恋する王子と受難の姫君(恋する王子シリーズ)全8巻/小椋春歌


恋する王子と受難の姫君 1 (ビーズログ文庫)
恋する王子と受難の姫君 1 (ビーズログ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★★
2011年6月刊 〜 2013年7月刊。
久しぶりに再読したら面白すぎて全8巻を一気読みしていました。やっぱり大好き!めっちゃ笑った!

この物語の主役である「恋する王子」アレクはストーカーです。変態です。完全にアウトな男です。
執念深く、自制心は勉強中。気をつけないとすぐに恋心が暴走してしまいます。
この作品は、そんなアレクが最愛の初恋相手モニカめがけて猪突猛進を繰り返し、積み重ねた失敗を乗り越えて成長していくハイテンション・ラブコメ・ファンタジーです。

コメディとして笑えるけれど、設定は意外とシリアス。
そしてかなり人を選ぶタイプの物語です。なにしろ「ストーカーと被害者」の恋のお話なので。
二人の恋が抱える問題は数巻かけて丁寧に掘り下げていくけれど、この手の話を生理的に受け付けない人もいるでしょう。特に1巻がね・・・・・・

ただ、2巻以降で始まる過去の精算こそがこのシリーズの面白さだと私は思っています。
恋に浮かれ、恋に突き落とされ、一喜一憂の振れ幅が半端ない変態アレク。
彼の想いは笑えないほど業が深いのだけど、それでも笑えてしまう中毒性を秘めています。
まぁ、この作品は肩の力を抜いて読むのが一番です。深く考えすぎてはいけない。これはコメディだ!

☆あらすじ☆
この王子、変態ストーカー!? あべこべファンタジックラブストーリー開幕!!
若き兵士・ミラは、とにかく悩んでいた。なぜなら、お忍びで訪問していた大国の王子・アレクシスに、異常に気に入られてしまったから! 始めは気づかないフリをしていたものの、王子の行動はエスカレート!! 「一緒にお風呂に入りましょう」ってマジ!? さらにはミラさえも知らなかった過去の秘密まで暴き出し……!?

以下、全巻を通しての感想です。
若干、未読者向けのプレゼンを意識していますが、特に1巻の内容については踏み込んだネタバレがあります。ご注意ください。

 

まず最初にこの物語について簡単に説明すると(1巻の完全なネタバレです)、

権力を持ったワガママ王子アレクは初恋の少女モニカへの構い方を全力で間違えた結果、彼女にこれ以上ないほど嫌い抜かれる。しかし、めげずにストーカー行為を繰り返したことでモニカを精神的に追い詰めたアレクは、最終的に無理やりコトに及ぼうとしてしまう。
これに激怒した父親たちはモニカを死んだことにして国外逃亡させるも、諦めきれなかったアレクは4年かけて彼女を発見。
しかしモニカは記憶を失っていたため(ついでに魔法で性転換もしていた)、アレクは彼女を元に戻そうとする。
そのうちにモニカは自分に親身に接してくれるアレクに記憶がない状態で惹かれ、身体と記憶が元に戻った後もアレクの成長を認め、過去を許し、彼を受け入れる。

というストーリーです。
引きました?引きますよね?わかりますよ、私も最初読んだ時はちょっと引きました。
この時点で「絶対に無理!」という未読者の方はこのページをそっと閉じてタイトルも忘れましょう。たぶん地雷です。
いやいやこの程度ならまだイケるよ!というヘキがアレな方は続きをどうぞ~

 

そういうわけで人を選ぶにもほどがあるドン引き設定で始まる本作ですが、この作品の主題は変態ストーカー王子アレクの成長と反省にあると私は思っています。
決してストーカーが簡単に良い目にあってハッピー☆という倫理観ゼロなお話ではありません(普通より欠けてるのは認める)
ただまぁ1巻だけだとそのへんが分かりにくいし、そもそもモニカがアレクを受け入れたのは様々な偶然と幸運によるものなので、これをどのように受け止めるかは各人次第なのですが。

 

さて、上述のように悲惨な過去があっても、最終的にアレクの愛を受け入れたモニカ。
それは、記憶もなく孤独で中途半端な存在である「ミラ」をアレクが大事にしてくれたのが嬉しかったからだし、男目線からアレクに抱いた憧れが恋心へと変わり(これはBLか?)そのままモニカが引き継いだからともいえるし、性別を変え記憶もなくして隠れていたのにモニカを見つけ出したアレクの執念に降参したからともいえるでしょう。
ぶっちゃけ、1巻だけをみるとアレクの過剰に重い愛情に押し流された感じも否めません。

ただ、アレクの愛を受け入れると決めてからのモニカはとても強い。
記憶と一緒に嫌悪感が戻ってもなお「4年間のアレクの成長」を認めてあげたのは彼女の優しさと強さの表れだと思います。
アレクが執着するのもわかるほど、モニカは優しさと強さを兼ね備えた素敵な少女なのです。

そして一度アレクを受け入れたモニカは、彼の過剰な愛に耐えられるほどの器の大きさをフルに発揮していきます。
モニカがアレクの鬱陶しい愛情表現を適度に跳ね返したり流したり受け入れたりすることで、二人の会話や関係に心地良いテンポを生まれ、これがまた読んでいてすごく楽しいのです。

 

