龍の騎手/エル・キャサリン・ホワイト


龍の騎手 (創元推理文庫)
龍の騎手 (創元推理文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2018年2月刊。
グリフォンに妹を殺された娘と、龍と絆を結んでモンスターと戦う龍騎手の青年。
二人の出会いから始まるロマンチックなドラゴン・ファンタジーです。
ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」をオマージュしているという本作。恥ずかしながら「高慢と偏見」は未読なので比較できないのだけど、この作品単体でも十分に面白くて大満足です。
なんといっても、人とドラゴンが空を舞い、ホブゴブリンが庭で騒ぎ、暗い洞穴の中に潜むラミアにゾワっとするファンタジー満載な世界観が最高に好き!
高慢な男と偏見を持つ女のロマンスとしても楽しかったです。正直あの告白シーンは笑ったw

☆あらすじ☆
領地を荒らすグリフォンの群れを退治してほしいという、メリーボーン卿の要請に応えてやってきたのは五人の騎手。騎手といえば誇り高く高潔な人物……のはずだが、メリーボーン荘園の事務官の次女アリザと、龍の騎手アラステア・デアレッドの出会いは最悪だった。アリザが仲良くしている庭妖精たちと争いになってしまったのだ。なんて高慢ちきでいやな奴! だが、グリフォンは大事な妹を殺した憎い敵。アリザは騎手たちのグリフォン退治に案内役として同行するが……。『高慢と偏見』×ドラゴンの世界を描いたロマンティック・ファンタジー。

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の舞台となるのは、人間と、人間の味方である種族テカリ、人間の敵である種族シャナイがいる世界。
シャナイの一種であるグリフォンに荒らされた荘園に住む主人公アリザは、領主のSOSに応えて訪れた龍の騎手アラステア・デアレッドと出会う。
ホブゴブリンの友達を蹴飛ばし、いちいち癇に障る言葉を使う高慢なデアレッドに反感を抱くアリザ。
しかし様々な出来事を通し、アリザは自分の抱えていた偏見を知り、デアレッドの人間性や彼の抱える事情を理解していくことになるのです。

 

というわけで、誤解されやすい高慢男と、思い込みに振り回されやすい女のロマンスを中心に描かれる本作。
誤解されやすい、というか、前半のデアレッドの態度はお世辞にも好感が持てるものとは言えないので(アリザのことを意識してるのは伝わってくるからニヤニヤするけれど)、アリザの偏見が積み重なるのは仕方ない気がするんですよねぇ。

 

もちろん、断片的な情報だけで相手の人間性を決めつけるのは良くないこと。
この作品でもウィドリックカードレッドの例を通して、偏見の愚かしさや危うさが丁寧に描かれていきます。
人間は誰だって複雑で多面的な存在なのだから、一部を知ったくらいじゃ本質なんてわからない。そう訴えかけられるようでした。私も気をつけよう。

 

とはいえ。

「君は俺にはふさわしくない」って言いながらプロポーズしてくる野郎に「何言ってるんだ?告白なの?マジかよ引くわ」って態度になるのも当然では・・・?という気持ちも否定できない。
観客である私からすると、一目惚れして必死に心に抗ってきた末に「降伏しよう」と言うしかなかったデアレッドにふぁ〜〜〜ヾ(:3ノシヾ)ノシ ってなるんだけど、アリザからすると腹立たしいだけですもんね。ここは偏見じゃないと思うし(だって直接かつハッキリ言われてるもの)

 

ただ、これをきっかけにアリザが真実を知っていき、自分の中のデアレッドへの気持ちがどんどん揺らいでいく―― という展開は、まさに王道ロマンス!という趣で非常に美味しかったです。

これって原典たる「高慢と偏見」も似たような構図なのかなぁ。
少女小説的で面白いと聞いているのでいずれ読みたいものです。

 

 

ロマンチックなストーリーの土台となっているファンタジーな世界観もとても良かったです。
特に最後のリンドワーム戦。
龍に乗って空を翔る騎手たちを中心とするドラゴンファンタジーに相応しい、躍動感と緊迫感のあるクライマックスには興奮した・・・!

 

恋する乙女は強い!って言いたくなるアリザの奮闘も最高。
そもそも、序盤のグリフォン殺しのときもそうだったけど、アリザが土壇場に発揮する度胸が半端なくてしびれるんですよね。
突然襲ってきたモンスターに怯えて縮こまるのではなく、妹の仇!ぶっころしてやる!!って全力で立ち向かって勝ってしまうところがめちゃくちゃカッコ良い。ガッツにあふれすぎでしょ。

それに対する騎手たちの反応もすごいのだけど。
「よく殺せたな!おめでとう!」っていうのが、なんというか狩猟民族のマインドっぽいというか、海外小説らしいなって思うんです。
戦いと無縁に生きてきた女性が狂乱状態で怪物を殺したら、日本ならまず精神状態を心配しそう・・・・・・
デアレッドがアリザに言った「今日のことは記憶に残るぞ」「大事にしろ」という台詞、気に入ってます。
ショックを受けてるから忘れなさい、みたいな気遣いじゃなくて、誇れ!っていうの、なんかいいなって。生命力の強さを感じて眩しい。

 

ロマンス色の強いファンタジーとしてとても楽しい作品でした。
2018年秋に同じ世界感の長編が出版されるそうなので(続編じゃないの?)、そちらも翻訳されることを願っています。

龍の騎手 (創元推理文庫)
エル・キャサリン・ホワイト
東京創元社

 

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