異人街シネマの料理人4/嬉野君


異人街シネマの料理人(4) (ウィングス・ノヴェル)
異人街シネマの料理人(4) (ウィングス・ノヴェル)

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2018年8月刊。
お見事!!と拍手を送りたい完結巻でした。
呆れるほどにスケールが大きくなっていく三ツ野家の兄妹喧嘩。
国際規模で繰り広げられた家族問題は、名画と食を描いてきたシリーズに相応しいラストを迎えたと思います。
とても楽しい作品でした。完結おめでとうございます!

☆あらすじ☆
カイの大統領暗殺、それを助けようとする冬基の企みを止めるため、テジェニスタンにやってきた桃だが……?
手に汗握る怒濤の完結巻!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

実母のかけた呪いにとらわれ、大統領暗殺のために動き出したカイ。
そんなカイを止めるのかと思いきや、三ツ野家への復讐のために全てを利用しようとする冬基。

長い旅を経てようやく再会できたにも関わらず、まるで止まってくれない兄たちに対してついに桃が噴火!!

 

恨みと憎しみが積み重なり重く暗いムードに包まれていた物語は、桃の激怒により「三ツ野家の兄妹喧嘩」という壮大な喜劇へと転調してしまうのです。
この切替えが見事だった!
あっさりとお気楽に雰囲気が変わったのではありません。そんな簡単な話ではない。
兄2人の思いを噛み締めつつ、しかし自分の望みのため、一世一代のギャンブルに挑む桃。
その緊張感と高揚する心が、物語の色あいを少しずつ変えていくのです。
それはまるで暗い闇のなかに少しずつ光が差し込んでいくかのようでした。

 

キーパーソンとなったのが月氏とおじいちゃんだっていうのも良かったなぁ〜
特に月氏は金星特急ファンならニヨニヨが止まりませんからね。教官と助手のコンビも曲者感がすごく楽しかったです。この二人のこと、もっと知りたかったな。いつか何らかの形で読めると嬉しい。
そして剛太郎。もうね、前巻までは蛇蝎のごとく忌み嫌って仕方なかったのだけど、くそう、なんとも憎みきれないポジションにおさまりやがって・・・!
剛太郎に対する桃の図々しさが最高でした。「おじいちゃん、お小遣いちょうだい♡」の桁が違いすぎる。

 

悲惨な復讐劇を力づくで「兄妹喧嘩」の枠に押し込んでしまった桃。
「ざまーみろ!」の勝利宣言には喝采をあげずにいられません。ブラボー!
自暴自棄な復讐劇を止めたのが桃の初監督作品だという点も素晴らしい。
映画をテーマとする物語なのに異人街シネマから離れてしまったことを少し寂しく思っていたのだけど、最後にしっかり映画の物語としてまとめてくれてよかったです。

 

ああ、本当に楽しかった!
まさかここまでスッキリと大団円を迎えられるとは。とても満足しました。

 

そういえば恋愛方面の話は結局ないのかーと思っていたのだけど、最後に微妙なフラグが立て逃げされましたね。
いとこかー。兄妹愛の物語であることを貫きつつ、そういう逃げ道・・・じゃなかった想像の余地を残してくれる配慮、嫌いじゃありません。良いように妄想を広げようではないか。

 

嬉野君さんの次回作も楽しみです。

 

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