錆喰いビスコ/瘤久保慎司


錆喰いビスコ (電撃文庫)
錆喰いビスコ (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2018年3月刊。
第24回電撃小説大賞「銀賞」受賞作。
面白かったー!!
錆に覆われて荒廃した未来の日本を舞台に、「キノコ守り」の少年と、彼の相棒となった少年の冒険を描くファンタジーです。
廃墟のような日本の姿にゾクゾク(ワクワク)する一方、もはや万能を疑う多彩なキノコや、超進化をとげた巨大生物が入り乱れるパワフルな世界観が最高。
そして何より相棒の絆に胸が熱くなる物語でした。この作品の真っ直ぐに力強い「愛」の描き方、ものすごく好きです。
「錆ついた世界であっても、人間の心は未だ錆びついていない」というのがね、こうね、痺れるよね・・・・・・
目が滑る部分も結構あって、そのへんは荒削りに感じるのだけど、これだけ面白ければ文句ありません。この方向でどんどん伸びてほしい期待の新作です。

☆あらすじ☆
すべてを錆つかせ、人類を死の脅威に陥れる《錆び風》の中を駆け抜ける、疾風無頼の「キノコ守り」赤星ビスコ。彼は、師匠を救うための霊薬キノコ《錆喰い》を求め旅をしていた。美貌の少年医師・ミロを相棒に、波乱の冒険へ飛び出すビスコ。
行く手に広がる埼玉鉄砂漠、文明を滅ぼした防衛兵器の遺構にできた街、大蛸の巣くう地下鉄の廃線――。
過酷な道中で次々に迫る脅威を、ミロの知恵の閃きと、ビスコ必中のキノコ矢が貫く! しかし、その先には邪悪な県知事の奸計が――。愛する人を救うため、強弓が撃ち抜く冒険ファンタジー!

以下、ネタバレありの感想です。

 

かつての日本科学の結晶である「テツジン」という防衛兵器の大規模爆発により発生した『錆び風』。
人さえも錆びつかせる「錆」の脅威にさらされ続ける日本で、「キノコ守り」の少年・赤星ビスコは錆に蝕まれ死の淵にある師匠・ジャビを救うために霊薬「錆喰い」を求めて旅をしていた。
その道中で少年医師・ミロと出会ったビスコは、彼とコンビを組んで「錆喰い」探しの旅を続けることになるのです。

 

舞台となるのは、文明が荒廃した日本。
ビスコとミロは関東圏から東北のほうへ北上していくのだけど、道中で「かつての日本」を感じるたびに言い知れぬワクワクを感じてしまいます。なんだろうなぁ。廃墟って何かしら惹かれるものがあるのだけど、それに通じるものがある・・・・・・

 

とはいえ、行き詰まった世界にあっても息苦しさを感じないのは、主人公たちの生命力がとても強い輝きを放っているからなのでしょう。

永い時をまたぎ 《錆び風》が吹き続けても
人間の心は未だ 錆びついてはいない

この言葉や、キノコ守りの詩で語れるように「人の心は錆びついていない」ということが分かる瞬間の高揚感たるや。

どれだけ身体を錆に覆われても、愛する息子、愛する弟を守るために鬼神の如く戦い続けたジャビやパウー。
全身を錆びつかせ、身体が崩れてもなお、歩みを止めなかったビスコ。
錆に苦しむ愛する人を救うために、果敢に錆と戦い抜いたミロ。

主要人物たちの不屈の魂が本当に格好いいんです。
どんな陰謀にも脅威にも、決して止まることのない彼らの歩みに憧れを抱かずにいられません。

 

そして、そんな彼らの心を燃やすのは深い深い『愛』。
家族愛とか異性愛とか友情とか、そんな枠組みを超えた、本質的で強いパワーを感じる『愛』なんです。
個人的には、ビスコが不安に眠るミロを置いていったシーンや、ミロがビスコを矢で撃ち抜いたシーンが特に印象的でした。彼らの「愛」は究極的にはとても静かなもので、だからこそ真っ直ぐな力強さを感じるのかもしれません。
この「愛」の描き方、好きすぎて本当にしんどい・・・!

 

また、ビスコとミロが「相棒」として成長する物語としても読み応え抜群でした。
外の世界を知らなかったミロがビスコと出会い、彼の強さに憧れ、彼の知る世界の広さに感動し、幾多の苦難を共に乗り越えて「ビスコの相棒」として逞しく成長していく。
クライマックスでのビスコとミロの絆のエモさがすごい・・・・・・
少年たちの友情をここまで熱く情感豊かに描けることに、作者への信頼が高まる一方です。展開のひとつひとつに「わかってるー!」って叫びたくなるw

 

そういえば、ビスコってあの「ビスコ」か・・・!ミロもあの「ミロ」か・・・!って最初は笑ってしまったのだけど(申し訳ない)、「強い子になりますように」という願いが込められた名前どおりに、心も身体も健やかに強い二人を知ると、もはや名前までも格好良く感じます。ほんとにいい名前。

 

「人」のことばかり書いてしまったけど、この世界観自体もすごく魅力的だったので、どんどん掘り下げてほしいところ。
錆に対抗するために機械ではなく兵器としての生物が発達したっていうのが楽しすぎてw
特に言葉よりも雄弁な(?)佇まいで相棒たちの旅を支えるアクタガワが大好きです。ハサミを溶かされたとき大丈夫か不安だったのだけど再生可能なんですね。生き物って強いなぁ。

 

それと、この作品は作風とイラストがガチッと噛み合っているのも最高でした。
題字、イラスト、世界観イラストが分担してあるからかな。本編との相乗効果が素晴らしかったです。

 

高揚感が半端ないファンタジーでした。
2巻刊行も決定しているらしいので、8月を楽しみに待ちます(*´∀`)

 

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