの幸せな結婚 /顎木あくみ


わたしの幸せな結婚 (富士見L文庫)
わたしの幸せな結婚 (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2018年1月刊。
面白かった!
タイトル通り、王道の結婚ロマンスものです。
虐待による絶望を抱えた少女が、冷酷にみえて優しい青年と出会い、温かい環境のなかで少しずつ立ち直っていく。その様子がとても丁寧な心情描写で綴られていく作品でした。
ベタな設定・展開ではあるのだけど、主人公をはじめとするキャラの心の動きがとても繊細で、そこが好き。
帝都×軍服×異能という「あ〜良いですね〜!」な要素も程良い味付け。
ちなみに、個人的にはヒーローになれなかった幼なじみの青年の心情にとても惹かれました。
好きな子を守りたいという強い意志と、それを達成できない無力ゆえの悔しさ。その間で揺れる姿が大変に美味しく・・・笑

☆あらすじ☆
この嫁入りは黄泉への誘いか、奇跡の幸運か――
名家に生まれた美世は、実母が早くに儚くなり、継母と義母妹に虐げられて育った。
嫁入りを命じられたと思えば、相手は冷酷無慈悲と噂の若き軍人、清霞(きよか)。数多の婚約者候補たちが三日と持たずに逃げ出したという悪評の主だった。
斬り捨てられることを覚悟して久堂家の門を叩いた美世の前に現れたのは、色素の薄い美貌の男。初対面で辛く当たられた美世だけれど、実家に帰ることもできず日々料理を作るうちに、少しずつ清霞と心を通わせていく――。
これは、少女があいされて幸せになるまでの物語。

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の舞台は、古来より現れる異形を討伐する異能者の家が存在する帝都。
異能者の家のひとつ斎森家に生まれながら、異能を持たなかった斎森美世は、名家の令嬢でありながら使用人のような生活をさせられていた。

恋人との仲を裂いた女の娘だと、美世に憎悪を向ける義母。
義母の歪んだ教育によって自分は美世より格上の存在であると信じて疑わない義母妹。
母娘の美世への振るまいを知りつつ、無視と無関心を決め込む実父。

亡母の形見も捨てられ、大切な使用人はクビにされ、日々憎悪と憂さ晴らしのはけ口とされて心をすり減らす美世。
そんな彼女の不幸な人生は、厄介払いの如く持ち上がった久堂清霞との縁談により、少しずつ、しかし劇的に変化していくのです。

 

これはまさしく「幸せな結婚」の物語。
薄幸の少女が、結婚により温かな家庭を手に入れ、傷つき疲れきった心を癒していくお話なのです。
しかも実家よりも格上の家に嫁ぐのだからシンデレラ・ストーリーであるとも言えるでしょう。

 

設定と展開はよく言えば王道、ぶっちゃけるとベタ。
しかし物語の中で綴られていく美世の心境の変化はとても繊細で読み応えがありました。
美世の深い絶望に胸が痛くなるときもあれば、慣れない優しさに戸惑うあまり失敗する姿にハラハラし、ようやく手にした幸せを必死に受け入れようとする姿に切なくなることもあって・・・・・・

 

一度幸せを知ってしまえば元に戻るとき辛いからと、心を頑なに閉じていた美世。
そうやって自分を守っていた美世は、清霞の不器用な気遣いやゆり江の温かい思いやりに触れ、蕾が綻ぶように幸せを受け入れていくのです。
でも自分には異能がなく、その欠点を清霞に話せないままでいる。
この秘密が知ればきっと清霞は結婚話を取り下げるだろう。自分たちが結婚することはない。それならば、もう少しだけこの幸せに浸っていたいーー

 

この「いずれ失う幸せに必死でしがみつく」っていう美世の心情がとってもエモいんですよ・・・・・・こういうの好きだー!
身勝手な隠し事と分かりつつ、仕方ないじゃん!ずっと欲しかった幸せなんだから!と擁護したくなる感じ。
幸福感と罪悪感。幸せが後ろめたさに繋がってしまうジレンマ。あ〜〜〜好き〜〜〜〜

 

このへんの苦しい描写に大変力が入っているため、そこから徐々に幸せへと駆け上がっていく終盤の展開はとてもワクワクしたし、心がスッキリしました。
不幸な少女を受け入れ、不器用ながら優しく接し、家格もあるから実家への報復もできちゃう清霞さんは本当にお手本のようなヒーローだったと思います。
心の壁が高いのは最初だけで、後は意外とチョロかったのはご愛嬌ですね笑

 

ただ、個人的に注目したいのは、この正統派ヒーロー・清霞の影に入ってしまった幼なじみ・幸次の方だったりして。
この幸次くん、優しい性格なのだけど本当に優柔不断。
彼としては美世との結婚の可能性がある以上、今だけ我慢すれば良いという判断もあったのかもしれない。それでも「さっさと家を捨てて駆け落ちしていれば美世はもっと早く救われたのに」と思わずにいられないところが、彼のメインヒーローたりえないところなのでしょう。

もっとも、そうやって美世を救えない自分のダメさ加減を幸次も良く分かっているのです。
自身の不甲斐なさを悔しく感じつつ、それでも「美世を守れるのは僕しかいない」と自分なりに美世の幸せを守ろうと必死に奮闘した幸次。
たとえ自分が美世と結ばれなくても、彼女の幸せは自分が守るという強い意志を貫いたところが本当に素敵でした。

実力が伴わない哀しみはあるし、優柔不断ゆえにメインヒーローにはなれなくても、でもやっぱり幸次も美世のヒーローだったと私は思うんだ・・・・・・その一歩引いたサブヒーローの哀愁が私の心にとても響きました。安易な当て馬キャラにならなかったのも良かったです。あとラストシーンの潔くも切ない身の引き方も好き。私、幸次くん大好きだな??

 

本当に丁寧で良いロマンスだったなぁ。
帝都で働く異能者な軍人さん、という清霞さんのキャラ設定も大好物でしたし。
まぁ異形退治要素はほぼなかったのだけど、「美世が幸せを掴むための物語」というテーマのもとではこんなものかな、と。
もしも続刊があるなら異形退治もしてほしいですね〜。異能要素増し増しにしてほしい。
異能と言えば薄刃の異能の話や、なぜ薄刃が斎森に例外的に嫁いだのか?あたりの疑問がちゃんと解消されていないので、このへんの謎も解き明かして欲しいところ。

というわけで2巻を楽しみに待っています!


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