宝石商リチャード氏の謎鑑定6 転生のタンザナイト/辻村七子


宝石商リチャード氏の謎鑑定 転生のタンザナイト (オレンジ文庫)
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前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
2018年1月刊。
美貌の宝石商と迂闊な正義漢のコンビが宝石にまつわる謎を解き明かすジュエルミステリー第6弾。これにて第一部完結です。
リチャードが抱えていた問題を解決したと思ったら、次に切り込むのは正義の闇。
闇の深さに目眩がしそうでした。だからこそ、ラストが最高なのですが。

☆あらすじ☆
将来の進路を思い悩む正義の前に、ひとりの男が現われた。染野閑。正義の父親だ。家庭内暴力で正義の誕生後すぐに離婚していたのだが、金がなくなり正義を探し出して近づいてきたのだ。何度追い払っても執拗につきまとわれた正義は、リチャードに迷惑をかけるわけにはいかないと「エトランジェ」を辞めようとするのだが…? 大好評ジュエル・ミステリー、第一部完!

以下、ネタバレありの感想です。

 

前半の「さすらいのコンクパール」「麗しのスピネル」「パライバ・トルマリンの恋」で描かれるのはいつも通りのエトランジュの日常。
しかし後半から始まる「転生のタンザナイト」で、これまでもチラチラ見えていた正義の闇が、ついにその正体を表すことになるのです。

 

正義が狂気に取り込まれていく後半の展開にはゾッとしながら引き込まれてしまいました。
確かにあったはずの優しい日常が、一瞬で遠い世界の話になってしまったような感覚。
このへんの描写が上手すぎて、流石辻村さん!と讃えたくなります。
辻村作品の「人の弱さ」の描き方が無性に好きなんだよなぁ。
人が見せる脆さ。そこで終わらない強さ。
そして、強さを後押ししてくれる「厳しい優しさ」が素晴らしく胸に迫るんですよね。

 

それはさておき、正義の抱える闇に切り込んでいった第6巻。
父親の毒親っぷりにゾッとしていたら、話はそこよりも更に踏み込んだところにあって・・・・・・
正義が取り憑かれた原因のデータの話はよく聞くけれど、それが呪いとなるケースは本当にあるのかもしれない。
正義に対するリチャードの「あなたは差別主義者です」という糾弾と共に心に刻みたいと思います。

 

しかし、そうか。
正義の立ち位置のとり方って不思議だな、と思うことはあったけれど、彼もまた「異邦人」だったんですね。

「正義くんの話を聞いて、ここは外国人の店長さんが素敵な宝石を見せてくれるお店だと思ってたんですけど、ここは自分のことを『エトランジェ』だと思っている人たちに、とっても優しくしてくれるお店なんですね」(166頁)

世界から切り離されるかのように、自分を異質な存在だと思っている人々。
そんな異邦人の客人たちに寄り添う店「エトランジェ」。
「エトランジェ」が、リチャードが、どれだけ異邦人に優しいかは、これまでも描かれてきたことだけども。
その優しさが全力で正義に向けられるとここまで胸が熱くなるのか・・・・・・

暗くてジメッとした迷路に迷い込んでいた正義にぶつけられた「私は、あなたが、好きで、好きで好きで仕方がないから、同じだけ怒っている」のセリフがすごく好きです。
このシンプルな一文にリチャードの気持ちの全てが込められているのが良い。
自分の存在意義さえ見失いかけて正義には効いただろうなぁ。だって存在の全肯定ですもん。
この言葉に二人が過ごした時間の重さも見えるし、ああ〜〜〜って拝みながら私は泣きました。

 

クライマックスの畳み掛けるような家族愛も最高でした。
中田のお父さん・・・・・・存在うっかり忘れてたのに、なんて良いタイミングで良い存在感を放つんだ・・・・・・

 

さて、正義の問題が解決して第一部完。
血の繋がりが呪いとなる姿を描いたあとに、血の繋がらない人たちの優しさを救いとするというのが素敵でした。
「家族」という言葉の意味も色々と考えてしまいますね。
家族だと思ったら家族なんだよ。だから家族じゃないって決めたら他人でいいと思う。でもあの狂ってる男はどこへ行くんだろう・・・・・・

 

ちなみにプロローグとエピローグには完全に騙されました。
宝石に詳しく綺麗なキングス・イングリッシュで話すパーフェクトなイケメン・・・・・・完全にリチャードだと思いこんでた。
いや、リチャードが三輪スクーターに乗ってるの?と思ったけど。でも荒んでた時期のこともあったし。

 

正義の就活については概ね予想通り?
ただ、就活失敗ではなく自主的に宝石の世界に飛び込むかと思っていたんですけどね。まだ諦めてはいないのかぁ。どうするんだろ。

今の正義って、リチャードに語学力と接客技術を叩き込まれていて、容姿もパーフェクトなイケメン、そして性格は「正義」のまま。うーんこのハイスペック感。
経歴も面白いことになっていることだし、確かにこれなら就活再チャレンジいけそうだけど、心のどこかで「往生際が悪いな・・・」と思う私がいますw
いいじゃん宝石商!リチャードと世界を旅していこうよ!

 

まぁ、正義の将来がどうなるのかは2部で描かれることでしょう。
1部をここまで綺麗に話を収めてしまって2部とか始めて大丈夫?という疑問は多少あるのだけど、辻村さんなら上手いことやってくれるはず。期待しています!

 

ところで最後に正義が言った「好きな人」って今もまだ谷本さんのこと?

 

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