世界を敵に回した魔女が取り戻したかったものは―― 『君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主』/大澤めぐみ


君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫)
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評価:★★★★☆
2018年10月刊。
面白かった!
「おにぎりスタッバー」「6番線に春は来る。」の大澤めぐみさんの最新作は、世界を敵に回した魔女の戦いを描くファンタジー。
ネタバレせずに語るのが難しい作品なのだけど、読み終わった現在、私は絶賛混乱中です。
世界を敵に回した魔女と弟。互いだけを拠り所にし合う二人の関係にエモさと切なさを感じるのだけど、ラストはそういうレベルに収まらない感情の嵐に見舞われてしまいました。
それにしても大澤めぐみさんの作風、3作とも違いすぎません?しかも全部面白いから凄みを感じる。

☆あらすじ☆
ふたりvs.全人類。「おにぎりスタッバー」の鬼才による反逆ファンタジー
数百年続いた「帝国」と「王国」の戦争。泥沼の戦いを終わらせたのは、「愛」を説く新たな教えだった。愛は世界を救い、誰もが虐げられることなく、奪われる心配のない、安心して幸せに暮らせる世界が実現した。しかし、その完全なる調和を脅かす【災厄の魔女】アンナ=マリアが現れて――「“善き人”は、全て殺す。わたしは、わたしの世界を取り戻す」
これは、世界最強で無敵で冷酷で残虐でありえないほど綺麗な僕の姉さんと、僕が、たったふたりで世界を敵に回して戦う、向こう見ずな物語だ。

以下、ネタバレありの感想です。
ネタバレを踏まない方が楽しい作品だと思います。ご注意ください。

 

皆で口裏を合わせて、演技をしている。あるいは、規模の大きなごっこ遊びに興じているようなものだ。その矛盾を、特になんの苦もなく自然と受け入れている。そこに人間の不思議が、あるいは欺瞞がある。世界は様々な虚偽や建前で満ちている。

冒頭にあるこの言葉こそ、本作の全てと言ってよいのではないでしょうか。

世界を敵に回した災厄の魔女アンナ=マリア・ヴェルナー(アニー)と、その「弟」であるアーロン・ヴェルナー
物語は、愛を掲げて戦争を終わらせ地に満ちた「善き人」たちを殲滅し、奪われたものを取り戻そうとするアニーの復讐を描いていくのだけど、終わってみれば、まぁなんと欺瞞に満ちた物語だったのか・・・・・・

 

結局、この物語は何だったのでしょうか。

 

愛という綺麗な虚像で世界を奪い尽くした「善き人」に対して、復讐を誓ったアニーが一人で立ち向かっていくヒロイックなファンタジー?
「善き人」と「アーロン」の存在を通して、自我の同一性を問いかけるスワンプマンをファンタジー世界で描き出す壮大な哲学的実験?

 

そういう側面だけに注目して物語を追っていた私は、ラストの「名探偵の解決編」によってぽーんと暗闇の中に放り込まれたような錯覚に襲われてしまいました。
ただでさえ哲学の迷路に誘い込まれているような気持ちで読んでいたのに、こんなラストはあんまりだ!

あんまりだ・・・・・・あんまりなんだけど・・・・・・悔しいくらいに面白いと思ってしまった・・・・・・

 

そうしてふと冒頭を読み返せば、全く違う意味で目に飛び込んできたのが上に挙げた引用部分なんです。

結局、これは人形劇と人形遊びを世界規模、あるいは宇宙的スケールで繰り広げたお話だったのか・・・・・・
「現在のアーロン」の正体を察してからは「アニーとブレンゲンって、やってることは一緒なんだな」と何とも切なくなっていたのに。本当にまるっきり同じことしてるし、なんならアニーのほうが狂気を感じるまであるという。

せめて3年前のアーロンの面影をよすがにしていたとかならまだ可愛げがあるのに、その最初からして・・・?
死者は蘇らない。死体を操り、生前のパーソナリティを完全に再現したとしても、それを人と呼んで良いのか疑問があるところ。
ブレンゲンの登場で散々語られたことですよね。同一性・連続性を認めるか否かという答えのない問いかけは、あまり深く考えすぎると胸の奥がひんやりしてきます。そして「アーロン」の自我をどう見るべきなのかも・・・・・・「名探偵の謎解き編」、下手すると多重構造の人形劇になるのか。

あとさ、「好きよ、アーロン。大好き。愛しているわ」「ああ、僕もだよ。アニー。大好きだ。愛している」のやり取り、前半と中盤とラストで感じ方が違いすぎて・・・・・・萌えたらいいのか震えたらいいのか(でも萌えるしどこか背徳的で耽美な雰囲気が最高に好き・・・)

 

ところで、世界を敵に回したアニーは結局何を取り戻せたのでしょうか。
何かを取り戻したというより、「嘘」を貫くために必要な行動だっただけなのかな。だって「愛する弟」の敵を取らないのは変ですもんね?
そうして嘘を貫いてしまえば「約束を果たした」ことになり、元の安穏な箱庭に戻れる。ふむ、そういう意味では自分の世界を取り戻したといえるのか。
いやいや、なかなかにワケがわからない・・・・・・人形劇に本気の魔女ってこと・・・?
いやアーロンは見方によっては完全なお人形ともいえないのか・・・(頭が茹だる音)
彼女がどこまで自身の行動に自覚的なのかが気になるところですね。でも「僕」もまた「アニー」なのだと考えたら・・・(頭が沸騰する音)

 

分からないながらも、たった一人で自分の世界を完結してしまえるアニーの在り方は虚無的で、逆にシンプルな美を感じました。ブラックホールとは言いえて妙。
人ではあり得ない彼女の在り方は、まさに魔女的であるのでしょう。

 

うーん感想がとっ散らかっていてすみません。
ひぃ〜〜〜面白い面白い面白いでも訳がわからん〜〜〜〜〜〜〜と混乱しながら書いてるせいです。
「おにぎりスタッバー」を思い出すなぁ。物語に引きずり込まれて振り回されて迷子にさせられる感じが。

大澤めぐみさんの次回作もすごく期待しています。次はどんな作風でくるのだろう。

 

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