君死にたもう流星群/松山剛


君死にたもう流星群 (MF文庫J)
君死にたもう流星群 (MF文庫J)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2018年5月。
ああ、これ絶対にどんどん面白くなっていくやつ・・・!
いや1巻だけでも十分に面白かったのだけど、「役者が揃い、舞台が整った」ところで終わっているんです。
この先を読ませろー!という気持ちをどうしてくれよう。

『世界一美しいテロ』と呼ばれる流星群の夜に大切な人を亡くした主人公。
腐ったまま大人になり、後悔と苦しみのドン底にいる彼に与えられたのは、すべてをやり直すチャンス。
与えられたチャンスをどう活かすのか。運命に対する主人公の挑戦をハラハラしながら見届けたくなる物語でした。
ちなみに、彼が繰り返す「コスパ」という言葉に囚われる気持ちに少しでも共感すると泣きたくなるほどのメッタ刺しを喰らいます。私は半泣きでした。

☆あらすじ☆
二〇二二年十二月十一日。その日、一九五七年の旧ソ連・スプートニク計画に端を発した人類の人工衛星の歴史は唐突に中断した。
『宇宙』と『夢』を巡る感動巨編スタート!

以下、ネタバレありの感想です。

 

2022年12月11日に起こった『世界一美しいテロ』と呼ばれる大流星群。
多くの人工衛星が流星となって墜落したこの事件で、主人公・平野大地は大切な存在だった天野河星乃を失ってしまう。
それから3年、定職にも就かず腐っていた大地のもとに「星乃の遺言」が届けられる。
これをきっかけに、大地は全てをやり直すチャンスを手に入れることになるのです。

 

この作品、前半はひたすら大地の後悔、疲弊、嫉妬、諦念といった負の感情が渦巻いていて、正直私はとても疲弊しました。
スルスルと頭に入る読みやすい文章が、とても的確に精神を削ってくる・・・・・・

特に辛かったのは『コスパ』の話。
私自身がコストパフォーマンスの良い人生を歩んでいないという負い目があるからかな。なんだかやたらと刺さりました。だいぶ涙目だった。

そしてそれ以上に、これまで何気なく使ってきた『コスパ』という言葉の嫌らしさを痛感しました。

数値化できないもの、数字では計りきれないものを『コスパ』という言葉で比較することに何の意味があるんだろう。
人の生き方というのはそんな言葉で簡単に評価できるものなのか?
大地がコスパコスパと執拗に繰り返す度に、私は嫌な気持ちでいっぱいになりました。

星乃を喪ったせいで人生のレールを外れたのかもしれないけれど(あれ?でも大地が無職になった理由って何か書いてありましたっけ?)、それにしたって見苦しいな、と。
あと人生のドン底を感じてる割には上から目線すぎるなコイツ、と。

 

そういうモヤモヤが、後半の展開で少しずつ拭われていくわけです。このへんのカタルシスは絶妙でした。
特に「A×C=P」の方程式の意味はすごく良かった。
コスパという言葉に感じる後ろ向きな姿勢や逃げ腰な雰囲気を、この方程式は180度転換させる。とても素敵な考え方だと思います。
そういう考え方ができる星乃も本当に素敵な女性だ・・・・・・(引きこもり期は猟奇的だったけど)

 

さて、前半はコスパ大地の暗い語りで進む本作ですが、中盤以降、大地が星乃が残したタイムマシン「スペースライター」を発見したことでタイムリープが発生するというSF的な展開へ突入していきます。
これ、私は結構予想外な展開でした。前情報あった?見逃したのかな?
葉月がメインヒロイン、星乃が故人ヒロインって感じで大地の再生を描くのかと思い込んでたんですよね・・・・・・

 

まぁそういう不意をつかれたわけだけど、むしろ待ってました!の展開です。
だって星乃死亡シーンを「今この瞬間のできごと」として見せられた以上は星乃救済を願うしかないでしょ・・・・・・たすけてって言われたら助けないとダメなんですよ!!!

 

ただ、やり直しが始まってからの展開も前半と同じく話のテンポは遅く、消化不良状態で1巻が終了。
残りページ数をみながら「あれ?この調子で星乃救済までいける?」と不安に思っていたのですが、うーん、救済は救済だけど思ったより小手調べ感がある。
クラスメイトの事故とか義母娘の確執とか、そういう小さな「やり直し」を繰り返すことで未来を変えていく物語になるのでしょうか。
じっくり進めてくれるならそれはそれで良いし、今の丁寧な描写で少しずつ積み重ねていけば傑作となる予感。壮大な物語を展開してくれることを期待しています。

 

しかしやり直しの分岐が起こる度に大地は血の涙を流すの・・・?
ビジュアル的にエグいし、周囲はギョッとしちゃいますね。普通にイラストが怖い。

 

それと、この作品って社会問題をガンガン盛り込んでいたけれど、今後もそういう方向性なのでしょうか。結構面白かったからそのへんも楽しみだったり。
電波受信したヤツと悪ノリしたネット民の話とか怖かったなぁ。あとマスコミの話も。
こういうフィクションであってほしい話が現実に起こる世の中・・・・・・

 

何はともあれ今後に期待したい新作でした。

大地は星乃の運命を変えることができるのか。
『コスパ』に囚われた自分を変えることができるのか。
そして、流星群に隠された秘密を始めとする謎の数々に、どんな真実が隠されているのか。

続きがとても楽しみです。

 

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