《このラブコメがすごい!!》堂々の三位!/飛田雲之


《このラブコメがすごい!!》堂々の三位! (ガガガ文庫)
《このラブコメがすごい!!》堂々の三位! (ガガガ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2018年5月刊。
ライトノベル系まとめサイトを運営する男子高校生と、炎上騒動に巻き込まれたネット小説家の女子高生の物語。
マーケティングの話がメインの業界モノという感じの作品でした。
最初はクリエイター系の青春小説だと思っていたのだけど、創作にかける熱い想いとかは重視されないんですよね。
むしろ「何が売れるのか」「どういうものが受けるのか」という話が延々と語られていくんです。
個人的に引っかかる部分もあるけれど、フィクションと割り切って読めば面白い話でした。
面白さ不要論はラノベ好きとしてとても寂しい気持ちになるけどね!(泣)

☆あらすじ☆
「面白い=売れる」なんて幻想だ――。
大手ライトノベル系まとめサイト「ラノベのラ猫」の管理人をしている高校生、姫宮新。
彼はとある記事作りをきっかけに、最近行われたネット小説賞《このラブコメがすごい!!》で三位に輝いた小説の作者が意中の少女、クラスメートの京月陽文であると知ってしまう。彼女の投稿作品は厳密な意味でのラブコメではなかったが、ネット民の悪ふざけで炎上気味に盛り上がり、三位に押し上げられてしまったのだった。そして、その悪ふざけを煽った張本人は「ラ猫」管理人の新。だが、それを知った陽文は怒るワケでもなく、こう言った。
「わたしにラブコメの書き方を教えてほしいの」
新は陽文にドギマギしながらも、自分の考える「売れるライトノベル」の条件を示し、陽文が次の《このラブ》に向けて小説を書くのを手伝うことになる。陽文が書いて、新がまとめサイトで宣伝する。そうすれば、話題作になること間違いなし、と。ついでに陽文との距離も縮まれば言うこと無し。だが、青春&恋愛偏差値ゼロの新は、陽文と距離が近づくほどに自分は陽文にはふさわしくないと思うようになってしまい……?
まとめサイト管理人と作家志望の少女が紡ぐ青春サクセスラブコメ!

以下、ネタバレありの感想です。

 

「なぜこんなパーフェクトヒロインが、主人公のようなうだつの上がらない奴に惚れるのか」

という感じの感想、私もたまに書いてる気がします。
でも「人を好きになるには理由がいるだろ!」って言いたいわけではなくて、一目惚れを否定しているわけでもない。
こういう感想を書くときって、作品の描写不足にキレてるだけなんです

ヒロインが惚れるほどの「主人公の魅力」を作中から読み取れないからご都合主義に感じる。
キャラの心情描写がお粗末すぎて「好き」って言葉だけが独り歩きしているように感じる。
だからこそ「なんで好きになったの?」「何が好きなの?」って問い質したくなる。その相手は作者です。キャラではない。

そもそも「ご都合主義」に怒っているときって、「ご都合主義」自体ではなく「ご都合主義」を強引にでも納得させるほどの描写力がないことに嘆いているんだよなぁ。
まぁ、ここまで全部自分の読解力については棚上げしてるんですけど。

 

では、本作はどうだったのか?

 

本作では主人公・姫宮新が隣の席の京月陽文に一目惚れし、どうしようもなく彼女に恋をしていることが重要なポイントでした。
冒頭の「こういうレビューがあるけど〜」の話も、新が自分の一目惚れを正当化するために延々と語っているネタですよね。本人は正当化を否定していたけれど。

 

たしかに新の恋には理由がない。
それでも、私は彼の恋の話自体は楽しめたんですよね。
「理由は分からないけど好きなんだ!」という描写には不足を感じなかったからかな。

自分の一目惚れを理屈っぽく正当化しようとしたり、仕事をダシに使おうとしたり、公私混同で陽文を特別扱いしていたり、それに気づいて動揺したり、果ては彼女との決別にショックを受けて泣き出したり。
なんという情緒不安定な恋w
特にいじめを受けてもドライに対応していた新が陽文の言葉で泣き出したシーンは心底ギョッとしましたw
でも、おかげで「理由もなく好き」ということへ混乱が伝わってくる。
高校生でありながら自立した「大人」の顔が印象的な新が、陽文のことを考える瞬間に見せる年相応の少年らしさが私は好きです。
こういうギャップを感じる主人公は見てて楽しいんだよなぁ。

 

ただ、ラブコメ全体については、まさに冒頭の不満そのまま。
残念ながら描写不足を強く感じました。特に陽文サイド。
終盤までの積み上げが足りず、そのためラストの盛り上がりにいまいち乗れない。
クライマックスを新と陽文の恋の話として盛り上げるのであれば、もう少し二人の関係に焦点を当ててほしかったです。
新の頭は常に陽文のことでいっぱいだったけれど、肝心の陽文本人は物語の途中から影が薄くなっていたような・・・・・・新との一対一での絡みが少なすぎる気がしました。
うーん。妹のフラグブレイカーっぷりが有能すぎたのか。

 

ラブコメ(?)パートの感想はそれくらいにして。

 

ラノベ業界モノとしてマーケティングの話に振り切っているところは面白かったです。
私が今まで読んだクリエイターものは売上や数字を気にしつつも、最終的には「創作への情熱」で盛り上げる作品が多かったんですよね。
一方、本作は主人公がクリエイターではないから徹底してシビアな商売人の視点しかない。そこが私には新鮮でした。
特に炎上を利用する話はかなり興味深かった。
実際どうなんでしょう?ラノベに限って言えば炎上商法が成功した例ってあまり思いつかないのだけど・・・・・・私が知らないところで何かが盛り上がってヒットしてるのかな?最近は某テニス小説が炎上して打ち切りになった記憶しか

 

まぁ、一人のラノベファンとしては、本作の結論になるラストの展開にはモヤモヤも感じるんですけどね。
結局まとめサイトの狙い通りに流行は作られ、商業作家の狙い通りに作品が燃えて盛り上がるとか・・・・・・私は悲しい・・・・・・
面白さが数字に結びつかない歯がゆさは常に感じているから、確かに体感的に頷ける部分もあるんだけど。
でもなぁ・・・・・・なんて夢がない小説なのか。カラカラに乾いたリアルは辛いよ。

 

まぁ色々書いたけれど、面白かったです。
これを新人さんが書いたというのも面白い。
本作がシリーズ化するのか分からないけれど、ここまで冷徹にラノベ業界を分析した著者が、次にどんな作品を書くのか注目したいと思います。

 

「非現実世界ファンタジーとラブコメは相性が悪い」「しかも中世西洋風ファンタジー世界を舞台にしたラブコメっていうのは、構造的に厳しいものがある」

えっ・・・・・・・・・・・・・・・少女小説・・・・・・・・・・・・なろうの悪役令嬢ブーム・・・・・・・・・・・・他にもラブコメファンタジーってたくさんあるのに・・・・・・

いや、まぁマーケティングの話なら、うーん・・・・・・

 

本当は陽文が書くはずだった投稿作のプロット、普通に面白そうだったから小説化してほしい!

 

スポンサーリンク
 
0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。