僕は何度も生まれ変わる/十文字青


僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)
僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2018年7月刊。
面白かった!!
異世界へ転生した後、同じ女が原因で何度も転生を繰り返すことになる少年。
そうして迎えた5度目の人生で、彼は殺され続ける運命への逆転を目指すのです。
各国を蹂躙する人間の帝国と、帝国に抵抗する他の国々の戦いを描いたファンタジー戦記としての読み応えも素晴らしい。
じりじりと命を削られていく緊張感ある展開と、それによって生まれるラストのカタルシスに思わず涙ぐんでしまいました。
とにかくめちゃめちゃ面白かったので、シリーズ化に期待します!

☆あらすじ☆
『薔薇のマリア』『灰と幻想のグリムガル』十文字青が贈る新たなる英雄譚!
ある日、僕は死んだ。享年29歳。しがない社畜の儚い末路だった――はずなのに、まさか生まれ変わった……のか? でも、僕はまた死ぬ。運命の悪戯なのか。死んでは生まれ変わり、そのたびに””彼女””が僕を殺す。漆黒の髪。赤い眼。僕を””劣等種””呼ばわりする””人間の帝国””の彼女が。そして、とうとう5回目の人生。成り行きでとるにたらない傭兵暮らしをしていた僕の許に、突然アークラントの””魔王””から使者が来た。はあ? 僕が魔王の隠し子だって……!?
――これは何度も生まれ変わった挙句、何の因果か魔王の血を受け継いだ””僕””がやがて英雄へと至る物語――泥臭くも華麗なる大逆転劇が幕を開ける!

以下、ネタバレありの感想です。

 

29歳の社畜SEとして死に、異世界に転生した主人公。
そこで待っていたのは、「人間」を絶対種とするエヴァラスティア帝国が他国に次々と侵攻する戦乱の世。
そんな世界で、帝国に襲われる様々な国の様々な人種に転生を繰り返す主人公の姿を描きながら、物語序盤では何十年にも及ぶ帝国による蹂躙の恐怖が描かれていきます。

 

5度にわたる不本意な転生と、その死に関わる黒髪の女。
二人の因縁の正体は未だ見えてこないものの、転生を繰り返すなかで主人公が彼女が抱えていく困惑、憎悪、諦念といった負の感情にはとても引き込まれました。
最初の淡い恋が無惨に潰されるシーンとか、悲劇なのだけど儚い美しさもあって・・・・・・正直好き。
その後2回の人生はあまりにも呆気なく、理不尽な運命に戦慄しました。「だから、何なんだよ、おまえは」ってほんとそれ。

 

それと、亜人種が存在する世界なんですよね。ここ。転生中に主人公の人種が変わるのだけど、細かな仕草に現れる違いが面白かったです。
この世界って、帝国ほどじゃなくても亜人種に対する差別が多かれ少なかれ存在する様子。
ただ、猫耳人や蜥蜴人のように差別されている種族もいれば、魔族や巨人族が王族の国もあるし、国や人種によって色々事情が異なる感じなのでしょうか。
混血も進んでいるようだし、人種問題は結構ややこしい話なのかも?
だからこそ「人間」と「それ以外」で分けるような極端な思想が暴走するのかもしれない。
2千年以上前に滅んだ最初の帝国ミレニアムの話があったから、それだけじゃないのかもだけど・・・・・・
このへんの話はシリーズ化すれば更に掘り下げられるのでしょう。楽しみです。

 

そういう世界で主人公が迎えた、「ロワ」として生きる第5の人生。
孤児の傭兵が実は魔王の隠し子っていうキャッチーな設定からして楽しい。
その実体は帝国に対抗するための連合軍構想「百族協和」のための駒でしかないのだけど、そこから激しく動き始める「ロワの物語」こそが本作のメインであり、前回までの人生とは比べ物にならない密度と濃度で描かれていくのです。

 

出会って即追いやられた魔王一家に家族としての情など芽生えず、入婿先の巨人族の国では馴染む前に戦争が勃発。
タマミナ登場直後のほんわかラブコメムードは一瞬で消え去り、そこからは窮地に次ぐ窮地を切り抜ける緊迫の戦いが描かれていく――
ここは読んでいて疲弊するくらい圧迫感のある展開でした。
「繰り返し転生できる」という設定があるだけに、いつどこでロワが死んでもおかしくないのが嫌な緊張感を生んでいるんですよね。
登場人物紹介でも「ロワジュディアン。この物語の主人公。いつまで「彼」が主人公でいられるかは運命のみぞ知る。」とか書いちゃってるし!

 

でも話が進むほどに「ロワ」の人生はかけがえのないものになっていくのです。これが終わってしまうことに対する(私の)恐怖は段違い。
ミシャの死ですら割とショックだったのに、これでタマミナやアルノアやジョーとお別れってことになると泣き叫んでしまうやも・・・・・・

 

帝国の侵攻を必死に食い止めるべく奔走するロワ。
虚弱な身体を引きずり知恵を絞って戦うなかで、彼が築いていく人間関係は次第に鮮烈な魅力を放っていきます。
それはもう、最後のロワの独白に思わず目頭が熱くなってしまうくらいに。

いつの間にか、欲しかったものをぜんぶ手に入れていた。
今ここにあるものも、いつか壊れてしまうんじゃないかと思えて、怖い。

転生を繰り返してきた「彼」が経てきた喪失の連続と、だからこそ生まれた恵まれた「今」を失いたくないという強い願い。
こんなの、めちゃめちゃ感情移入するに決まってるじゃないですか!
それでも戦況が移るたびにポロポロと誰かが欠けていく。そこが本作の恐ろしいところであり、面白いところでもあって。
ポッと出の魔王一家が予想以上に「家族」していてすごく良かったし、傭兵団再登場が胸熱すぎでした。最高かよ。お願い。死なないで。

 

どうか一人でも多く生き延びてくれますように。
しかし帝国の姫・リンゼリカとの因縁は「ロワ」の人生で終わるのかどうか・・・・・・
続きがとても気になります。

 

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