あやかしが見える人見知りな少女の成長と再生を描く『京都伏見は水神さまのいたはるところ』/相川真


京都伏見は水神さまのいたはるところ (集英社オレンジ文庫)
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評価:★★★☆☆
2018年9月刊。
水神の加護を受けた少女が、京都であやかし絡みの不思議に遭遇していく現代ファンタジー。
面倒見の良い幼馴染みやヤンデレ気質の白蛇と共に、様々なあやかしを目にしていく人見知りのヒロイン。
彼女を挟んで険悪な(でもちょっと仲良しな)Wヒーローの鞘当ても良いけれど、この作品はヒロインの成長物語として面白かったと思います。
どこか浮世離れした雰囲気だった少女が、憧れる幼なじみをお手本にして少しずつ地に足をつけて成長していく。その姿に保護者目線でほっこりしてしまいました。
あやかし絡みの事件も面白かったし、ぜひシリーズ化してほしい新作です。

☆あらすじ☆
東京でのめまぐるしい生活に馴染めなかった高校生のひろは、祖母の暮らす京都伏見の蓮見神社に引っ越すこととなった。
幼馴染みで造り酒屋の息子・拓己とその家族に世話を焼かれながらの新しい暮らし。
そんなある日ひろは拓己の家で、酒造りの要である井戸水に異変が起こっていることを知る。突然井戸から水が溢れるなか、ひろの耳には不思議な声が聞こえてきて!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

母と折り合いを悪くし、祖母のいる京都へと引っ越してきた女子高生・ひろ
幼馴染の拓巳や、かつて名前をつけた白蛇のシロと再会したひろは、彼らと共に京都で起こる様々な不思議に遭遇していきます。

 

「水神の加護」を持つ神社の娘という巫女的な設定+京都舞台という「まぁ好きですよね・・・!」と言いたくなる美味しい設定をベースとする本作。
安牌な要素で土台を固めつつ、その上でヒロインの成長を丁寧な心情描写で紡ぐところがとても良かったと思います。

 

このヒロイン、最初は1話扉絵の虚ろな表情が似合う危うい雰囲気が心配だったんですよね。
東京の喧騒についていけず、人よりも少しずれた世界を生きるひろ。
それは彼女の個性なのだけど、ぼんやりとしているというよりは魂が半分抜けてるんじゃないかという浮世離れっぷりにハラハラしてしまうんです。

 

そんな彼女を優しく守るのが幼馴染みの拓巳。
東京で一生懸命走って走って疲れてしまったひろだから、のんびりした歩みを待ってくれる拓巳の存在はどれだけ救いになったことでしょうか。
ぼんやりとしたひろを心配しつつ、絶対に彼女を急かさない拓巳の保護者っぷりには萌えが詰まっていました。甲斐甲斐しくご飯を食べさせようとするところは最早オカンみがある。

 

この拓巳とひろの関係、ひろが一方的に救われていたわけじゃないのもまた良いところ。
ヒーローになりたかった少年と、彼をヒーローとして憧れる少女っていう噛み合わせの良さ。
これは拓巳にとっても成長物語(というより成長を確認できる物語)だったのかもしれないなぁ。

下手すれば共依存になりそうな関係ではあるのだけど、それじゃダメだと自分で気づける程度には精神的に自立しているひろと拓巳。
ほとんど後ろ暗いところがなく、優しさと爽やかさを存分に堪能できる良い幼馴染みカップルだったと思います。

 

一方で、ほの暗い雰囲気を漂わせるのはひろに執着する白蛇のシロ。
とろりと甘く、だけど捕まれば底なし沼が待っていそうな神様の執着にゾクゾクしました。
もしも拓巳がいなかったら、ひろはシロに連れ去られていたんじゃなかろうか。
そんな風に思えるほどシロの振る舞いは人の理から外れている。
シロの危うさに拓巳が何度も冷や汗をかくように、私も最後はヤンデレが爆発してしまうんじゃないか!?」ワクワクハラハラしながら彼の動向に注目していたのだけど、最終的には寂しい水神様にとても同情していました。
しかしこの寂しがりの神様にはひろだけじゃなく拓巳とも一緒にいたほうが毎日楽しくて良いんじゃないか? 拓巳との掛け合いシーンはとても生き生きしていますし。
「神棚に上れ」「本物の神なのに!」は笑ったw

そういえば、ひろが幼い頃の記憶が曖昧だったり東京でぼんやりしてたのは結局シロのせいだったのでしょうか。あのへん結局ちゃんと詰めずに終わったような?

 

さて、そんな幼馴染みと神様に過保護気味に見守られつつ、京都のあやかしたちと出会っていくひろ。
冒頭にも書いたけれど、彼女の成長こそが本作で一番面白く感じたところでした。
序盤は誰かとマトモに話すこともできず、すぐに拓巳の背中に隠れてしまうような極度の人見知りだったのに、様々な事件を通して少しずつ前に出てくる姿がとても健気で可愛くて。
自分から一生懸命挨拶しようと声をだすシーンとか「がんばったね・・・!」と褒めてあげたくなりました。
ひろって確かに守ってあげたくなる子なんだけど、彼女はそんな自分を懸命に変えていこうと頑張るんですよね。
そこがまた庇護欲を刺激して応援したくなるというか。赤ん坊を見守ってるみたいな感想でアレだけど(でも割とそんなイメージ)

 

そういうひろの内面の変化はとても丁寧に描かれていて、最初はぼんやりと緩やかだった心の動きが少しずつ大きく揺れはじめて。
ラストの母親との再会シーンとか彼女の成長を象徴的に表しているのではないでしょうか。
走り疲れてトボトボと母親の前から去った子が、元気よく笑顔で母親に駆け寄るんですよ?そりゃあお母さんも泣いちゃいますよ。
あそこはジーンときたなぁ。

 

流行りのあやかしものとして読んだら思いのほか少女の成長物語として楽しめてよかったです。
シリーズ化するかな? 期待してます。

 

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