スカートのなかのひみつ。/宮入裕昂


スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)
スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★★
2018年5月刊。
面白かったー!
「風がスカートをめくったあの瞬間、すべてが始まった。」
男の娘と巨漢のコラボレーションから始まるパワフル系青春群像劇です。
男の娘が「世界一の女装アイドル」を目指したり、三人娘が「時価8000万円のタイヤ」を盗み出そうとしたり、巨漢が恋煩いでおいおい泣いたりと、なかなかにカオスな物語。
しかしエネルギッシュで純粋一途な少年少女の青春に圧倒されるばかりでした・・・!

男の娘たちが女装にかける真摯な想いが素敵。
希望を絶たれた少女が再起する姿には胸が熱くなる。
そして何より八坂幸喜真という男の破天荒さが楽しすぎて!

是非、是非、この八坂という男のことを知ってほしい。
彼の言葉を聞いてほしい。
彼の不器用な恋の結末を見届けてほしい。

特に終盤が最高なんです。
爽やかな疾走感に背中を押され、休む間もなく一気読みでした。
彼らの青春にたくさんの元気をもらった気分。大満足です!

☆あらすじ☆
男の娘も、女の子も、そこにはひみつを隠している――。
「面白いものが面白いものを呼ぶんだ。考え方一つで世界が変わる」
高校で同じクラスの八坂幸喜真は、その名の通り“好奇心”に足が生えたような男だ。
謎の棒、植木鉢、そしてボレロ。アイツの行動はいつも何がなんだかサッパリ。
でもそんな“八坂らしさ”が起こすある奇跡のことを、その時の僕らはまだ知らなかった。
「天野、俺たちは飛べるんだ。希望があれば俺たちはどこまでも飛べる!」
世界一の女装アイドル、赤いラインカーの美少女、そして時価八千万円の……タイヤ??
足下を吹き抜ける“蛇の息”が僕(わたし)と私のひみつをさらけ出した時、八坂と“あの子”の愛の物語が幕を開ける――。
第24回電撃小説大賞≪最終選考作≫よりお届けする、初夏薫る疾風青春グラフィティ!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

女装趣味をもつ男子高校生・天野翔
ある日、クラスメイト・八坂幸喜真にナンパされた天野は、女装姿を褒めちぎる八坂に「女装して学校に来いよ」と誘われる。
一方、同じ高校に通う広瀬怜は、偶然出会った丸井宴花新井田牧乃に付き合い「時価8000万円のタイヤ」を盗み出すことになり――

 

というわけで、物語は天野翔と広瀬怜という二人の語り手による二本のストーリーを交錯させつつ進んでいきます。
この構造に隠された秘密については序盤でピンときた人も多そう。そこまで珍しい仕掛けじゃないかな?
時間軸や人物相関図は察しやすいので、そこまで隠す気はなかったのかもしれません。
個人的な好みで言うなら、ここはもう一捻りあっても良かった気がするかな(でもシャーリーの正体は面白かった)

 

ただまぁそんなことはどうでもいいんです。
本作を推したい理由はそこじゃないから!

 

まず推したいのは男の娘二人が「女装」に向ける真摯な想い。

天野にとって女装は努力によって培われた技術の結晶であり、誰にも穢すことを許さない誇り。
メアリーにとって女装は救いであり未来の兆しであり、自分を変えたいと思うきっかけをくれた宝物。

二人の想いや、八坂の言葉を聞いていると、「コンプレックス」や「自分らしさ」について考えてしまいます。
その答えは千差万別に存在するし、不変なものでもないと思うけれど。
欲と執念と努力で「コンプレックス」を乗り越え、受け入れ、その上で「自分らしさ」を求めていく彼らの姿には、とても王道な「青春」を感じたから。
なんだか彼らの物語が「自分らしさ」を見つけるヒントをくれる気がするんです。こういうのは良い。とても良い青春小説だと思います。
最初は「電撃文庫のイロモノ枠?」とか思ってごめんなさい・・・!

