クラリッサ・オルティスのささやかな願い 没落令嬢と成り上がり商人の恋のレッスン/ナツ


クラリッサ・オルティスのささやかな願い 没落令嬢と成り上がり商人の恋のレッスン (アイリスNEO)
クラリッサ・オルティスのささやかな願い 没落令嬢と成り上がり商人の恋のレッスン (アイリスNEO)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2018年5月刊。
没落しても矜持を忘れない貴族令嬢と、平民の成り上がり商人。
契約結婚の話が出る一方で貴族の礼儀作法を教えることになったヒロインは、そのレッスンを通して彼と心を交わしていくことになるのです。
身分差から生まれるすれ違いや、負い目や引け目などの暗い感情に振り回されることはあるけれど、主要登場人物に嫌味がなく読み心地は爽やか。二人の恋の行方に夢中になって読みきってしまいました。
ナツさんの作品は何作か読んでいるのだけど、丁寧な心情描写についつい引き込まれてしまうんですよね。特に切なさを盛り上げるのが上手い。
メイン2人の恋愛も素敵だったし、家族愛の物語としても良い作品だと思います。
健気に支え合う三姉妹の絆にとても心があたたかくなりました。
あまりにもキャラが好きすぎるからスピンオフ熱望・・・!

☆あらすじ☆
「借金は払ってやる。俺と結婚すればいい」
没落侯爵令嬢であるクラリッサのもとにやってきたのは、立派な身なりの貿易商・リュシアンだった。容姿端麗なリュシアンだが、乱暴な言動でクラリッサを驚かせる。しかも会ったその日に彼がもちかけてきたのは、紹介状目当ての契約結婚!?
当然断ったクラリッサだけれど、なぜかリュシアンにマナーレッスンを行うことになってしまって……?

以下、ネタバレありの感想です。

 

時代の流れを頑なに拒んだ結果、多額の負債を抱えて没落したオルティス侯爵家。
病床の父に代わり家を守らねばならない長女クラリッサは、二人の妹に満足な食事を用意することもできずにいた。
明日も見えない困窮にあえぐクラリッサの前に現れたのは、平民出身の成り上がり商人・リュシアン
貴族に顔を繋ぐためオルティス家に届く招待状がほしいリュシアンは、借金返済を条件にクラリッサに契約結婚をもちかけるが――

 

という序盤の流れだけを見ると、利益に貪欲な腹黒商人が、か弱い貧乏令嬢の弱みにつけ込む形なのかな?と予想したくなります。

 

でも違った。

 

貧困に苦しみながらも、貴族としての矜持だけは捨てず、どんな時でも凛とした佇まいでいようとするクラリッサ。
貴族社会のマナーが分からず粗野な振る舞いをしてしまうけれど、素直で優しい人柄がにじみ出るリュシアン。

二人は最初から「対等であること」を意識しているし、その上で相手のことをとても尊重しているんです。
その誠実さが好ましい。
リュシアンの最初の訪問が終わる頃にはこの二人のことが好きになっていました。

 

そこからの展開もGOOD。

クラリッサがリュシアンに貴族のマナーを教えていくのだけど、まるでマイフェアレディの男女逆転版みたいでワクワクしました。
マナー違反をクラリッサがチェックする度にリュシアンの振る舞いが紳士になっていく様子がコミカルに描かれていくのだけど、これがとても楽しいんです。
レッスンという名の交流を重ねることで、二人の間に恋心が芽生えていく様子も素敵でしたしね!

 

最初の頃の「こういう時どうすればいいのかわかんねー!」と唸るリュシアンの素朴さは可愛いし、順調に優雅さを身につけるリュシアンは格好良いし、マナーは身につけても何も変わらない彼の内面にホッとしたりもしました。
そういう気持ちは全部クラリッサの想いにつられたもの。
クラリッサの想いの揺れ動きは、本当に丁寧に描かれていたと思います。
彼女の気持ちに寄り添いながら、リュシアンの成長を喜んだり寂しく感じたりするのがとても楽しかったです。

 

没落貴族と裕福な平民という立場の違いから、戸惑いだったり羞恥だったり引け目だったり安らぎだったりと色んな感情が目まぐるしく交錯するクラリッサとリュシアン。
立場が違うから戸惑うし、生活レベルが羞恥を生むし、二人の間にある「取引」が引け目を生む。
それでも、全く違う世界に生きているからこその安らぎを感じたりもして・・・・・・
侯爵家の長女として誰にも甘えられなかったクラリッサが、貴族的な価値観を持たないリュシアンだからこそ素直に甘えられるっていうのがグッとくるんです。これは萌える。クラリッサが少しずつ心の鎧を脱いでいく姿にときめきを感じずにいられない!

 

ただ、没落中と求婚中なのでどちらも心に余裕がなく、そのせいで頻繁に衝突する姿にはハラハラしました。
終盤の一番大きなすれ違いとか、本当に酷かった・・・・・・
言えなかったリュシアンの気持ちは理解できるけれど、その結果起こった騒動をみると「なんでここまで大げさなことに!?」と思わずにいられない・・・・・・

このへんのすれ違いは、リュシアンの自己評価の低さがもろに災いしてるんでしょうか。
商売で成功した男なのに、クラリッサに対しては割と卑屈になるからなぁ。
クラリッサからの好意に対して自信がないリュシアンをみて、「鈍感はあなたもですね!」と強く思いました。しみじみ。

あ、でも「成金」と「貴族令嬢」に対する彼の負い目が強いってことでもあるのかな?
変革期にあっても身分制度が染み付いている時代背景によるところは、思った以上に大きかったのかもしれませんね。

 

没落貴族と成り上がり商人として出会い、マナーレッスンの先生と生徒として交流を重ね、やがて夫婦として愛を育てていくクラリッサとリュシアン。
二人の恋の物語はとても素敵でした。

 

それと同じくらい家族愛の物語としても素敵だった・・・!

 

オルティス三姉妹の関係がとても良いんです。苦しい生活を必死に支え合う姿が健気で愛おしくなる。
家を背負って精神を張り詰めるクラリッサは痛々しかったけれど、姉を支える二人の妹が前向きだからバランス取れている感じ。
野草採集が趣味になった貴族令嬢とか憐れみを覚えそうなものなのに、リリーは全力で楽しんでいるのが伝わってきてほっこりしましたw
リリーに比べると微妙に影が薄かったシルヴィアも、終盤のハウスパーティーでは格好いい見せ場があって満足。

 

仲良しなオルティス三姉妹の中にリュシアンが入ると、まるで四兄妹みたいな賑やかさが生まれるところも好きです。
妹たちとリュシアンの会話がすごく「家族」していて和むんです。
クラリッサに対しては甘々わんこなリュシアンだけど、リリーとシルヴィアに対しては気さくなお兄ちゃんっぷりを発揮するのがまた微笑ましくて。
私もこんなお兄ちゃんか妹がほしかったなぁ。いや違うな。オルティス家の使用人になって四人を見守りたい・・・・・・

 

恋のすれ違いにハラハラし、熱い夫婦愛に砂糖を吐き、温かい家族愛に癒やされる作品でした。
とても楽しかったです。
これ、妹たちを主人公にしてスピンオフとかないのかなー?
「オルティス三姉妹シリーズ」にするとかどうでしょう???
義妹のセコムをするリュシアンが見たい!

 

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