普通じゃない世界に迷い込んだ普通の少年は何を選ぶのか―― 『前略、殺し屋カフェで働くことになりました。』/竹内佑


前略、殺し屋カフェで働くことになりました。 (ガガガ文庫)
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評価:★★★☆☆
2018年10月刊。
偶然迷い込んだ裏通りの劇場。
そこで間違いを犯した主人公は、裏社会の人間に命を握られることになり、時間稼ぎのために彼らのカフェで働くことになるのです。
普通の人間が普通じゃない世界に足を踏み入れた時に、彼は何を思うのか。どんな選択をするのか。
意外と図太い主人公の奮闘にハラハラする作品でした。悪くはなかったんだけど、もっと面白くなりそうな余地を残している感じ。
次巻に期待します。

☆あらすじ☆
夜の廃劇場。最近越してきたばかりの街を探索しようとしていた池也迅太は、そこにいた。
そして、目の前でなにやら不穏に倒れている男をみて、そこで記憶はブラックアウト。
目が覚めると、何やらかわいい女の子たちが話しているのが聞こえてきた。
「やっぱり殺すしかないと思うの」
「でも、遺体の処理だってお金がかかりますし……」
あきらかに危険な会話。漂っているコーヒーの香りが不釣り合いだ。迅太はなんとか命乞いをしようと手を尽くし、処理代を稼ぐ代わりに働かせてくれと頼んだ結果、晴れて殺し屋たちが営む喫茶店のウェイターになってしまう。
店を訪れる明らかに怪しい客たち。これまでの常識の通じない少女たち。
それでも、これまでとはガラリと代わってしまった環境に、迅太は次第に馴染んでいく。そして、命の猶予は刻一刻と――。
だが、その殺し屋稼業の正体は……?
クセだらけの少女たちと、ただの普通の少年が、不思議な喫茶店で社会の闇に触れるとき物語は少しおかしな方向に動き出す。殺し屋喫茶・エピタフ開店ですっ!

以下、ネタバレありの感想です。

 

不幸な偶然と過ちの結果、殺し屋喫茶・エピタフのメンバーに捕まってしまった高校生・高柳迅太
自分を殺す相談をする彼らの会話に割入った迅太は、必死に頭を回し、「自分の遺体処理の費用を自分で出すから、そのためにエピタフで働かせてほしい」と交渉を持ちかけるのです。

 

・・・・・・土壇場でこんな交渉をする人間を「普通」と呼んで良いのかは大いに悩むところですが、ともかく、こうして普通の高校生である迅太は普通じゃない世界に足を踏み入れることになるわけです。

 

殺し屋たちのアジトであり、後ろ暗い依頼人がやってくる事務所である喫茶エピタフ。
この設定だけでワクワクとするものを感じます。ピカレスク特有の背徳的で非日常なロマンがある。

 

とはいえ、エピタフのメンバーは血も涙もない非人間ではないのです。
仁義的なお話では割とマトモな感性を見せるし、迅太のご飯は美味しそうに食べるし。
そして、そういう「普通っぽい顔」を見せた後に、倫理観がズレた「普通じゃない顔」を見せてくる。その落差にゾクっとしました。
私的には春姫が一番好きかなー。普通じゃないのが普通っていう雰囲気というか、彼女が一番裏社会の人間らしさが滲んでいて、見ていてとても楽しかったので。

 

そんなエピタフのメンバーに振り回されつつ彼らを冷静に観察し、活路を見出そうとする迅太。
冷静に物事を見極めているかと思いきや、倫理観が狂った世界で「普通の人」らしい感性を振りかざす青臭いところもあって、彼の愚直な振る舞いには結構ハラハラさせられました。
自分だって命がかかってるのに全然大人しくしないんだもの。こんなんドキドキするわ・・・!

 

そんな迅太は最後の最後に重大な選択をし、「普通じゃない世界」の人間として一歩を踏み出すことに。
一般人が裏世界に染まっていく話って大好き。今後の迅太の活躍が楽しみです。

 

ただ、迅太の交渉術って過剰請求を吹っかけるだけのイメージが強すぎて、期待していたような駆け引きとは少し違うなぁと思うところもあって。
最初の「遺体処理費用は自分で出す!」が一番おもしろかったかな。
今後はもっと手に汗握るような駆け引きを見せてほしいところ。期待しています。

 

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