灰と幻想のグリムガル14 パラノマニア[parano_mania] /十文字青



灰と幻想のグリムガル level.14 パラノマニア [parano_mania] (オーバーラップ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
2018年12月刊。
他界パラノ編クライマックス。
面白かったです。私がめちゃめちゃ好きな十文字青節炸裂って感じで最高でした。ああ、シホル・・・!
ちなみに今回の私的MVPはハルヒロ大好きクザクくん。リーダー好きすぎでしょ。クザクのハルヒロ依存が止まらない。

☆あらすじ☆
パラノ編完結――!!
「一緒に帰ろう、グリムガルへ」
――ここはグリムガルじゃない。ここから出ないと。
夢魔と呼ばれる怪物と魔法使いたちが闊歩する他界パラノで散り散りになったハルヒロたち。頼れる仲間はおらず、信じられるのは自分自身だけ。
――でも、おれはどこまでおれを信じられるんだ?
目指すは仲間たちとの再会と脱出。鍵を握るは王。アリスC、同じくパラノに迷い込んでいた暁連隊のイオらと心を、力を合わせて、ハルヒロたちは無事、グリムガルへと帰れるのか――!?
異なる幻想に彩られた他界パラノ編完結。
そして、灰の中から生まれた冒険譚は大きく転換する!

以下、ネタバレありの感想です。

 

仲間たちとはぐれ、アリスCと共に『他界パラノ』を彷徨うハルヒロ。
他者の魔法を強化し、または共感する「レゾナンス」という魔法を獲得したハルヒロは、グリムガルに繋がっているだろう「扉」を守る王へ挑むことになり—— というシリーズ第14巻。

 

グリムガルの常識が通用しないパラノですが、そこで抉るように描かれるのは、迷い込んだ人々が抱える心の闇。
「闇堕ち」とは言い得て妙ですよね。
エゴとイドのバランスが崩れ、自我が欲望や衝動にのみこまれれば心の闇に囚われ「トリックスター」と化す。
なんて物理的な「闇堕ち」なんだろう。めちゃくちゃ面白い設定だと思いました。
本来は内に秘められるべき精神構造が外側に剥き出しになっている気持ち悪さ。そうして暴かれる人の醜さや弱さ。
グロテスクなんだけど、その叩きつけるような暗い情動に私の感情は揺さぶられっぱなしです。

 

象徴的なのはシホル。
ずっと控えめにパーティーを支えてきて、人間関係の緩衝材になって、最近ではハルヒロの副官のようなポジションに立つようにもなって。
そんなシホルが抱えてきた心の闇が残酷なまでに晒される今回のお話。
「きらきらナミダ」の語り口の可愛らしさと、語られる内容の狂気。そのギャップがもうねぇ、たまらん・・・!
シホル、劣等感を抱えてる子だとは知っていたけれど、こんなにも心で泣いて傷だらけだったのか。今もずっと。
大嫌いな自分は欠陥品で穴だらけ。だから穴を埋めるような愛情がほしい。
彼女の痛いほど切実な叫びが辛くて辛くて、むしろ共感してしまうところもあって、無性にシホルのことが愛しくなりました。エゴ丸出しで愛を乞うてもいいじゃない。誰か彼女を抱きしめてあげてほしい。

 

その叫びを受け止めたハルヒロの誠実さがまた最高。
シホルが求めるような愛情を与えることはできない。彼のどこを探してもそんな感情は持ち合わせていない。愛そうと思えば愛せるもんじゃないんだよ。そりゃそうだよ。
でも紛い物の愛情を与えずとも、既にシホルの存在はハルヒロにとって自分の命よりも大切なんだ!っていう偽りない感情を真っ直ぐに向けるハルヒロは格好いい。等身大の誠実な親愛が心地よすぎて惚れるしかありません。
私なんかはそれでいいじゃん十分じゃんって思わずにいられないのだけど(あそこまで必死に手をさしのべてくれる人がいるだけで幸せでは!?)、実際にシホルの欠けた穴を埋めることができるのかは分からないんですよね。親愛は親愛でしかないから。シホルが渇望するものとは違うのだし。人って難しい。

 

それにしても、自分の心が外に剥き出しにされる世界で、例外的に他者を前提とする魔法を得たハルヒロって彼らしいというか何というか。
他者の力を高め、その心に寄り添うこと。それこそがハルヒロの自我ってことなのかな。自分は二の次三の次ってね。
その自己犠牲的で他者優先な性格、本当にハラハラするけど尊いとも思う。
そういうハルヒロの真心が少しでもシホルの涙を止めることができたらいいのに。せめてシホルが求める愛を与える人が現れるまで。

 

シホルの闇とハルヒロの奮闘が印象的な14巻でしたが、個人的に注目したのはクザクの活躍だったり。
クザク、ハルヒロへのリスペクトと依存がこれ以上ない領域に達しているような気がするんですけど。もはやLOVEじゃん。
ハルヒロハルヒロ言い過ぎて名前連呼すんなって言われてるの笑う。ハルヒロのモンペと化してるのも笑う。ていうか彼氏面かよって笑う。
ハルヒロに無茶ぶりされて颯爽と全裸になるのも笑う。
今回のクザクは私のメンタルリセットポイントでした。楽しかったwありがとうww

 

さて、パラノ編はここで終わりのようですが、エピローグのあの状態をどう解釈したら良いのでしょうか。
今回のエピソードを見るに、他界パラノは現実世界(現代日本っぽい?)から濃霧を経て迷い込む場所の様子。王様も、アリスと縫も、アヒルと夜鳴きウグイスもそうですもんね。
そしてグリムガルからパラノへは「扉」を通して行き来できるらしい。ハルヒロたちも「扉」を通ってパラノに迷い込んだわけだし。
で、パラノから「扉」を通ってグリムガルへ戻ってきたハルヒロたちは全てがリセットされて1巻冒頭状態になっている、って、・・・・・・うぇぇ!?
まさかグリムガルにいる義勇兵たちって現実世界→パラノ→グリムガルの順で巡ってきていたのだろうか。どうなんだろう。分からない。青先生の作風的にハッキリ分かる日が来るのかも分からない。

 

・・・・・・そういえば死ぬことを「他界」って言いますよね。
で、「他界」にある「扉」の先は「天国」に通じているらしい。
じゃあ「扉」の先にあるグリムガルは「天国」なの?
そこに辿り着いたハルヒロたちって・・・????

 

パラノ編は終わったのに謎は大きくなってしまった感。
ここからどうなるのでしょうか。
とりあえず、これまで大切に積み重ねてきたものが全てリセットされるのは嫌だなぁ(泣

 

シホルがちゃんと元に戻っているのかも気になるし、何よりメリイですよメリイ。
メリイの状態的にパラノは絶対やばい場所だと思っていたら案の定だし、あれは本当にメリイなんですか?メリイはまだメリイとして彼女の中にいるんですか?
カラー口絵、歪に微笑むメリイに凄味がありすぎてゾッとしました。壊れたシホルの絵は幻想的に綺麗だったのに。メリイ戻ってきてお願い・・・・・・

 

怖い怖い怖い怖い。でも続きが楽しみです。

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