いきおくれ姫の選択 未婚の魔女にも明日はくる/彩本和希


いきおくれ姫の選択 未婚の魔女にも明日はくる (コバルト文庫)
いきおくれ姫の選択 未婚の魔女にも明日はくる (コバルト文庫)

評価:★★★☆☆
2018年9月刊。
女性は18歳までに結婚し、子供を産まなければ「魔女」として蔑まれる運命にある社会で、自ら魔女となる道を選んだ伯爵令嬢の物語。
社会によって差別され、それを当然のものとして不遇に甘んじる魔女たち。
そんな魔女となった主人公の意識変革の物語として、テーマがはっきりしているぶん読み応えのある作品でした。
結構な胸クソ具合ですが、主人公とヒーローの恋は優しさに満ちていて素敵だったと思います。
ただ、随所で引っかかる部分があって、そのへんで私の趣味ではなかったかな・・・・・・

☆あらすじ☆
18歳までに結婚できなかった女は「魔女」と呼ばれ、差別されるフェルティリア王国。実際、この国の女は生まれながらに魔力を宿しており、未婚の女は18歳を境にその力が飛躍的に発達するのだ。伯爵令嬢でありながら、特徴的な容姿と不器用な性格のせいで、結婚相手を見つけられなかったサナティア。自分の魔力が治癒と回復に秀でていることを知ると、ある場所で修行を積むことに決めて…!?

以下、ネタバレありの感想です。
この物語に対する複雑な気持ちを持て余した結果、感想がネガティブになってしまいました。ご注意ください。

 

美しく従順で貞淑であることが女性に求められる社会で、男性に選ばれなかった女は「魔女」となり悲惨な運命をたどる――

 

この設定だけでなかなかの胸クソ具合ですが、そんな魔女の運命がどれだけ理不尽で悲劇的なものかを気合をいれて丁寧に描いていくのが本作です。
主人公サナティアと、彼女に惹かれるルーカスの恋は微笑ましいのだけど、それよりも胸クソ展開が印象に強く残るんです。
とにかく登場人物の大半が酷い。特に男性はルーカス以外にまともな人間が出てきません。
一見穏やかそうな青年も魔女なら襲ってOKのノリで簡単に牙をむくのですから、男性不信が捗りそうな恐ろしすぎる世界です。

 

で、そんなクズい登場人物ばかりになってしまうのは、社会構造がそうさせるから。そういう価値観が蔓延しているから。
魔女は虐げても構わないものという「常識」がこびりついた社会が物語の舞台であり、魔女たち自身も自分たちが理不尽を受けるのは当然であるという認識なのです。
こういう構造、現実を彷彿とさせてげんなりします。気持ちが悪い。でもよくある話でもある。

 

まぁそこから「こんなことは間違っているのだ」と立ち上がる展開になるわけですが。
社会を変えるには、まず自分たちの意識を変えなければならない。
虐げられた魔女たちの意識改革の物語としては読み応えがあって面白かったと思います。

 

ただ、うーん、私がこの作品で一番残念に感じたのは主人公であるサナティアが予想より受け身だったことなんですよね。
自分から魔女になることを選択した冒頭のシーンでは自立心に溢れた子だと思ったのに、結局彼女は「かくあるべし」から逃れたわけではなかった。
心の奥にまでこびりついた価値観は簡単に拭えるものではない、ということなのでしょうけれど。

魔女の塔に入り人の役に立つことを喜びつつ、そこで起こる理不尽には甘んじるサナティア。
最初の強気な子はどこへやら、割と思考停止状態です。

 

そんなサナティアを啓蒙するのがヒーローであるルーカス。
驚くほどクソな男性しかいない世界で唯一の「王子様」です。
で、ルーカスはサナティアのためにめちゃくちゃ頑張ります。サナティアを慰めるのも魔女を説得するのも世界を変えることもすごく頑張る。
でも彼が「王子様」であればあるほどサナティアは「お姫様」でしかなくなってしまうんです。囚われて助けを待つだけ。
その間に彼女のなかで重要な意識の変化があって、それだけで物語的には十分と言えるのかもしれない。
でも私が見たかったのはそういう話じゃないんです。
助けを待つのではなく、社会が変わるまで耐えるのでもなく、彼女が自ら動いて社会を変えてほしかった。
最初の一歩を自分で選んだサナティアだからこそ、そういうヒーロー的な主人公像を期待してしまいました。ほんと、勝手な期待だけども。こういうのも「かくあるべし」の押し付けなんだろうなぁ。ううむ・・・・・・

 

でもさ、この作品世界で一番大変なのは魔女を虐げる社会構造の変革だと思うんだけど、そこでも主人公がひたすら待ちの姿勢なのはどうかと・・・・・・ここもルーカス任せかぁ、と思って。
話の流れや尺的に仕方ないし、これも潔い取捨選択の結果なんだろうけれど、私はなんだかモヤっとしてしまいました。

 

あーーー、なんか「こういう話が読みたかったのに!」って身勝手な愚痴を垂れ流してるだけだなぁ。申し訳ない。

 

でも更に言うと、最後のセリフにも引っかかってるんですよね。
娼婦は「ただの女性」じゃないの?って。揚げ足取りみたいなこと言っちゃうけどさ。
結局、恋人がいる令嬢が自分より下を探して線を引いていたように、魔女たちは娼婦の魔女たちを自分たちと線引きし、区別している。
ここも何だかなぁって感じです。レイプ未遂の一件をみるに、この世界で一番辛い境遇にいそうなのは、塔で守られている魔女よりも娼婦となった魔女たちだと思うのだけど、そこに全く触れようとしないのが私には欺瞞に思えて。

 

面白かったし読み応えもあったけど、そのぶんモヤモヤがくっきりと浮かび上がってしまった感じです。
あ〜〜もう、批判的でごめんなさい!!面白かった、という気持ちも本当なんだけどな・・・・・・

 

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