 

そんな彼らが、絶望の底にいる少女のために「世界一の女装アイドル」を目指す展開も良かった。
誰かを励ますために、まずは自分が頑張ってみせるとか、熱いなぁ。青春だなぁ・・・!
ただ、自分が苦しいときに人の頑張りを見るのはキツい時もあるとは思うんですけどね。精神的に。
だから、ぶつけられたエールを真正面から受け止めた怪獣も格好いいのです。彼女の負けん気の強さは本当に魅力的でした。

 

ちなみに「シスターズ・オーキッド」が人気を獲得する過程は少しトントン拍子に上手くいきすぎかな?という気もしたり。
うーん、でもアイドル立身出世はメインテーマじゃない(と思う)から尺的に仕方なかったのかも。
シスオキの活躍をもっと見ていたかったけれど・・・・・・しかしやりすぎると本筋から逸れる・・・・・・ううむ難しい・・・・・・

 

さて、私の本作最大の推しであり、この物語に欠かせないのは『八坂幸喜真』という男。
語り手ではなく狂言回しのような立ち位置にありながら、ダントツで鮮烈な存在感を放つ巨漢の留年生です。

この八坂が突飛な言動をみせる度に、グッと胸が熱くさせる私がいました。
彼の言葉の選び方も、言葉を紡ぐタイミングも、それに伴う行動も、何から何まで心に刺さる。
めちゃくちゃ破天荒だし、ビジュアルはハンプティ・ダンプティなのに!
完全に道化キャラのビジュアルと言動なのに、ピンと筋が通った彼の漢気が格好良すぎて痺れるんです・・・・・・なんなのこのひと・・・!好き!!

 

パワフルな超人的存在の八坂だけど、自分の恋には臆病で健気。
なんでこんなところでギャップ萌えを狙うんだw って笑ったけれど、彼がみせる等身大の少年らしさが更に魅力を引き立てるんです。
いやまぁ、恋のために留年2ターンとかお前大丈夫かよって思うところもあるんだけど。
そんな風に常軌を逸した執着だとしても、それを貫き、最後まで「あの子」を応援した姿には正しさや美しさを飛び越えた「強さ」を感じます。
そんな八坂の恋が私はとても好き。

そもそも一歩引いた距離で全力の応援を続けるとかイケメンタルすぎるし。
どんなにイケメンな台詞を吐いてもハンプティ・ダンプティだから愛嬌があったのに、本当に完璧無比のイケメン様になってしまうしさぁ・・・!震

 

そんな八坂の恋の最終局面であり、この物語のクライマックスである宴花の挑戦シーンは最高の一言。

目を離すな!しっかり見届けろ!と訴えかけるような疾走感。
頑張れ負けるな諦めるな!と一緒に叫びたくなる高揚感。

もう好き。ほんと好き。このクライマックスとてもとても好き。

タイヤをクリスマス・リースに見立てるところも大好きです。小粋だなぁ、もう!
「あの子」の希望を奪ったタイヤ。「あの子」の未来が詰まったタイヤ。時価8000万円の意味を持つタイヤ。
絶望の象徴だったそれが、最後には愛と夢を象徴するものに変わったんですね。ごめんちょっと好きしか言えない。

 

全ては巡り巡って繋がっていくし、無意味なものなんてひとつもないのです。冒頭で八坂が言ったボレロそのままに。

「繰り返される二つのメロディ、繰り返される一つのクレシェンド。まるで俺の日常そのものだ」
「毎日が繰り返しってこと?」
(中略)「高揚していくんだ。一歩ずつ、一歩ずつ。同じに見えて、同じじゃない・・・・・・生きるってのはそういうもんだろ」

 

伏線回収がとても綺麗な作品だったと思います。
今のタイトルも好きだけど、投稿時の『サンタと怪獣のボレロ』も好き。この作者さんのセンスが好き。ちょっと「好き」って言いすぎか?
物語の放つパワーで元気をフルチャージしてくれる作品でした。私も自分らしく生きていきたい!

 

最後に一番好きな台詞を引用して締めます。

「転んだっていいじゃないか!!失敗したって構わない!!この退屈な世界でさえ!!君が笑えば俺は幸せだった!!だから!!愛を信じてくれ!!希望を捨てないでくれ!!どんなに冷たい風が吹いたとしても!!殴りつけるような向かい風だったとしても!!君のすべてが!!好きだああああああああああああああああああ!!」

 

ぱ! わ! ふ! る!

 

引用してブログに書き残しておきたい台詞が多すぎて困る。とても楽しかったです!

 

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