平安とりかえ物語 居眠り姫と凶相の皇子/山本風碧


平安とりかえ物語 居眠り姫と凶相の皇子 (ビーズログ文庫)
平安とりかえ物語 居眠り姫と凶相の皇子 (ビーズログ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2018年7月刊。
面白かったー!
星から運命を読み取る姫君と、凶相持ちと忌み嫌われる皇子の出会いと再会を描く平安ラブファンタジー。
男装して陰陽寮の学生となった姫君は、幼い頃出会った皇子になぜか目をつけられることに。

このひとは本当に自分の正体に気づいてないの? え、それはちょっと鈍くない??

と訝しむ激ニブヒロインを笑いましょう。お前が言うな!
しかし彼女の前向きな優しさに満ちた言葉はとても素敵なのです。私もこういう人に運命を占ってほしいなぁ。
様々な感情を押し殺しつつ、「いやごめん隠せてないよ・・・!」と言いたくなる一途な皇子の言動も楽しい。
お互いに現状維持を望む二人の恋の行方がとても気になります。
星と暦を扱う宿曜師の物語としても面白い作品でした。シリーズ化希望!

☆あらすじ☆
私が皇子専属の宿曜師に!? 男装姫君×腹黒皇子の平安ファンタジー!
星を見ることが好きなあまり、昼寝癖のある大納言家の姫君・小夜。
すると宿曜師・信明の提案で、病弱な彼の息子と入れ替わり、女人禁制の陰陽寮へ入寮することに!
「男」と偽るも、星が学べることを喜ぶ小夜だったが、ついお使い途中に寝てしまい……物の怪憑きと噂される第一皇子に拾われてしまう!
しかも専属の宿曜師になれと迫られて――!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

夜空の星を愛するあまり、寝不足がたたり「居眠り姫」と呼ばれるようになった大納言家の姫・藤原小夜
星空から運命を読み取る不思議な能力を持っている小夜は、貴族の姫としては落ちこぼれでも稀有な才能を持った少女だった。
そんな彼女の才に目をつけた宿曜師・賀茂信明の手引きにより、彼の息子・志信と入れ替わることになった小夜は、男として陰陽寮の天文生となるのです。

 

というわけで陰陽寮を舞台にした男装潜入もの

 

陰陽寮というと陰陽師を連想してしまうけれど、本作で扱われるのは「宿曜師」
要するに占星術師です。陰陽師は和製魔法使いっぽいイメージだけど、宿曜師は占い師や予言者といった雰囲気でしょうか。
権力者たちが占い結果に振り回される姿をみると、少々(だいぶ?)胡散臭さも感じてしまいます。
でも終盤に発覚する様々な真相を知ると複雑な気持ちになるんですよね。宿曜師を重用することに対する危機感は強まったのに、当の宿曜師は悪くないじゃんっていう。まぁそれでもやっぱり危ういかな。特に信明みたいなヤツは。

 

それはさておき、夜空だけでなく、人の瞳の中にも星空をみつけ、そこから運命を読み解く小夜の能力はとても神秘的でした。
瞳の中を覗き込んで未来を語る小夜の姿は、まるで託宣の巫女のよう。
でも小夜自身は「うわぁこの星空すっごく綺麗〜」と夢中で天体観測してるだけなんですよね。
羞恥心すら星を前にすれば消え失せる。そういうところが可愛いヒロインでしたw

 

そんな小夜と幼い頃に出会い、その4年後に偶然の再会を果たしたのが第一皇子・千尋
凶相持ちとして父帝にすら疎まれた千尋が、傷つき閉ざした心を小夜の言葉で救われるシーンがとても好きです。

「雨に降られたら傘や衣でこうして遮ればいい。それでも濡れたら拭けばいい。外の世界はあなたが思うほど怖くないです。災厄は逃れ方がちゃんとある!」

小夜の言葉って、とても前向きで優しいんですよね。
それは無意識から出るものではなく、相手の気持ちを考えて意識的に言葉を選んだものだというのが更に良い。そういう心配りができる子だということが素敵なんです。

同じことを伝えるにしても、言い方ひとつで受け取り方は変わるもの。見方を変えるだけで可能性は無限に広がっていくものだから――

悪意ある言葉に傷つけられてきた千尋には尚さら響いたことでしょう。これは惚れちゃうよ!

 

そういうわけで、千尋が小夜を好きになった理由はとても納得がいくものでした。
個人的に、恋愛ものでココに説得力がある作品は無条件に推したくなる。

 

さて、初恋の少女と再会できたものの、彼女は「小夜」ではなく「志信」と名乗っている。
まだ「姫」に戻りたくない小夜の気持ちを尊重し、「凶相の皇子」である自身への引け目もあり、千尋は「志信」が「小夜」であることに気づかないフリをします。

 

そう・・・・・・たとえラッキースケベで胸を触っちゃっても、イケメンオーラ全開でそれを反芻しても、お昼寝中の小夜と勝手に添い寝をしても千尋は「志信」が男の子だと信じているのです。と、小夜に信じさせているのです。

 

いやいやいや、めちゃくちゃバレバレじゃん!
言動からバレバレなのがバレバレじゃん!!

 

本当に隠す気があるんですか??
小夜の話を小夜の前で堂々と語るところといい、もはや署名してないだけレベルの差出人不明(笑)の和歌といい・・・・・・
本当は隠す気ないんですよね??

 

恋心を募らせながらも、消極的に現状を維持する姿勢の千尋。
そんな彼をみて、小夜は思うのです。
こんなに共通点があって分かりやすいのに気づかないなんて、千尋は相当鈍いのではないか。おかわいそうに・・・と
私がめちゃくちゃ笑ったのは言うまでもありません。鈍いのは誰かなー!

 

とはいえ、後半になるにつれて千尋も段々「ほんとに気づいてないの?どっちなの?」と疑いを強めていくわけですが。そりゃそうですよね〜
二人の駆け引きめいた応酬も楽しかったです。
小夜が真実に気づくのが先か、千尋の我慢が限界を超えるのが先か。まるでチキンレースですね。ワクワクしますw

 

小夜と千尋のラブコメも面白かったけれど、宿曜師ものとしても楽しめる作品でした。
もし続けば陰陽寮のことや暦の話を更に掘り下げていけるんだろうなぁ。
平安舞台のファンタジーで陰陽師ではなく宿曜師の話、という新鮮な題材選びであることを応援したい。
続編、楽しみに待っています!

 

スポンサーリンク
 
0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。