落第騎士の英雄譚15 /海空りく


落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)15 (GA文庫)
落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)15 (GA文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2018年10月刊。
ヴァーミリオン皇国編クライマックス。
七星剣武祭編に続いて始まったこの章には色々思うところがあって、どうにかこの気持ちを整理したいんだけど、うーん、うまく書き表す自信がない。
落第騎士に求めているものと求めていないものが私の中でゴチャついて混乱を起こしている。
でも楽しかったのも本当なんです。特に黒騎士戦はすごく良かった。あと、表紙の彼女たちが最高でした。

☆あらすじ☆
「愛しているよ。ステラ」
全てが失われる間際、少年は最愛の少女に笑顔で告げた――。
寧音や多々良の奮戦もあり『代表戦』の趨勢はヴァーミリオン側に大きく傾いた。もはや首魁のオル=ゴールを残すのみの戦いは、まさかの《黒騎士》アイリスの裏切りにより、再び混迷に陥ってしまう。
逃走を図る《傀儡王》オル=ゴールと追撃する《紅蓮の皇女》ステラ。弟を助けんとする《黒騎士》アイリス、立ちはだかる《落第騎士》黒鉄一輝。その熾烈な戦いが最終局面を迎えるとき、赤髪の少女の咆哮が戦場に響き渡る!
ヴァーミリオン戦役ついに決着! 別れと絆の第15巻!!

以下、ネタバレありの感想です。
今回は特にネタバレ注意したほうが良い感じ。

 

一輝VS黒騎士ステラVSオル=ゴールの2つの対戦カードが成立し、いよいよ最終局面へ入ったヴァーミリオンとクレーデルラントの戦争。

 

ハイテンションな里帰り&歓迎から血なまぐさい殺戮劇の勃発、修行回を挟んでの代表選スタートという流れをたどったヴァーミリオン皇国編。
トーナメントを勝ち上がっていく七星剣舞祭編と比べて無軌道なストーリーだったのだけど、それを引っ張るだけの面白さがあったかというと、・・・・・・うーん、そこの評価がだいぶ悩むところだったりして。

 

ひとつの巻、ひとつのシーンを抜き出せば胸が熱くなる面白さも確かにあったのです。
でも、全体を通して振り返ると、七星剣武祭編ほどは物語に夢中になれなかった気がします。
七星剣武祭編が良すぎたというのもある。
しかし私にとって最大のネックだったのは、ラスボスであるオル=ゴールに対して最後まで魅力を感じることができなかったことなのだと思います。

 

どう説明すればいいのかな。

 

私は、鍛え上げた剣を構えた騎士と騎士が、互いの信念と意地を賭けて正面から一騎打ちをする、そういうノスタルジックかつ王道な騎士の物語が好きだったわけです。
「落第騎士の英雄譚」は、その信念や意地を「エゴ」や「最弱/最強(さいきょう)」と呼び、一輝やステラをはじめとする多くの騎士たちの信念が衝突する様を見せてくれるシリーズでした。そこが本当に大好きなところだった。

 

でも、ヴァーミリオン編でのオル=ゴールとの戦いはそういうものではなかったんですよね。
「信念」みたいなものを踏み潰すことにこそ快楽を感じる相手なのだから、ゲスい展開が続くのは仕方ないのかもしれない。
そうは言っても私が読みたいのはコレじゃないんだよなぁ・・・というモヤモヤがずっと心に引っかかっていたんです。

 

1巻を初めて読んだときからずっと大好きなシリーズだし、一輝とステラのことはすごく愛してるし、ヴァーミリオン編に入っても新刊はいつも楽しみに待っていたし、そんな作品のことは精一杯好意的に読みたい。

でもね、一輝がオル=ゴールに殺されたシーンは、ちょっともう無理でした。
「は?ないわ!」と思ってしまった・・・・・・

 

いつだって自分の命を燃やし尽くすように勝利をもぎ取ってきた一輝の命がこんなことで奪われるの?
一輝に負けないほどの信念を叩きつける騎士相手ではなく、こんな幼稚なゲスに一輝が踏み潰されるの・・・?

 

なんだろう。すごいショックだった。

 

オル=ゴールには彼なりの「理不尽な世界との戦い」があって、その中で狂気を貫いたキャラクターではあったのでしょう。
ただ、そういうキャラがラスボスとして君臨して、ラスボスとして倒されたときに、そこにカタルシスが生まれたかというと否と言わざるを得ないんです。

だって全然魅力を感じられないんだもの・・・・・・言動にも逆転劇にも小物っぽさが拭えなくて、一輝たちと「格」が釣り合ってるようには全く思えなかった。校内予選の刀華や七星剣武祭決勝戦のステラとは比べるまでもなく。

それはヴァーミリオン編が始まった頃から分かっていたことではあったのだけど、最終局面までにどうにかなると思っていたんですよね。
でもオル=ゴールが語るドラマを知っても心は盛り上がらず、そんな状態で一輝の戦死でしょ? もうねー・・・・・・無理!無理ですごめんなさい!

