きみがその群青、蹴散らすならば わたしたちにはツノがある /山本瑤


きみがその群青、蹴散らすならば: わたしたちにはツノがある (集英社オレンジ文庫)
きみがその群青、蹴散らすならば: わたしたちにはツノがある (集英社オレンジ文庫)

評価:★★★★☆
2018年11月刊。
とても面白かった・・・!
相反した感情にさいなまれる少年少女の感情を、鏡写しの「鬼」を通して繊細に描きだす青春ファンタジーです。
自分に対する潔癖なまでの罪悪感。それが生み出す「鬼」という悪夢。
閉じられた世界で苦しみ、暗い憎悪と自己嫌悪を濁らせる彼と彼女たち。しかし同時に、彼らはとても純粋で綺麗な存在に思えるのです。
だからこそ胸が痛くなるし、彼らの行く末から目がそらせなくて・・・・・・。
こういう青春ファンタジーほんと好きです。山本瑤さんが描く孤独で繊細で優しいキャラクター、本当に良いなぁ。

☆あらすじ☆
「私たちは十五歳で、一緒に死ぬ約束をした……」
「キスをしても、抱きしめあっても、わたしたちはやっぱりバケモノだった…!」
容姿端麗、成績優秀、ピアノも上手…と、どこをとっても非の打ちどころのない月島桜子。そして誰もが振り向く美少年でサッカー部、成績も学年上位の周防紫生。いわゆる普通の女子で、クラスの女子の一軍グループから外されまいと必死の土田知香。野球部出身でクラスのムードメーカー的存在の門倉翔平。
この4人には秘密があった。それは鏡に写った自分にツノが生えはじめていること…。4人は誰にも言えず、それぞれひた隠しにしていたが、ある日転校してきた水瀬和葉に見破られる。そして4人は和葉に呼ばれ体育館建設予定地に集められて…!?
傷ついた15歳たちの、戦いが始まる!青春幻怪鬼譚!

以下、ネタバレありの感想です。

 

自分が養子であるという事実に心が蝕まれていく月島桜子
女子たちの憧れでありながら、内心で彼女たちを酷く嫌悪する周防紫生
自分の不注意で死なせた妹の亡霊を見つめ続ける門倉翔平
女子グループの中で必死に居場所を探そうとする土田千香

転校生の水瀬和葉は4人を集め、彼らが心の中に鬼を飼っていることを指摘し、こう言うのです。

「鬼は、寂しくて苦しい人間に、自分のことが大嫌いな人間に、取り憑くもの」
「自分の問題と向き合って、これ以上鬼化が進まないように努力して。それができるのは、自分しかいないから。そして夜は、夢の中で、鬼につかまらないように」

この言葉をきっかけに、桜子や級友たちは自分の問題に向き合っていきます。
そして、それは読んでいるこちらが苦しくなるほどに重く辛い作業なのです。

 

養親と自分の関係を受け入れられないまま、その立場の曖昧さに苦しむ中学生の桜子。
それは彼女にはどうしようもないことなのに、はっきりしないもどかしさは簡単に自己嫌悪と自己否定に繋がっていく。
養母の弱さをダイレクトに受け取ってしまったのも彼女の不幸ですよね。
自分は一体何なのか、ここにいる意味はあるのかと悩む桜子が、「鬼」であることに安堵する姿とか、本当に胸が痛くなりました。そんなものに「自分」を見つけなければいけないほど追い詰められているのかと。

 

どんなに大人びていても桜子たちは中学生で。
誰かの庇護のもとに狭い世界を生きていかなければいけない。
その窮屈さのなかで、繊細で敏感な感性は彼女たち自身を切り刻んでいくのです。
10代の研ぎ澄まされた感性は矛盾した感情を内側に生み出し、そこに深く暗い葛藤が生まれる。
それはとても痛々しくて、同時に酷く美しくも感じます。濁っているのに透明に思える。
そういう、相反した感情の描き方が素晴らしい作品でした。

 

紫生が言っていた「ぎりぎりのところで自分と自分が戦う」という言葉は言い得て妙だよなぁと、読後しみじみと感じました。
優しい顔も残酷な顔もどちらも彼らで、どちらも持っている自分に傷つき苦しんでいても、やがて全てを受け入れていく。
これは、彼女たちが「鬼」という形で浮き上がった醜い自分を受け入れるという、成長の物語だったと思うのです。

 

「鬼」という伝奇要素に関しては、「否定したい自己」の表現として面白かったと思います。
比喩的な何かで終わらず、実際の脅威として存在しているわけだけど。
ラストが少し曖昧に思えたのは、受け入れがたい自己ではなく本物のバケモノとしての「鬼」の存在が私には少し分かりづらかったからかな。結局水瀬さんたちが追っていた「鬼」は桜子と先生のどちらにいたんだろう?と混乱してしまいました。
桜子は「私が鬼」って言ってたけど、鬼退治の顛末的には先生でしたよね?
鬼の血の色は群青って話もどこにいったのか分かりませんでしたし・・・・・・

 

そのへんで少し消化不良が残ったものの、中学生の少年少女の青春小説としては文句なしだったので満足です。
どん詰まりに追い込まれた桜子と紫生の刹那的な感情の交錯とか、もはや最高すぎて上手く言葉が紡げないレベルでしたし。
しかし4人の中で最もきつい傷を抱えてるのは紫生だったなぁ・・・・・・いや、誰が一番不幸だとかそういう話ではないのだけど。そういう不幸比べみたいな描き方をしないところも好きだったな。
みんながみんな、それぞれに辛い感情を抱えていて、そこに優劣は存在しないんですよね。ただ寄り添って癒やし合う。そういう優しい関係性をぎこちなく作ろうとする5人の距離感も良かったです。

 

本当に好みな作品でした。山本さんの次回作も楽しみです!

 

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「きみがその群青、蹴散らすならば わたしたちにはツノがある /山本瑤」への2件のフィードバック

  1. コメント失礼します。
    別所での呟きを拝見し、こちらの記事の本まだ未読なんですがコメントを残させて頂きます。(みかこさんのお言葉好きなのでこそこそ追ってました。不快だったらすみません!)
    私は読書一時離れてた身ですが、みかこさんのブログ読んで本読みたい〜と思い、新たに好きな作品や作家さんにも出会えました。みかこさんの文は作品の感想を書く礼儀やポリシーが感じられて好きです。
    マイナスの言葉は力が強いので悩まれると思いますが、どうかこういう風に思ってる人間もいると思って頂けたら嬉しいです。
    最終的にコメント欄閉じられる事になっても、ブログ続けられてたら楽しみに通わせて頂きたいです。
    長文送りつけてすみません。読んで頂くだけで嬉しいので、承認や返信はお気遣いなく^ ^

    1. くじらんさん、コメントありがとうございます。

      朝から苛立ったツイートを連発し、お目汚しして申し訳ないです・・・・・・
      それなのに温かい励ましをいただけて本当に嬉しいです。

      私のブログが読書へのモチベにつながっていたと聞いて、めちゃくちゃ感動しています。もうほんと嬉しくて死にそうです。
      こちらこそ、まだまだブログを頑張ろうというやる気を灯してもらえました。ありがとうございます!

      マイナスな言葉はできるだけ無視したいのですが、どうしても我慢できなくて吐き出してしまうんですよね・・・
      優しい言葉で心を浄化してもらえるから生きていけます。本当に本当にありがとうございました。

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