七月のテロメアが尽きるまで/天沢夏月


七月のテロメアが尽きるまで (メディアワークス文庫)
七月のテロメアが尽きるまで (メディアワークス文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2018年4月刊。
はぁ・・・・・・泣いた・・・・・・
儚いほどに繊細で、胸が痛いほどに純粋な青春の日々。
クラスメイトの秘密を知った少年が、迷い悩みながらも彼女と関わっていこうとする姿を描いた物語です。
彼の選択はとてもエゴが強くて、同時に、献身的な優しさを感じるものでした。
この読後感をどう表現すれば良いのだろうと一瞬悩んだけれど・・・・・・うん。たった一つの言葉で十分なのかもしれません。

☆あらすじ☆
二人の結末を見届けた時、きっともう一度読み返したくなる――。
人付き合いを避け生きてきた高校生の内村秀は、ある日クラスメイトの飯山直佳が落としたUSBメモリを拾う。その中身、「遺書」を見てしまったことから、奇妙な交流は始まった。やがて秀は直佳が進行性の記憶障害を患い、自殺を願っていることを知り……。
「君が死ぬときは、僕も死ぬ。それが嫌なら君は生き続けろ」
「……内村くん、すごく馬鹿なこと言ってる自覚は?」
約束に隠された本当の想いを知った時、きっと最初からページをめくりたくなる。切なく美しい物語。

以下、ネタバレありの感想です。

 

クラスメイトの飯山直佳が落としたUSBを拾った主人公・内村秀
そのUSBには「suicaide memory」というラベルが張ってあり、中には遺書と「七月のテロメア」と題されたファイルが入っていた――

 

綴りに余分なものが入っているのは誤字ではありません。伏線でした。
ちなみに私は作中で指摘されるまで間違いに気づきませんでした(かなしい)

 

さて、青春を謳歌しているように見えた直佳の秘密を知った秀は、できるだけ彼女に関わらないように決意します。
過去のトラウマから人と関わることを拒む秀。しかし、ついつい考えてしまうのは直佳のこと。
物語は、戸惑い揺れる秀の心を追いながら、「飯山直佳」と「内村秀」の二人が抱える心の傷を描き出していきます。

 

作中に何度も登場するのは「雨」「白」、そして「透明」
これらのキーワードの使い方が印象的なのだけど、特に「雨」で表現される心象風景が好き。

雨音が生み出すホワイトノイズ。雑多なものを洗い流し、ただ雨粒が弾ける音だけで世界が緩やかに閉じる。

それは秀と直佳の関係によく似ていると思います。
二人の関係は、繊細で刹那的な閉塞感を覚えるものだったから。
周囲が知らない秘密を共有し、遠くない終わりを見つめながら、今しかない時間を二人だけで分け合っていく二人には「雨」がとても良く似合うんですよね・・・・・・

 

そんな物語を的確に表現しているのが、表紙とカラーページのイラストだと思います。
誰もいない教室に二人で寄り添い、雨が窓を叩く音だけが響く時間。
あるいは、ひとつの傘の下にしゃがみ込み、雨音に耳をすませる二人。
次の瞬間には壊れているかもしれない「二人だけの世界」。その切り取られた一瞬に胸が締め付けられるのです。ううむ。このイラスト、やっぱりとても素敵です。

 

そして、「雨」の風景と同じくらい心に残る「透明」という言葉。

――この憂鬱で、息苦しくて、切なくて、やっぱり憂鬱な、胸を有刺鉄線で締め付けるような感情の名前。
『透明』。
僕たちはそれをそんなふうに呼んだ。

秀と直佳の関係そのものが「透明」といえるんじゃないかな。
そんな透明な彼らの前に突きつけられるのは、たった二つの選択肢。

安らかな死か、苦痛の強い生か。

この二択しかない現実が重すぎて、果たして正解はあるのだろうかと考えてしまいます。
否、きっと正解なんてないんだろうなぁ。
「生きていれば、きっといつか良いことがある」というのは常套句だけど、「いつか」がない飯島には残酷すぎる。
だから秀はとても悩むのだし、未来がない彼女に生を強いることが自分のエゴでしかないことを痛いほど理解し、その上で「生きろ」と告げるわけですよね。
そこには彼の覚悟があって、その覚悟を貫いた秀は(彼自身がどう思っていたとしても)とても優しい人だと私は思うのです。
だってこんなの簡単にできることじゃない・・・・・・死を見据えながら隣に居続けるなんて。
「よく頑張ったね」という台詞、秀にもかけてあげたい言葉です・・・・・・

 

傷ついた心を抱えたまま寄り添いあった秀と直佳。
「生きててよかった」と彼女が思えたなら、この結末はハッピーエンドだったのでしょう。
いやもう、辛いし、寂しいし、めちゃくちゃ悲しいんですけどね?
でも、そういう苦しい気持ちが心に優しく溶けていくようにも感じて・・・・・・うん。きっと、これもまた「透明」なのでしょう。

 

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「七月のテロメアが尽きるまで/天沢夏月」への2件のフィードバック

    1. 茶一こりんさん、コメントありがとうございます。

      そうですよ!
      白身魚さんの絵柄、とても素敵ですよね・・・・・・
      この作品、内容とイラストの調和がすごすぎて本当にズルいんです・・・!(号泣)

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