ローランシアの秘宝を継ぎし者 往け、世界はこの手の中に /橘むつみ



ローランシアの秘宝を継ぎし者 往け、世界はこの手の中に (角川ビーンズ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2018年12月刊。
異能者だけで閉じこもった島国を舞台に、開国派と鎖国派の政争に巻き込まれた盗賊の少女が、自分を襲った悲劇の真相を知っていく――というファンタジー。
設定は好きな部類です。色々と粗い部分はあるものの、心に傷を抱えながら弟を盲愛するヒロインと彼女を利用しつつ理解を示す大人なヒーローの関係性も良かった。糖度は薄いのだけど、少しずつ信頼が芽生えていく雰囲気が素敵でした。
ただ、ちょっとネーミングに理解できない点が多いかな。うーむ、こういうのって一度気になると読んでてすごく引っかかるんですよねぇ。

☆あらすじ☆
運命に牙を剥け。贖罪と希望へ至る、第16回小説大賞奨励賞・受賞作!!
魔導結界(アルス・マグナ)により国交を断絶する島国・ローランシア。アルメリアは弟と二人、盗賊として隠れ生きてきた。だが忍び込んだ屋敷の主・イーディスに捕まってしまう。弟を人質に「第一王子を盗み出せ」と命じられ、王宮へ潜入するアルメリア。それは、五年前に殺された両親の事件と国を巡る陰謀に繋がっていて!?
「今は殺されてやらねえよ」
運命の船出へ誘う男・イーディス。彼は敵か、それとも……? 

⚠以下の感想では物語の展開や結末に言及する場合があります。ご注意ください。

 

国民の誰もが生まれながらに様々な《まじない》の力を持つ魔導師の国ローランシア。
遠い昔、迫害を逃れた魔導師たちが結界を張って引きこもり、今なお鎖国状態にあるこの島国では開国派と鎖国派がせめぎ合っていた。

主人公アルメリアは、その政争のなかで父母を亡くし、弟と二人きりで盗賊として生きてきた少女。
両親を殺した疑いのあるイーディスの屋敷に盗みに入ったアメリアは、そこで彼に捕まり、王子誘拐の取引を持ちかけられるのです。

という感じで、本作は、盗賊少女が王子を盗み出すミッションをこなす一方で、自分たちを襲った過去の悲劇の真相を知っていくお話となります。

 

変身能力によって王宮に潜入するくだりはとてもワクワクしました。
「まじない」と「盗賊」という設定の活かし方が良く、アメリア自身の魅力にも武器にもなっていたと思います。

 

一方で明らかになっていく開国派と鎖国派の政争の内実についても、話自体は割とまとまって描かれていたと思います。
ただ、こちらはキャラの多さがネックにもなっていたかなぁ。
双方の勢力の人々が色々と出てくるのだけど、誰が誰だかよくわからないんですよね。名前と肩書は常にセットにしてほしいな、とか思ってしまった。
ごちゃごちゃしてるし、それぞれのキャラが立っていない微妙な印象。個人的には登場人物の数はもっと絞ったほうが良かったのでは?と思いました。

 

とはいえ、主人公のアルメリアに関しては必要十分な描き方がされていたので、そこは良かったです。
彼女が弟を溺愛し、すがりつくように執着する理由とか切なかったですし。エゴゆえの罪悪感っていう説得力とドラマもGOOD。

 

そんなアルメリアの心にするりと入ってくるヒーローのイーディスも悪くない。
彼自身にはあまり魅力を感じなかったのだけど(ちょっと掘り下げが微妙だった)、アメリアへの大人な接し方という一点突破でヒーローとしての役回りを果たしていたと思います。
まぁ糖度はほぼないんですが。だって主人公が重度のブラコンなので。あとマイナスからのスタートだし。
でも親の仇として敵視していた相手に対して、信頼と不安で揺れ動くアルメリアの心情が良かった。そういうアルメリアとイーディスの距離感や雰囲気は好きでした。

 

さて、私がこの作品でどうしても受け入れられなかったネーミングの件。

いやまぁ《ゴッドアイ》の時点で嫌な予感はあったのだけど(神の目。作中の描写からは何も読み取れないのに下手に意味がわかるからめっちゃ浮いてる)、鎖国状態の島国から発展を求めて旅立つ使節団の船の名前が「メメント・モリ」っていうのも意図ががわからない。
あとタイトルの「秘宝」。国家にとっての重要人物を「国の宝」とは言ったりするけど、「秘宝」だと何か違わないかなぁ。別に秘されてないしなぁ。

こういう中二なネーミングセンスって嫌いじゃないし、割と慣れてるし(伊達にラノベばっか読んでない)、意味がわからない名前があっても気にならないタイプだと自分では思っていたんですけど、本作は無理でした。些細なことだけど、いちいち引っかかって落ち着かなかった。
せめてもう少し名前の意味や由来を匂わせてくれたら良かったのにな、と残念に感じました。

 

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