空飛ぶ卵の右舷砲/喜多川信


空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫)
空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2018年7月刊。
面白かったー!
世界規模の厄災により、「樹竜」と呼ばれる怪物に陸地を奪われ、人類が海上へと追いやられてしまった世界。
そんな世界で、小型ヘリに乗り込み、巨大な敵との戦いに挑む師弟の活躍を描いたSF作品です。
ヘリコプターが縦横無尽に空を駆る空戦シーンがめちゃくちゃ熱い。
皮肉を交わしながらも息の合った連携を魅せる主従の絆に痺れる。
そして困難を乗り越えようとする人間の放つ輝きに感動する!
一度は終末を迎えた世界観も奥行きを感じて良かったし、今後も楽しみな新シリーズだと思います。

☆あらすじ☆
人造の豊穣神・ユグドラシルによって繁栄を極めた近未来。人類は植物を自在に操り、時にはビルさえ“育てていた”。そんな文明絶頂期の中で、『大崩壊』は起きた。世界人口の半数以上が死に絶え、各地ではあらゆるシステムが麻痺。さらに突如現れた樹獣、樹竜と呼ばれる異形の怪物たちによって、人類はあっという間に地上から追放され、その拠点を人工の浮島・海上都市へと移した。
『大崩壊』から数十年。小型ヘリ<静かなる女王号>を操り、樹竜狩りを生業とするヤブサメ。彼は妹が患う奇病を治すため、師であり相棒でもあるモズとともに仕事をこなしながら、日本各地を飛び回っていた。そんな中、二人は東京第一空団副長セキレイの窮地を救い、その腕を買われて旧都市・新宿での大規模探索作戦への同行を依頼される。彼らを必要とするセキレイはヤブサメにこう囁きかけた。
「この作戦の成功は、キミの妹の病を治す事に繋がるかもしれない」
しかし新宿は「帰還不可能」とも噂される、Sクラスの危険地帯。割に合わないと、モズは難色を示すのだが――
これは鋼の翼と意志で空を駆り、樹竜を狩る者たちの物語。
第12回小学館ライトノベル大賞・審査員特別賞受賞作。

以下、ネタバレありの感想です。

 

人造の豊穣神ユグドラシルによって繁栄を極めながら、突如として衰退してしまった人類。
更に地面から異形の生物である樹獣・樹竜が現れて陸地を制圧。追い出された人類は海上に都市を築きながら、様々な資源や遺産を求めて陸地を目指すことに。
本作は、そんなポスト・アポカリプスな世界観を、海上都市での人々の営みや陸地での樹竜との戦いを通して描いていきます。

 

平成は遠い昔となり、かつて栄えた高度な文明はお年寄りの語るおとぎ話となりつつある世界。
それでいて、陸地から持ち込まれた遺産が嗜好品になったり重要な資産になったりと、人々の生活に旧文明の名残が垣間見えるのが面白かったです。
教科書のコレクターがいたり、畳の下に敷く古新聞を高額で買おうとする金持ちがいたり、旧文明への憧れを滲ませるところが「新時代の人間」っぽくて、どこか不思議なワクワク感がありました。

世代交代が進んでいるからなのかな。旧文明のことはどこか他人事なんですよね。
地上の奪還を目指す組織もあるのだけど、「金がかかるだけなのに、よくやるよな〜」的な呆れが強い感じだし。
海上で生活拠点を築き、それを守ろうとする人類は、終末期にあるというよりも新時代の黎明期にあるような・・・・・・
どんな環境でも適応して生きていく。そんな人間の逞しさが印象的でした。

 

これは人類全体だけでなく、各登場人物に焦点を当てても言えることで。
道半ばであるからこそ人は輝くのだ、という強いメッセージが、主人公たちの奮闘を通して何度も伝わってくるんです。
一度は終わりを迎えた世界であっても、そこに生きる人々はより良い未来に向けて懸命に戦っている。その姿がめちゃくちゃ熱くて格好良くて・・・!
強大な樹竜を相手取る緊張感も良い相乗効果を生んでいたと思います。
海上都市のシーンは少し冗長に感じるところもあったのだけど(おつかいパートが長い・・・)、緊迫の戦闘が続く陸地パートはひたすら面白かったです。

 

また、この作品の面白いところは戦闘においてヘリコプターが駆使されているという点。
主人公ヤブサメが巧みに操る『女王号』の縦横無尽な軌道にワクワクしっぱなしでした。ヘリってこんなに格好いい乗り物だったんだ!?っていう衝撃がすごい。
師匠であり相棒のモズの的確な射撃も胸が熱くなります。ギリギリまで引き寄せて一発で敵を射抜く爽快感が最高!

 

ヤブサメとモズの関係も良いんですよね。
金遣いがだらしないダメな師匠と、師匠の尻拭いをするしっかり者の弟子。
それでいて、一旦戦闘態勢に入ればモズは頼もしい歴戦の戦士となり、ヤブサメは師匠に憧れと信頼を抱く優秀な相棒となる。
このオンとオフの切り替えが最高に好きです。しなやかな絆を感じる師弟関係めっっっちゃ好き。

 

ヤブサメとモズの関係の尊さを特に強く感じるのは戦闘での連携シーン。
軽口の応酬で戦闘時の空気を整え、次第に交わす言葉が少なくなり、そして「互いの意思を交わすのに、もはや言葉など遅すぎる」状態へと達する。
これがとても良い・・・・・・
目で確認する必要すらないんですよ。相手の呼吸から意思を感じ取って動きを合わせることができるから。
深い理解と信頼が為せる技に魅せられました。めちゃくちゃ格好良かった!

 

世界観もキャラもすごく好みだったし、これは続きも期待できそうな新作です。
ヤブサメの妹の話があるから、きっとシリーズ化しますよね?
次はどんな師弟の連携をみせてくれるのか、今からすごく楽しみです。

 

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