簒奪帝の幼妻は与えられた謎を解き明かす―― 『十三歳の誕生日、皇后になりました。』/石田リンネ


十三歳の誕生日、皇后になりました。 (ビーズログ文庫)
十三歳の誕生日、皇后になりました。 (ビーズログ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2018年10月刊。
面白かった!
『茉莉花官吏伝』に登場した赤奏国の皇帝夫妻を主人公とするスピンオフ作品。
『茉莉花』を知らなくても楽しめる新作で、簒奪に居合わせたことから皇后になった少女が、皇帝から夜ごと与えられる問いの答えを探していく物語です。
予想外にミステリーとして読み応えのある作品でした。
なにより良かったのは探偵役の莉杏がすごく魅力的だったこと。
幼くも聡明で一途なヒロインが、宮中に起こる謎を解き明かすなかで「皇后」としての素質を光らせるストーリーに心が躍りました。
是非シリーズ化してほしいです。この夫婦のこれからをもっと見たい!

☆あらすじ☆
十三歳の誕生日、赤奏国の皇帝に後宮入りを願い出た莉杏。
ところが謁見の間にいたのは、《正規の手段》で帝位を簒奪し、新たな皇帝となった暁月だった!
莉杏は「ちょうどいい」と皇后にされるが、一緒に寝始めても湯たんぽ代わりのまるで子供扱い。
それでも莉杏が眠れるようにと、暁月は毎夜問題を出してくれて!?
夜毎に夫婦の絆が深まる恋物語!

以下、ネタバレありの感想です。

 

国の未来を憂いて帝位を簒奪した赤奏国皇帝・暁月
その簒奪の現場に居合わせ、「ちょうどいいから」という理由で皇后となった少女・莉杏

物語は二人の出会いから始まり、夫の名前すら知らなかった莉杏が、「皇后」として「暁月の妻」として、その自覚と覚悟と抱いていく姿を描いていきます。

 

まず本作で素晴らしいのは、テンポの良いストーリー。

後宮入りの挨拶をするはずが、目の前にいるのは血まみれの男。k彼が皇帝なのか、それとも・・・?というショッキングなシーンからして導入のインパクトが抜群なんですよね。
それに続くのは、莉杏の混乱に乗じる暁月に「なんだコイツは」と思わせてからの朱雀神獣の試練
そこで暁月の分かりづらい優しさに胸がキュンとし、なおかつ、絶体絶命の空気の中で生き生きと輝き始める莉杏の姿から目が離せなくなるのです。

莉杏の「わたくしたちは夫婦だと言っているのです!」の台詞が本当に潔くて格好良かった。
そこからの「貴方、本当に誰ですか!?」の流れも最高。威勢の良い二人の掛け合いにワクワクが高まるばかりでした。

この序盤の流れもそうなのだけど、帝位簒奪の影響で内政が混乱している重い空気のなかで物語を進めつつも、莉杏が自分の意思で動きだすと物語のテンポが加速していくのがとても良いと思いました。読んでて楽しかった。
シリアスとコメディが交互に繰り出される感じでしょうか。巧みに緩急をつけた展開は飽きることがなく、最後まで一気に読み切ってしまいました。

 

また、一問一答式に莉杏が謎に向き合っていく構成も、ミステリーとして読み応えがあって良かった。

「寝物語も子守歌も、おれに期待するなよ。難しい問題を出してやるから、考えてろ。あんたの小さい頭なら、すぐに疲れて寝つける」

そう言って、夜ごと暁月が莉杏に投げかける「問題」の数々。
与えられた問いの答えを探すなかで、莉杏は「皇后」としての素質を芽生えさせていくのです。

幼いながらも聡明で思慮深く、「まとも」な祖父母の教えを素直に受け入れることで身についた柔軟でフラットな視野。
一見すると無垢にモノを見ているようでいて、その実、小さな頭をフルに回して言葉を紡ぐ様は世慣れした大人も顔負け。

莉杏の振る舞いには、子供らしい愛らしさと「子供であること」を利用する強かさが混在しているんですよね。
例えば「皇后ごっこ」をするといって皇太后の思考をトレースするシーン。莉杏が場所を示した一幕は鳥肌モノでした。これは暁月の興奮もわかる(そして「どうだ、おれの皇后はすごいだろう。」の可愛さにやられた・・・!)

 

だからといって可愛げがないわけじゃなく、愛嬌たっぷりな性格も莉杏の素敵なところ。
暁月の内面を知れば知るほど彼に惹かれ、全身全霊かつ体当たりで恋をする莉杏は本当に可愛くて。
「陛下大好き!」が莉杏の小さな体から溢れだして止まらないようでした。キャー♡陛下かっこいー♡と黄色い悲鳴が脳内を埋め尽くしている感じ。

恋愛モードに入った莉杏の無邪気さは探偵役をこなしているシーンとの落差が激しいのだけど、そのギャップもまた可愛いのです。むしろ表裏一体ですしね。莉杏の原動力は恋心だから。
こういう恋愛脳と優秀さが上手く噛み合っているキャラクターってめちゃめちゃ好きなんです。でもあんまりピンとくることが少ないタイプだから莉杏みたいな子は個人的に貴重。出会えて本当に嬉しいです。

 

子どもっぽい顔と大人びた顔のどちらも莉杏で、そこが彼女の魅力を底知れないものにしている。
莉杏が見せてくれる様々な顔に私はとても惹かれるし、次に彼女がどんな行動をするのかと注目せずにいられないのです。

 

そんな莉杏を見守る暁月も良キャラ。
ニヒルでクセの強いヒーローですが、莉杏に対する彼なりの誠実さが透けて見える瞬間が悶えるほど格好いい人でした。
今はまだ愛だの恋だのが芽生えているわけではないけれど(莉杏まだ13歳だから・・・笑)、二人の間には確かな絆を感じる。莉杏の一方通行じゃないのです。なんといっても「どうだ、俺の皇后はすごいだろう」の人だから!(このくだり死ぬほど好き)

暁月の莉杏への情って分かりづらいように思わせてめちゃくちゃ分かりやすいですよね。
刺々しい暁月の言葉から完璧に真意を読み取る莉杏フィルターを通しているからかもしれないけれど。
暁月が問いかけ莉杏が答える。その繰り返しの中で徐々に「夫婦」らしくなっていくのがとても愛しいカップルでした。

 

まぁ、暁月に対してはもっと言葉を選べって思うことも多いけれど。ああ、それは茉莉花も思ってたか・・・・・・
そのくせ、若干イラッとした後に隠されていた真意がじわじわ伝わって「ぐぉおおお・・・イケメンめぇ・・・!!」と悶える羽目になるんですが。なんだこの下げて上げる感じ。癖になるだろやめてくれ!好き!

 

「茉莉花官吏伝」で登場した時点で好きなカップルだと思っていた赤奏国の皇帝夫妻。
本作を読んでますます好きになりました。ていうか正直カプとしては『茉莉花』よりも好きだ。
シリーズ化するのかなー?それとも読み切り外伝だったのか。
ぜひぜひ続きが読みたいです。期待しています!

 

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