とはいえ、あくまで二人の始まりは「ストーカーと被害者」。
この物語は決してその点を蔑ろにしません。
たとえ本人たちが過去を乗り越えて新たな関係を築くと決めても、散々心配をかけられた周囲がすんなりと納得するはずがないのです。
むしろ「騙されてないか?」「二人が結ばれて大丈夫か?」「その場の勢いによる気の迷いではないか?」となるのは当然でしょう。
私だって友だちがこういう男を選んだら全力で止めますし。目を覚ませって。

さらにアレクは大国の王太子。そんな彼にとって「傾城」となりうるモニカの存在はとても難しい問題になるわけです。
過去を水に流してハッピーエンドを迎えた1巻とは裏腹に、2巻以降では「過去の精算」をメインに話が進んでいくことになります。

 

この2巻以降、恋人となった二人には様々な試練やトラブルが待ち構えます。何度も何度も引き離されます。
その中で、かつて失敗を積み重ねたアレクは繰り返し自制心を試され、アレクを受け入れたモニカもまた、その覚悟を問われることになるのです。

二人が一緒にいるために、何が必要なのか、何を示さなければならないのか。
その答えは「ひたすら努力!」

努力によって自分を変えモニカを振り向かせたアレクは、更なる努力によって自分の恋心を制御しなければいけません。
アレクに恋をしたモニカは、こんなにも不安定な彼の傍にいる覚悟を示すために、やっぱり努力をしなければいけません。

 

つまりこれは、努力と忍耐と根性と愛と冒険の物語なわけです。
そして同時に、アレクの成長の物語でもあるのです。

 

アレクが自分に向ける愛情に絶対の信頼があるモニカに対し、過去の負い目からあまり自分に自信がないアレク。
なんといっても「自己肯定能力の低下」で倒れるほど自分に自信がない人なので・・・・・・

押してダメならもっと押せがモットーだし、超絶ポジティブクソ野郎だから簡単にはヘコタレないけれど、それと「自分は何があっても絶対にモニカに愛される」という自信があるかどうかは話が別なんですよね。そのねじれている性根がアレクの面白さなのだけど。

猪突猛進なくせにイマイチ自分に自信がなく、過去の失敗を反省しているけれど今もやっぱり暴走しがち。
そんな自分が嫌で嫌で、モニカを少しも傷つけたくない、嫌われたくないと心から思っているのに、恋する気持ちが制御できない。
このアレクの葛藤はとても読み応えがあります。

「初めて会ったときからあなたが好きでした。嫌われて追いかけて、でも嫌われて、とことんまで嫌われて・・・・・・! もうやめよう、他の人を好きになろうと何回努力したか分からない。もう限界だ、こんなにつらいのは耐えられないと思っても嫌いになれない!あなたの視線一つ仕草一つで舞い上がったり叩き落とされたり・・・・・・!自分が保てなくなるほど好きなんです・・・・・・!あなたを愛しています――!」(「恋する王子と勝利の演者」)

台詞だけ抜き取ると分かりにくいかもしれないけれど、このシーンはときめくというより背筋がゾワッとしました。それ以上にアレクの慟哭に引き込まれる。
基本的に鬱陶しい感じでコミカルに表現されるアレクの愛だけど、このシーンのように、時折みせる愛情の歪みに私は惹かれます(ヤンデレ萌並感)

そして、この点こそが危惧され続ける彼の不安定さであり、モニカが問われ続ける覚悟の意味。
アレクを不安定にさせるのも手網を取れるのもモニカだけであり、それが出来ないようならモニカは身を引くしかないのですから。

 

モニカへの愛が強すぎるために度々不安定になるアレク。
自制心を試され続ける彼には、シリーズ終盤で最大の試練が待っているのだけど、これを乗り越えた瞬間の切ない感動がとても好きです。「会いたいよ」の哀しみが・・・!
あのシーンはアレクがモニカへの依存から卒業した瞬間だと思うんです。彼が心からモニカとの別れを受け入れたのはあれが初めてのはずなので。
ただ、その後で再入学した疑いがなきにしもあらず(笑)

 

様々な試練を乗り越えるなかで、二人が見つけた恋の意味もとても素敵でした。
モニカから色々なものを奪ってきた過去を償い、乗り越え、奪うのではなく与えることこそが喜びだと知ったアレク。
アレクがいたから、より広い世界を知り、たくさんの出会いを得ることができた。だから恋をしてよかったと笑うモニカ。

紆余曲折を経ての完全無欠ハッピーエンドはとても心が満たされます。
ラスボスとの決着とか、まさに「モニカが望むなら与えよ!」って感じで私は好き。
これ、何でも貢げばいいって話じゃないんです。モニカの心に寄り添う、献身的で優しい愛の証だと思うのです。

 

ちなみに、実は1巻から伏線だらけで、それが終盤で怒涛の回収展開を迎えるというファンタジー的な構成も見どころだったりします。
コメディの勢いが強く「こまけぇことは気にすんな!」って雰囲気はあるし、実際あまり気にしなくていいのだけど、最後まで読むと「あれはそういう事だったのか」と納得できるポイントが多々あって面白いんですよ。
全8巻に無駄な巻はひとつもないし、無駄な登場人物だって1人もいません。
嫌いなキャラもゼロです。みんな大好き!

 

あー、再読楽しかった!
色々書いたけれど、この作品が好きなのはとにかく笑える!ってことに尽きます。結局のところ、私自身と作風の相性が抜群に良かったのが大きい。
何度読んでも少女小説の楽しさを教えてくれるシリーズです。これからも何度だって読み返していくと思います。

 

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