帝都退魔伝 虚の姫宮と真陰陽師、そして仮公爵(上)/和泉統子


帝都退魔伝~虚の姫宮と真陰陽師、そして仮公爵~(上) (ウィングス・ノヴェル)
帝都退魔伝~虚の姫宮と真陰陽師、そして仮公爵~(上) (ウィングス・ノヴェル)

評価:★★★★☆
2018年6月刊。
面白かった!
久々にストライクコースを行く三角関係モノがきたな〜とワクワクしました。
Wヒーローのどちらにも当て馬感がないのが良い。3人それぞれの複雑な心情をたっぷり楽しめました。

このWヒーローは徐々に相棒として活躍をみせてくれるのだけど、その距離感も良いんです。
境遇も性格も正反対なキャラクターであり、それぞれが異なる魅力をもった好青年。
色々と因縁ある関係だから、影が差す瞬間もある。
それでも二人の好青年は、ドロドロとしすぎず、爽やかに友情を育んでいくのです。

特にムードメーカーな公爵がほんと良い人。私の推しはこちらかなー。
でも影のある幼馴染陰陽師も性癖的に好きだし、厳しい運命に負けない気骨あるヒロインは魅力的だし、うーむ、この三角関係楽しすぎるな??

そんな三角関係が「帝都」で「退魔」な話の中で堪能できるっていうのが最高です。
大事な説明が散漫に感じる箇所もあるけれど、「軍服で妖怪退治」というシチュに勝るものはありません。
いやもうほんと好きなものが詰まってた。満足です。完結巻となる下巻の発売がとても待ち遠しい!

☆あらすじ☆
和風エクソシズム&トライアングル・ロマンス開幕
海軍兵学校の落ちこぼれ・鬼邑陽太は、合州国公使モーガンの娘ミア(実は女装した東宮?)や陸軍士官学校一の秀才で陰陽道宗家後継ぎの土御門良夜と共に、弥和に救う〈まつろわぬ神〉を調査することになり・・・・・・?

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の舞台は、幕末の内乱を乗り越え、西欧化が進む弥和(やまと)帝国の帝都。
国内外に争いの気配もなく、一見平穏な帝都だが、その裏では今上陛下の子供たちが相次いで夭折するという異常な事態が起きていた。

この事態の裏には《まつろわぬ神》の関与があるのではないか。
誰かが帝室を呪詛しているのではないか。

この疑惑を調査するべく秘密裏に選ばれたのは、3人の若き男女。
物語は、3人が抱える複雑な事情を交互に描きながら、帝都に潜む《まつろわぬ神》との戦いを描いていきます。

 

まず、キャラ設定が秀逸なんですよね。

《まつろわぬ神》の専門家である合衆国探索官ケヴィンの娘「ミア」。
その正体は女装した東宮輝治殿下。 ――の身代わりとして幽閉された名無しの姫宮。

・・・・・・というヒロイン・ミアの設定からややこしいのだけど、このややこしい設定が彼女を中心とした三角関係に面白い影響を与えていくのです

 

ミアと共に《まつろわぬ神》を調査する2人の青年のうち、陸軍士官学校一の秀才・土御門良夜は退魔の要である陰陽師。
同時に、良夜はミアが姫宮時代に親密に過ごした幼馴染でもあるのです。
しかし良夜は「ミア」の事情を察しつつも、「“彼”は、東宮輝治殿下である」という今上帝の意向に従い、見て見ぬふりを決め込みます。
このため良夜の「ミア」に対する気持ちは蓋をされ、上巻ではあまり深く描かれません。ああもどかしい!

