矢でも鉄砲でも持ってこい!殺気立つ熊との遭遇から始まる『農村ガール!』/上野遊


農村ガール! (メディアワークス文庫)
農村ガール! (メディアワークス文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2018年9月刊。
面白かった!
田舎で農業をする新米社会人の話かと思いきや、田舎で猟師を目指すことになった体育会系女子のお話でした。びっくり。
表紙とあらすじから予想した話とは違ったけれど、ハンター試験に挑むガッツあふれるヒロインの奮闘にとてもワクワクできて楽しかったです。
農業の話を獣害という切り口から描くところも新鮮。自然はかくも雄大で恐ろしい。
それにしても新米女子社員を猟師にさせようとする会社、なかなかに強いですね・・・!

☆あらすじ☆
髪型よし! メイクよし! スーツ姿よし! でも通勤経路は田んぼ脇!?
敏腕キャリアウーマンを目指して一流企業「月見食品」に就職した華。希 望の部署に配属されたと思いきや、勤務先は秋田の山奥にある営業所で!? 豊かすぎる大自然の中で生きる意味を見つめ直す、お仕事奮闘物語!

以下、ネタバレありの感想です。

 

本作、まず表紙がとても良いんですよね。ジャケ買いしたまである。
青空が映える田園風景、とうもろこしを運ぶ素敵な笑顔の若い女性。
この表紙と「農村ガール!」というタイトルから田舎で農作業に奮闘する話なのかな?と予想した私は別におかしくなかったと思うんです。

まさか初っ端から熊とエンカウントし、軽自動車で熊を吹き飛ばし、ようやくたどり着いた配属先で「YOU、猟師になっちゃいなよ!」って話に転んでいくとは思わないじゃないですか。めちゃくちゃ続きが気になりました。この掴みは強い!

 

そんな、あまりにも予想外だった会社の指示。
銃を所持し、狩猟免許を取得しろなんて言われたら、女の子によっては怖気づいて逃げてしまうんじゃないでしょうか。強制じゃないなら尚のこと。

しかし本作の主人公・大神華は強かった。

指導役の本城猛に「どうせ無理」と言われて奮起した華は、持ち前の負けん気と体育会系ド根性をフルに発揮。
右も左も分からない猟師の世界に勢いよく飛び込んでいくのです。

そこからの彼女の悪戦苦闘がとても楽しかった!

各種許可をとったり試験を受けたり銃を打ってみたりと、ハンター資格をゲットするまでの流れを細かく追っていくので読み応えあり。
何かに躓く度に闘志を燃やす華のキャラも良くて、ずっとワクワクしながら物語を楽しめました。

 

華の負けん気の強さは時として無鉄砲さにつながるのだけど、そこも何だか人間らしさを感じて私は好き。
遭難シーンとか、確かに軽率な行動ではある。でも自分の努力を認めてもらえず心が折れそうになっていた華が、自信を取り戻すために必要なイニシエーションだったわけじゃないですか。そうやって気持ちを切り替えるために動き、自分で自分を立て直そうとする姿は格好いいと思うんです。やり方は・・・確かに良くなかったけども・・・・・・

 

さて、猟師になる準備をする一方で、華は自身が勤める食品会社の営業としても仕事をこなしていきます。
営業・・・・・・普通に農作業しているけれど営業職! 農家のみなさんとバーベキューしていてもお仕事中! のどかだなぁ〜笑
華の仕事風景、やたらと楽しそうで羨ましくなりました。
最初は田舎にげんなりしていたのに、あっという間に田舎の空気に順応するあたり、華の生命力の強さを感じたり。
というかこの子は都会でバリバリキャリアを積むよりも田舎で生き生きと人と触れ合うほうが性に合ってるのでは・・・?

 

そんな華を刺々しい態度で指導していくのが上司の本城さん。
優しいのか優しくないのか良くわからないが嫌がらせがまあ姑息。新人へのあたりの強さに最初は苦手意識を感じていました。
でも彼には彼なりの葛藤があったと分かってからは少し優しい気持ちに・・・・・・なるか?ならなくない??その事情、華は完璧にとばっちりやんけ!
まぁそう言っても都会で迷子になってしょげる熊さんに溜飲が下がったので(笑)、終盤は華と本城さんの掛け合いを楽しく眺めることができました。ラブに発展しそうでしない距離感も絶妙で良き。

 

右も左もわからないまま田舎暮らしを始め、未知すぎる猟師の世界に飛び込んだ華。
彼女の奮闘は因縁の対決を経ての猟師デビューというクライマックスを迎えるわけだけど、そのびりびりと緊張感が漂う様子はまさに命のやり取り
生命に銃を向ける覚悟を問われる華の姿に狩猟という行為の厳しさを感じつつ、全てを受け入れる自然の大きさに圧倒される思いでした。難しいことをこねくり回さず、まさに「自然体」な答えだったのも良かった。

 

それと、農業従事者の世界における獣害問題についても面白かったです。
獣害は被害にあった農家だけの話じゃない。もっとマクロな視点で対策に取り組まなければ命にかかわるのだという、共同体意識の重みを感じる一幕が印象的。
不手際をみせた農家へ同情ではなくシビアな目線を向けるあたりでは、途中でバーベキューしていた呑気さは鳴りを潜め、野生動物と隣り合わせの田舎暮らしの厳しさに震える気持ちでした。

 

とても読み応えのある1冊だったと思います。
新米社会人にして新米猟師という華のお仕事奮闘記としてすごく楽しめました。
これはシリーズ化してほしい。楽しみにしています。

 

スポンサーリンク
 
0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。