 

いや、一輝はステラ守るために自分の命を散らして道を切り開いたわけで、それはそれですごく胸熱だったんです。もうほんとこのカップル、互いへの愛と信頼が強すぎるってあの瞬間は大興奮でした。
一輝がただで殺されたわけじゃないっていうのも、すごく彼らしくてグッと心にくるものがありました。
でもやっぱりなんで二人がかりで向かう相手がオル=ゴールなんだよ!という気持ちが・・・・・・ああああううううううううああああああああああ

 

やっぱり、一輝の命を奪い取るのは、一輝の命に見合うほどの魅力を持つ敵であってほしかった・・・・・・
私のワガママなのは十分にわかっているけど、こんな胸熱展開するなら別の相手でやってほしかった・・・!

 

グダグタと不満を垂れ流して申し訳ない。
じゃあヴァーミリオン編は全然ダメだったの?というと、そういうワケでもないのが評価が難しいところなんですよね。

 

特に前半の一輝VS黒騎士の対戦カードは最高でした。

弟への親愛が報われないことを理解したうえで、それでもなお世界を敵に回して愛のために戦ったアイリス。
そして、アイリスの信念を正面から受け止め、自身もまたステラへの愛のために戦い抜いた一輝。

「スポーツ競技」という側面が強かった七星剣舞祭とは異なり、剥き出しのの命と命、信念と信念が衝突する。
そういう、本物の「騎士の戦い」だったのだと思います。これぞまさに『落第騎士』に求めていたもの。

その結末は本シリーズの中でも一際苦く、一輝は初めて自分の歩みだした騎士道が修羅の道であることを実感したわけで・・・・・・
一輝が「学生騎士」の領域から卒業する、意味と価値のある一戦だったと思います。

「全部僕の剣に乗せて往きます。――僕の選んだ騎士道を」の台詞も本当に良かったなぁ。
信念を打ち破るだけでなく、全てを背負っても歩みを止めない。ああ、この優しい強さが本っ当に格好いい・・・!

 

そして今回お久しぶりの登場であり、大金星をあげた珠雫もすごく良かった。
あのヤバい能力、他人にも応用可能とか・・・・・・不可逆であるはずの運命すら塗り替えるって・・・・・・
ただでさえ「カプセル」のおかげで負傷が怖くない世界なのに珠雫の能力まであったら色々とバランスが壊れない?大丈夫?という不安は無きにしもあらずですが、狂気的なまでに一途な兄愛のタマモノだと考えたら何かもうアリかなって思いました。だって珠雫だもん。死んだ兄くらい呼び戻せなきゃヤンデレ系ブラコンの名折れですよね(そのくせ誰よりも兄カップルの幸せを願っているところが珠雫の愛しすぎるところ・・・!)

 

あとはまぁ蘇生能力の乱発もできないようですし。
一輝、なんとも面白い姿になっちゃってwww
その姿でコトに及ぼうとするとか、絵面がやばいから自重しろ!ステラが新たな扉を開こうとしてる!
ドキドキハラハラしたけれど、シリアス続きで疲れていたところだったのでコメディたっぷりなエピローグはすごく楽しかったです。やっと日常が戻ってきた感じ。

 

色々思うままに書き殴ってしまいましたが、私にとって「落第騎士の英雄譚」が大好きな作品であることに変わりはありません。次の展開も楽しみです。

連盟VS同盟の直接対決が起こるとして、一輝たちはどう関わっていくのだろう?
次の敵は、むしろそちらを応援したくなるような魅力的なキャラクターだと良いなぁ。

その前にラブコメな息抜き短編集があると嬉しいです。でもこのまま日本に帰るとか隠し子騒動待ったなし。

 

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「落第騎士の英雄譚15 /海空りく」への2件のフィードバック

  1. やっぱ一輝が復活したとはいえ一度死んだのが自分的にも気になりましたねぇ

    一輝には自己犠牲的な戦いじゃなくて最後まで騎士として勝利へあがく道を選んでほしかったなぁと思いました

    1. 軽本みどりさん、コメントありがとうございます。

      そうなんですよ・・・!
      あんな場面だからこそ、どうにかステラと共に生き抜く道を最後まで探してほしかったです・・・
      「勝利へあがく」っていうところが本当に見たかった(泣)

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