孤独な少年の不思議な日常を描くホラーミステリ『昨日の僕が僕を殺す』/太田紫織


昨日の僕が僕を殺す (角川文庫)
昨日の僕が僕を殺す (角川文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2018年7月刊。
北海道・小樽を舞台にした、あやかしのパン屋さんと孤独な少年の物語。
「ホラーミステリ」と銘打たれているだけあって、かなり主人公がひたすら恐ろしい目にあう小説でした。意外と怖かった・・・

☆あらすじ☆
北海道は小樽。母が父を殺した過去を持つ少年、ルカは、頼りの叔母も喪い、高校にも馴染めずにいる。叔母が好きだったパンを買いに、ロシアンベーカリーを訪れたことから、不思議な世界に足を踏み入れ……。

以下、ネタバレありの感想です。

 

「魔が差した」
そう言って母が父を殺したことで、親戚をたらい回しにされ、最後に引き取ってくれた叔母も亡くした高校生・淡井ルカ
ある日、彼は呼び出された古い家屋で恐ろしい存在に遭遇する。窮地を救ってくれたのは叔母が好きだったベーカリー「フレープ・ソーリ」の店主と店員。彼らは正体を隠して人間の世界を生きるあやかしでーー というストーリー。

 

最初のお化け屋敷で「しまった意外と怖いやつだった・・・!」とドキドキしてしまいました。
ちゃんと帯にホラーミステリって書いてあるのにね。自分のビビリを舐めていた。

 

悪霊に目をつけられて冥婚する羽目になり、天狗の渚や親友だった犬のブン改め榊たちに保護され、共同生活をすることになるルカ
あやかしたちとの共同生活におけるルールに苦戦したり、その中で彼らの人柄(?)を知っていったりという話ではあるのだけど、ハートフルな物語ではなく、終盤までずっとギスギスとした疑心暗鬼な空気がまとわりつくのが印象的な作品でした。

 

その原因は主人公であるルカが誰のことも信じていないからでしょう。
彼が唯一信頼と愛情を寄せていたのは亡き叔母だけ。
被害者の子でありながら加害者の子として「悪魔の子」だと自分のことすら信じられないルカが、出会ったばかりの見知らぬ相手を無条件に信じられるわけもなく・・・・・・
しかもその相手はあやかしでしょう?
常識の外にある存在に対して疑いの目を向けてしまうのは悲しいけれど仕方ないことなんじゃないかな。だって知らないんだから。

 

でも知らないのなら、これから知っていけばいいわけで。
少しずつ彼らとの関わりを通して心境が変化していくルカ。
その様子を、ハラハラしつつ見守りたくなる物語でした。
ラストで自分が捨てきれなかった疑惑が間違いだったと分かってホッとする姿が特に印象的だったなぁ。少しずつ信じようとする気持ちが芽生えている感じ。ようやく彼の再生が始まったように思えて胸がじわっと温かくなるのです。

 

孤独を患うルカと、あやかしたちとのぎこちない共同生活。
それはまだ始まったばかりで、信頼関係が築けたとはとても言えない段階。
でもこの先で彼らがどんな交流を持っていくのかすごく楽しみです。
最初は物腰の柔らかいイケメンだと思っていた渚が意外に強敵な感じなんだよなぁ。ツンツンしてる蝶子とどこまで仲良くなるのでしょうか。
ワンコ・榊を癒やしにしたり、ペトラの優しさに心を落ち着けたりしつつ、彼らの今後に注目したいものです。

 

お母さんの事件のこととか今一はっきりしないし、シリーズ化しそうかな?
続きを待っています。

 

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「孤独な少年の不思議な日常を描くホラーミステリ『昨日の僕が僕を殺す』/太田紫織」への2件のフィードバック

    1. 茶一こりんさん、コメントありがとうございます。

      そうですそうです!
      なかなかホラーとしてグロ怖な感じでしたよ・・・

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