彼女のL 〜嘘つきたちの攻防戦〜/三田千恵


彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)
彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2018年8月刊。
面白かった!そしてこういう青春ミステリーを待っていた・・・!
嘘がわかる少年、嘘をつかない少女、嘘ばかりつく少女、そして謎を残して死んだ少女。
様々な「嘘」を解き明かすなかで、傷つき、苦脳し、それでも前に進む少年少女の物語です。
「嘘」というテーマを、ミステリーにも青春にも恋愛にも余すところなく使い込む丁寧なストーリーが素晴らしい作品でした。
思春期特有の潔癖さを抱え、様々な形で「嘘」に振り回される少年少女の心情描写もすごく良かった・・・・・・本当、こういう作品好きなんだよなぁ

☆あらすじ☆
遠藤正樹は嘘がわかる特異体質で、川端小百合は決して嘘をつかない少女だった。そして学校のアイドル佐倉成美は、常に嘘をふりまく少女だった。
ある日、川端と佐倉の共通の友人が亡くなってしまう。自殺という噂だったが川端は「彼女は殺された」と言い、佐倉も「彼女を追い詰めたのは私」とうそぶく。
真相を知りたいと川端に頼まれた正樹は、その力で誰も知らない佐倉の心の内を知ってしまい――。
願いと嘘と恋が交錯するトライアングルストーリー。

以下、ネタバレありの感想です。

 

他人の「嘘」が判別できる特異体質を持つ少年・遠藤正樹
その体質が原因となり父と疎遠になり、「嘘」に対する過剰なまでの嫌悪感を抱く正樹にとって、唯一の安らぎは全く嘘をつかない少女・川端小百合だった。
その川端から「自殺したと言われる小林美沙を殺した犯人を探してほしい」と頼まれた正樹は、一番疑わしいとされる人物・佐倉成美に接触するが彼女は嘘つきな少女でーー という形で始まる本作。

 

一人の女子高生が死に、嘘をつかない少女は「彼女は自殺ではない」と言い、嘘ばかりつく少女は真実を語ろうとしない。
更に謎の中心にいる「小林未沙」像にもズレが生じ、謎が謎を呼ぶ形で物語は進んでいくのです。

この謎を生み出す「嘘」の使い方がとても秀逸な作品でした。

物語の中で、正樹が遭遇する様々な嘘。
女子の些細な見栄やお世辞という些細なものから、自己の存在意義に関わるような重大なものまで、正樹は実に多種多様な「嘘」を彼自身は望まないまま自動的に判別していきます。
でもその「嘘」の真意までは判別できない。彼は、彼の価値観や常識や感情を物差しにして、「嘘」の意味について自分なりに考えていくしかないのです。
これってとても心がすり減る作業だと思うんですよね。
私だったら誰かの嘘なんて暴きたくない。「どうして嘘をついたのだろう」と相手の気持ちを真摯に考える、なんて、あはは何でそんなハイカロリーな上に傷を広げそうなことしなきゃいけないの!無理!って全力で背を向けたい。そう言ってられないこともあるけどさ・・・・・・
特に大事な人がついた重大な嘘ほど、怖くて理由を聞きたくないものです。
まさに、父に何も問わず口を噤んでしまった正樹のように。

 

しかし正樹は次第に「嘘」と真摯に向き合っていくのです。
この正樹の「嘘」に対するスタンスの変化がとても丁寧に描かれていて、彼に影響を与える二人の少女の立ち位置も実に絶妙。
「真実」を大切にする強さを見せてくれた川端にしても、「嘘」に包むことの優しさを教えてくれた佐倉にしても、対照的なのだけど在り方が鮮烈で素敵。
本当に、二人がいるからこそ成り立つ物語だと思いました。こういう風に役割をきっちり分担するWヒロインものは最高だ。

 

Wヒロインものといえば、恋愛面でのオチの付け方もすごく良かったです。
ラストの「大嫌い」というセリフがね、もうね、エモすぎて。
誰かのために嘘をついて自分を殺していた佐倉が、自分のために自分をさらけだす嘘をつくっていうのが・・・・・・しかもセリフ自体は2回で意味を入れ替えるとか・・・・・・は〜〜こういう演出にくいわ〜〜〜
「嘘」をテーマとする作品のラストを飾るに相応しい「嘘」でした。

 

二転三転するミステリーも読み応えがあったし、青春の苦悩には引き込まれたし、それでいて読後感は霧が晴れるかのような爽やかさ。
とても良い青春ミステリーでした。三田さんの次回作も期待しています!

 

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