 

一方、同じく「ミア」の正体を確信し、その上で彼女に恋をしてしまうのが海軍士官学校一の劣等生であり、若くして公爵となった鬼邑陽太
陽太はとにかく爽やかな好青年でした。何度「お前、いいヤツだな!」って心で叫んだことか。
ややこしい事情を抱えた3人の関係において、潤滑剤の役目を果たすのも陽太なのです。

ミアに惹かれつつも、彼女の良夜への想いを察して、優しく明るくフォローするシーンとか。
良夜の窮状を察しつつ、彼の負担にならないように、彼が無理をしすぎないように、適宜フォローするシーンとか。

あまりにも完璧なフォロリスト察し性能が高すぎます。

 

そこだけ見ると陽太は当て馬にありがちなキャラクターかもしれないけれど、本作で主に語り手となるのは陽太であり、3人の中では一番主人公してる男なのです。
それもあって、ミアを中心とした三角関係は絶妙なバランスを保っているように感じました。当て馬らしい当て馬はいないので。

このあたり、ミアの良夜への想いは恋に見えるけれど(ケヴィンも陽太もそう見てる)、ミア自身は微妙に言葉を濁しているところも注目したい。
ミアの「ただ良夜の幸せを願っているだけ」というのはどこまで本心なのか。
婚約者登場には動揺していたけれど、そこまで傷ついてる様子はないんですよね。既に自分の幸せを諦めているから?
でも、陽太に対しては何とも言えない微妙な感情が芽生えつつある?

 

うーん、上巻だけみると本命は(最終的に)陽太になるのでは?という感じがあるような。
ミアが陽太に喝を入れるシーンとか「これは陽太が惚れるの分かる」と思えたし、良夜ばかりを見ていたミアが次第に陽太のことも考え始める姿には「おおっ?」と前のめりになってしまいました。
ミアの心の占有率が緩やかに変動していく感じが良いんですよね〜
現状、陽太・ミアのカップリングの方が好感触なので、どうしても陽太が正ヒーローに見えてしまいます。

 

ちなみに、今のところ私は陽太推しです。
陽太の片思いって可愛すぎて応援したくなるし、好きな子と相棒の両方を健気に支える姿を見てると・・・・・・報われてほしいなぁ。

 

まぁ性癖的には幼馴染で陰鬱な雰囲気が漂う良夜の方が好みなんですけどね。
なんといっても、良夜はとてもポテンシャルが高い・・・!
「心の支え」系の幼馴染ですから。ミアにとって誰よりも大切な存在なのは間違いないんですから。
これは下巻で追い上げてきそう。いや、追い上げてこい!

それに上巻だけだと、良夜はいまいち掘り下げが足りないので・・・・・・
というか「ミア」のことを深く考えないようにしている反動か、なんだか良夜は陽太のことばかり考えていたような??
良夜視点は陽太へのコンプレックスまじりの羨望が印象強すぎる(笑)
これはこれで面白いから良いんですけど。

 

「鬼邑公爵」に対する複雑な感情を押し殺しつつ、陽太自身への好意を強めていく良夜。

そんな良夜と天真爛漫な陽太のコンビは好対照で、《まつろわぬ神》討伐でも熱いタッグを見せてくれるのが楽しかったです。
ていうか神剣使いと陰陽師の軍服コンビって時点で最高では?最高では???

 

また、このコンビの良いところは、正反対なキャラ付けが物語の中で上手く生かされている点だと思います。

成り上がり貴族の庶子で最高位の公爵になった海軍の劣等生と、由緒正しい貴族の嫡男だが没落し貧困にあえぐ陸軍の優等生。
とぼけてるけど懐が深いオトン気質と、生真面目で融通がきかないオカン気質。
そして、理不尽に対して陽太は正面から戦うけれど、良夜はじっと耐えてやり過ごす。

名前もそうだけど、まさに光と影みたいな二人。
それでいて反発しすぎることなく、互いの良さを素直に認め合っているところが、爽やかで心地よい空気を生んでいるのでしょう。
これは良い相棒になる。むしろなってる。今後も期待できそうなコンビだと思います。

 

いやぁ、ほんと面白かった。
序盤は展開や説明が散漫で読みづらく感じたんですけどね。メイン3人の視点を交錯させているからかなぁ。
特に《まつろわぬ神》って結局何なの?これから3人で何するの?という、物語の方針が分かりづらくて。
たぶん下巻は最初からすんなり物語に入れる気がします。

 

鬼邑前公爵に隠された秘密が気になるし、仮初の東宮であるミアの未来も気がかりです。
そして何よりミア、良夜、陽太の三角関係の行方がどうなるのか・・・!
下巻発売が待ち遠しいです。良夜→ミアの掘り下げがきますように!

 

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