賭博師は祈らない5 /周藤蓮


賭博師は祈らない(5) (電撃文庫)
賭博師は祈らない(5) (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
2018年1月刊。
はぁ〜〜〜・・・・・・素晴らしかった・・・・・・
賭博師と奴隷少女の出会いから始まる物語は、ついに完結へ。
様々な立場にある人々の信念と信頼と願いが衝突する。その果てにあるのは、誰かが傷つかねばならない結末なのか?
最終巻に相応しい圧倒的なドラマに感無量です。本当に面白かった!

☆あらすじ☆
ロンドンの裏社会を牛耳るジョナサンと対立し、一度はすべてを失ったラザルス。だが賭博師としての矜持を奪われ、地の底を這いつくばったその先で、彼は自らが進むべき新たな境地へと辿り着く。
再起したラザルスはフランセスにも勝利し、ジョナサンとの全面対決を掲げた。かつて帝都にいた友人たちが残した、ちっぽけな約束を守るためだけに。
一方、ラザルスの無事に安堵したリーラだったが、彼女は故郷へ帰る為の乗船券を渡されたことに戸惑い、自分が主人に対して抱いていた想いに気付かされる。
――『私は、ご主人さまが好きです』
そしてラザルスはリーラとの関係にひとつの答えを出すことに。二人の物語に訪れる結末は、果たして。

以下、ネタバレありの感想です。

 

『整理整頓』を掲げるジョナサン・ワイルド・ジュニア。
彼女の治安判事就任を阻止したいボウ・ストリート・ランナーズ。
二つの勢力の衝突のなかで、かつての約束のためにジョナサンと対立することを決意したラザルス。

それぞれの掲げる信念が衝突し、二転三転どころか何度も何度も転がっていくストーリーは読み応え抜群でした。
王手をかけたと思えばひっくり返され、それを躱したと思ったら不意打ちを食らう。相手の心の奥底にまで目をこらすような駆け引きは途方もなくスリリング。
ただ、その駆け引きの中で何度も出てくる「信頼」という文字だけは、なんだか不思議な気持ちで見つめていたのだけど・・・・・・

 

「信頼」
ラザルスの最後の戦いのなか、私にとって最も強く印象に残った言葉がこれです。

ラザルスがジョナサンの罪を暴くために指針としたもの。
ルロイが裏切られてしまったもの。
ジョナサンが整理整頓の果てに求めたもの。
そして、リーラがラザルスから与えられ、見事に応えてみせたもの。

様々な流れのなかで登場する「信頼」という言葉。
たった一つの言葉に、これほど多くの感情を込められるのか・・・・・・という不思議な感動がありました。
それは言葉から連想できるようなポジティブな感情もあれば、淀んで濁りきった薄暗いものもあって。
全てひっくるめて「面白いなぁ」という単純な感想が頭をよぎります。

自分ではない誰かに大切な何かを委ねること。あるいは、他者にそれを求めること。

「どうでもいい」が口癖で孤独に甘んじていたラザルスの物語の最後に、こんなにも他者を前提とする言葉が印象に残るとはなぁ。
ネガティブな意味で使われるシーンもたくさんあったけれど、ラザルスのこれまでが「信頼」という形で報われるシーンだってあるわけです。
それだけでも感慨深いし、そこから感じ取れるラザルス自身の変化はとても好ましい。

 

敵を信頼して動き、味方を信頼して委ね、その信頼に応えてもらったラザルスが掴んだ結末。
これだけ拗れに拗れた戦いが、予想以上に清々しい結末を迎えたことに驚きと安堵の気持ちが半々です。
途中から「少女を救う物語」という王道ヒロイックストーリーになったことも驚きだったなぁ。4巻の時点でこの戦いの意味がこういう風に変わるとは全く予想できなかった。でもよく考えたら、この物語は常にそうだったのか。

 

何はともあれ、ラザルスの最後の賭けはとても面白かったです。すごく満足しました。
あと「賭博師は祈らない」というタイトルの物語が「ずっと、そう祈っていましたから」で締めるのが(しかもそれを言うのが、自身が絶望の中で苦しみ、賭博師たるラザルスを支えてきたリーラだということが)最高に分かってる演出すぎて最高でした。

 

一方で、ラザルスの戦いの行方と同じくらい気になっていたラザルスとリーラの関係の行方については、なんかもう、どう言葉にするか迷うほど色んな感情がせめぎ合っています。

定められた運命のように、粛々と準備が進められるラザルスとリーラの別れ。

想い合っているなら別れる必要なんてあるの? ロンドンでもリーラは幸せに笑えるんじゃないの?
そんな疑問を打ち砕く「忘れていた現実」の重さに私の心は死にました。
それでもラザルスに対して「何とかしてよ!」という焦躁めいた期待を捨てきれずにいたのだけど、リーラの「誰のこともご主人様とは呼びたくなかった」の一言でそれも捨てざるを得ず・・・・・・
私は「奴隷」という身分の辛さを本当のところ全然分かっていなかったんだ。
これは彼女の矜恃の問題で、奴隷ではない本来あるべき自分を取り戻すために、リーラと呼ばれた少女はこのままロンドンにいてはいけないのだと、ようやく私も納得することができました。

 

・・・・・・いや、でも寂しいなぁ。
孤児院の少女の気持ちが、一番、痛いほどに共感できる。

 

それでも、賭博師と奴隷の少女の出会いから始まった物語は、二人の別れで終わりを迎えなければならないのです。
何度も何度も物語の中でこのことについて考えさせられてきたから(ラザルスも、リーラも、そして読者も)、二人の結末には納得しかありません。寂しいけれど、覚悟していたよりも悲しくはなかった。
ここまで辿り着き、リーラを見送ったラザルスに「お疲れさま」と言いたいです。
きっとリーラが残したものが、彼の今後の人生を空虚にしないと祈りつつ・・・・・・

 

ってしんみりしてたら巻末ーーー!!

 

もうっ!ジョン大好き!!

 

そうだよね。やり直せばいいんだ。「最初」がダメだっていうなら、その「最初」から!
別にリーラが戻ってくるのを待たずにラザルスが会いに行くのだって良いと思う。
リーラが奴隷としてでなくロンドンを訪れて出会いをやり直すのも良いし、今度はラザルスが異邦人としてリーラの故郷を訪ねるのだって良いんじゃないかな。
「生きていればこそ」彼らにはどんな可能性だってあるわけで、そんな希望の未来を感じさせるラストシーンに私は救われました。

 

最後まで本当に素晴らしかった!パーフェクト!
周藤さんの次回作も楽しみに待っています。


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