紅霞後宮物語 第八幕/雪村花菜


紅霞後宮物語 第八幕 (富士見L文庫)
紅霞後宮物語 第八幕 (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2018年6月刊。
武人皇后の生涯を描く中華後宮シリーズ第8弾。
ついに三カ国の戦争が集結し、第一部が完結とのこと。
物語はまだまだ続くようなので安心しました。今後も末永く見守りたいシリーズです。

☆あらすじ☆
劉梅花、あなたに罰を与えましょう――
怪我に倒れた小玉に代わり、戦場では賢恭が軍を率いていた。宸にも小玉の負傷、樹華の訃報が届き、後宮は揺れる。文林の命により自身の失態の原因を突き止めようとした梅花は、さらなる闇に真実を見つけてしまい――

以下、ネタバレありの感想です。

 

三カ国の戦が集結。
これを受けて、多くの登場人物に大きな変動が起こる1冊でした。

 

重症を負って苦しむ小玉。戦を終わらせるも「勝ちすぎて」しまった賢恭。
そんな戦の後始末を引き受けて後宮を去る雅媛。それを見送る妃たち。
そして暗躍の結果「罪」を犯した梅花と、愚かしさの「罰」を受けた司馬若青――

 

私が後宮小説を面白いと感じるのは、美しい箱庭の中に多くの人生が煮詰められているからなんだろうな、と改めて感じました。
様々な人が様々な思惑で動き、様々な感情で衝突する小さな世界。
権力のすぐ近くにある場所で愛や憎悪が渦巻く姿にゾクゾクします。その人の本質が剥き出しに暴かれる背徳感のようなものに惹かれるのだろうか。

 

後宮には本当に様々な人がいて、若青のように自己中心的で愚かなまま自滅する人間もいれば、雅媛のように友情のために次の舞台へ颯爽と旅立つ人間もいる。
でも妃嬪だけが後宮で人生をかけているわけじゃないのだと思い知ったのが今回の梅花の話でした。

 

梅花が犯した罪の重さと、その行動を支えた信念の強さに、不謹慎かもしれないけれど「さすが梅花さま・・・」と思わず唸ってしまいました。
若青を陥れたのが誰かを知った瞬間とかね。ああ、そういう理由で彼女の気力は失われるのかと。
「大家の御子に母親と健やかに育っていただきたかった」という理由から伝わる愛情深さ(罪悪感や責任感も)と、そのために起こした行動の容赦のなさと、その先に待っていた結果の残酷さの温度差にクラクラします。なんて歪なんだ。これこそが後宮・・・!

 

そんな罪深くも優しい梅花に、どんな結末が待っているのかハラハラしていたのだけど、お別れが穏やかなものだったことには安堵しました。
先が長くないことは何度も言及されていたから覚悟していたし、彼女のキャラクターや立ち位置的に無惨な最期ではないだろうという予想もしていたんですけどね。
でも、(小玉も言っていたけれど)こういう「安らかな死」はなかなか描かれないシリーズですから。
うん。ホッとした。

 

それと同時に、自分もこういう風に死にたいものだと考える小玉が印象的でした。
「どう生きるか」から「どう死ぬか」へ。小玉の考え方の変化も気になるけれど、彼女の考え方が武人的なものから変化してきたように感じられます。上手く言えないけれど、命を燃やし尽くす方向性じゃなくなってるのかな?
その変化は何をもたらすのでしょうか。穏やかな死を願うことが小玉の性格や行動にどんな影響を与えるのかな。
とても気になります。
第二部では小玉と文林の関係を掘り下げる予定のようだけれど、二人の関係の着地点がそろそろ見えてくるのでしょうか。

 

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