終わらない戦争を変える運命のボーイ・ミーツ・ガール『名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を』/ミズノアユム


名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を (ファンタジア文庫)
名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を (ファンタジア文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2018年9月刊。
魔法の国と科学の国が長く戦争を続ける世界。
その争いのなかで出会った二人の男女は、やがて世界を揺るがす重大な真実に迫っていくことになるのです。
1冊にぎっしりと詰め込まれた濃厚な物語でした。
途中で明かされる真実が面白かったし、主役2人の交流も楽しくて切なくて良かった。
少し窮屈さが否めないものの、このボリュームの物語を1冊でまとめられたのは凄いと思います。読み応えがあって楽しかったです。

☆あらすじ☆
全てが価値を失う戦場で、少年と少女は戦う。己の証を刻むため。
死を喰らう竜騎兵クロト。最新兵器を操る機械の姫ロア。魔導王国と機械帝国が争い続ける戦場で、戦争を終わらせるため戦う二人の運命が、戦場以外の場所で交差するとき、彼らは己が戦う意味、真の願いと向き合う――

以下、ネタバレありの感想です。

 

神代の魔獣の能力を兵士に付与して戦う魔導王国ジグローゼス。
兵士が巨大ロボット《鋭機》に搭乗して戦う機械帝国メフィエラ。

全く文明が異なる二国が争いを続ける戦場で発生した虹嵐に巻き込まれ、最強の獣騎兵クロトと最強の機械兵ロアは不思議な場所で出会いを果たす。そこで二人が目にしていくのは二国の戦争に隠された真実だった―― という本作。

 

戦場のボーイ・ミーツ・ガールって良いですよね(正確には二人が出会ったのは戦場ではないのだけど)
敵でありながら互いの目標のために一時的に共闘する、というシチュエーションはいつだって掴みが強い設定だと思うんです。
本作の二人の場合、敵兵であること以外の素性を知らないところからスタートするのだけど、何度も行動を共にするなかで互いの人となりを知っていくわけです。
その様子がラブコメテイストに描かれていて、それがすごく楽しい。
ロアがポンコツだったりクロトが思春期男子みたいな反応したりと、ロアとクロトのやり取りにはポンポンと弾むようなリズムがあって。
敵対はしているけれど、互いに非情な人間ではない。だからこそ生まれる不思議な距離感がとても心地よく感じました。

 

ただ、このラブコメがとても生き生きしているように感じられたのは、それ以外の場面のシリアス度が段違いだったからなのかもしれません。

終わりの見えない戦争、使い潰される兵士たち、そして堆積した憎悪と戦争利権に群がる権力者がつくる負のスパイラル。
そして、笑い合っていた仲間の命が消える瞬間の陰鬱さや、それを全て一人で背負おうとするクロトの覚悟の重さ。

戦争の悲劇性を丁寧に掘り下げていくため、要所で挟まれるコメディがちょうどよい息抜きになるし、救いにもなるんです。
ああ、本来あるべきはこういう日常なのだと。異文化の衝突なんてクロトとロアの口喧嘩レベルのものでいいのだと。
このあたり、物語のなかにおける明暗のコントラストがとても鮮やかな物語だったと思います。

 

それと世界観も面白かったです。
魔法使いの国とSFの国が隣り合うってどういうことよ?と思わなくもなかったのだけど、なんとなく「そういうものかな」って流す癖も私には割とあって。
それだけにクロトとロアが見つけた真実にはゾクゾクしてしまいました。
こういう土台からひっくり返す系の伏線回収とても好きです。

 

キャラもストーリーも設定もとても面白い本作。
その一方で、1冊でこのボリュームある物語を描ききるのは若干きつそうにも思えました。
うーん、私の処理能力の問題かもしれない。
でも物語の中で出された情報がうまく整理できなくて困惑する箇所が少しあったんですよね・・・・・・なんだかごちゃごちゃしてたなって印象も強くて。
クロトの両親のこととかも良くわかりませんでしたし。
いや母の行方はわかったんだけど、結局両親は何をしようとしていた人たちだったのかなって。うっかり読み飛ばしてしまったのかもしれないけれど。
アマリネの素性のように、読んでれば察するでしょ?系の描写が多かった気がします。これはもう好みの問題なのだけど、私はもう少し説明がほしかったです。

 

とはいえ、ラストのロアとクロトの雰囲気はとても素敵で、爽やかな読後感を得られました。
綺麗に終わっているからシリーズ化するのか良くわからないなぁ。
二人が再会するところが見たいので、続編に期待したいと思います。

 

スポンサーリンク
 
0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。