かくりよの宿飯9 あやかしお宿のお弁当をあなたに。 /友麻碧


かくりよの宿飯 九 あやかしお宿のお弁当をあなたに。 (富士見L文庫)
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前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
2018年10月刊。
とても良かった・・・・・・本当に本当に、ここまで読んできてよかった。
次の最終巻へ向けて、怒涛の伏線回収をみせる第9巻。
ついに大旦那様の秘密に切り込み、彼と葵ちゃんの関係に隠された真実が明らかになりました。
もうね、感無量です。最高でした・・・・・・

☆あらすじ☆
「お弁当と引き換えに“真実”を一つずつ教えよう」そして葵が知ったのは?
黄金童子に導かれ、葵は文門の地へ辿り着く。そこにはいつもと変わらないように見える大旦那の姿があった。八葉夜行会までの束の間の時を、穏やかに過ごす二人。大旦那はそこで、ひとつの提案を葵にするのだった。

以下、ネタバレありの感想です。

 

冒頭から一気に回収されるのは、これまで詳しく語られてこなかった様々な謎。
「祖父の借金のカタとして嫁入り」という前提から覆るという、まさにどんでん返しなスタートです。

陽気なキャラクターばかり語られてきた史郎の、悲壮感を背負う切実な願い。
葵の心に今なお影を残す「母」の、初めて語られる本来の姿とその苦しみ。

葵と大旦那様の出会いへと繋がるファクターはとても悲劇的で、だからこそ、この出会いが二人にどんな意味をもたらすものなのかが気になるというものです。

 

そんな期待と不安を抱かせつつ始まった第9巻。

・・・・・・が、序盤のシリアスはどこへやら。
意外にも脳天気な再会といつも通りな大旦那様の姿に、ふっと詰めた息が抜けていくのを感じました。
まぁまぁ気持ちを楽にしてお聞きなさい、と言われているみたい。作者と大旦那様の心遣いが優しくて心がポカポカします。

 

そこから始まるのは、いつも通りのようで、いつもとは少し違う、緩やかに流れる葵と大旦那様のひととき。

「毎日弁当を一つ作ってもらう対価に、それ相応の”真実”を一つずつ語る」

追手から逃れた文門の地で、学生や懐かしのトラブルメイカーとの騒がしく過ごしつつ、少しずつ真実を語っていく大旦那様。
シリーズの中で散りばめられてきたピースが、葵のお弁当を対価に、一つの物語として組み立てられていくのです。
これが本当に良くって。
だって、今まで物語の中で描かれてきた何気ない日常がグッと意味を深めていくのだから。

どうして大旦那様は居場所のないあやかしたちを天神屋に受け入れていたのか、とかね・・・・・・
どうしてあんなに葵に構うのか、とかね・・・・・・

色々な真実を知れば、葵と大旦那様の関係が愛しくてたまらなくなるんです。

 

思えば、葵も大旦那様も与える側の存在だったんですよね。

大旦那様は「居場所」を。
葵は「食事」を。

自分たちが欲しても与えられなかったものを、求めている誰かに与えてあげたいと願う。そこに自分の存在意義を見つけようとする。
そういう健気な優しさと、それだけでは癒せない孤独を思うと、あまりにも切なくて胸が苦しくなってしまいます。

 

そして同時に、幼き日の葵と大旦那さまが交わした約束が胸を打つのです。

始まりは葵からだったというのも最高にエモいのだけど、与える側の二人の始まりが「欲しい」という願いだったというのが・・・・・・もう、しんどくて・・・・・・

 

「誰かの一番になりたい」という無垢で痛々しい願いが、やがて「あなたの一番になりたい」という恋へと変わっていくのも良い。
最初は言葉だけの約束。そこに少しずつ想いが重なり、ついには実りを迎えるというのが最高です。
これまでの葵と大旦那さまの軌跡を思わず反芻してしまいます。

 

これは葵の初恋が実ったと言えるのかもしれないけれど、私的には「お面のあやかし」を慕う気持ちはやっぱり「恩人への思い」だった気がするんですよね(葵ちゃん、ずっと「恋愛よくわからん」って子だったし)
羽多子さんのエピソードは、葵の中でも二つの気持ちを区切るためにあったように思えて。
いやまぁ、かくりよに来てから葵が「大旦那様」に対して少しずつ重ねてきた想いこそが恋であってほしいと思うのは、私の勝手な解釈なんだけども。
でも、きっとそれこそが本当に大旦那様が求めていた気持ちなんじゃないかな・・・と。

 

「誰かの一番になりたい」という幼き日の葵の願いは、紆余曲折を経て「大旦那様の一番になりたい」という今の恋を芽吹かせました。

では、大旦那さまはどうだろう?

「僕を愛してくれたら嬉しい」という切ない願いは、「葵に愛してほしい」という恋へと変わっているのでしょうか。

今までの二人と、お弁当を一緒に食べる二人の姿を見たら、答えは明白だと思うけれど。

 

最終回を前にして、最高の伏線回収回でした。
クライマックスに向けてとても気持ちが盛り上がっています。
終わってしまうことを寂しく思いつつ、最終巻がとても楽しみです。

 

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