Hello,Hello and Hello/葉月文


Hello,Hello and Hello (電撃文庫)
Hello,Hello and Hello (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2018年3月刊。
第24回電撃小説大賞「金賞」受賞作。
「彼」が失った二百十四回に及ぶ1週間の恋と、「彼女」が手にした4年に及ぶたった一度の恋。
何度も出会いを繰り返す二人の日々と、その意味を描き出す青春小説です。
出会いと別れの季節である「春」のイメージにぴったりの作品だと思います。
儚く散るから桜は美しいように、今この瞬間だけ繋がる二人の想いの鮮烈さに胸が苦しくなりました。
ただ、結末がちょっと・・・・・・なんというか・・・・・・消化できない・・・・・・

☆あらすじ☆
「ねえ、由くん。わたしはあなたが――」
初めて聞いたその声に足を止める。学校からの帰り道。中学のグラウンドや、駅前の本屋。それから白い猫が眠る空き地の中で、なぜだか僕のことを知っている不思議な少女・椎名由希は、いつもそんな風に声をかけてきた。笑って、泣いて、怒って、手を繋いで。僕たちは何度も、消えていく思い出を、どこにも存在しない約束を重ねていく。だから、僕は何も知らなかったんだ。由希が浮かべた笑顔の価値も、零した涙の意味も。たくさんの「初めまして」に込められた、たった一つの想いすら。これは残酷なまでに切なく、心を捉えて離さない、出会いと別れの物語。

以下、ネタバレありの感想です。

 

これは僕が失った、二百十四回にも及ぶ一週間の恋の話だ。
そして――
これはわたしが手にした、四年に及ぶたった一度きりの恋の話。

この冒頭の文章がまさに本作を端的に表現していますよね。
最初はループものかと予想していたのだけど、これはそこらのループものよりも残酷な設定かもしれません。いやマジで。

 

幼い頃の交通事故をきっかけに、1週間おきに世界から存在を消される少女・椎名由希
何度も何度も由希と出会い、彼女に惹かれ、その度に彼女を忘れてしまう少年・瀬川春由

 

1週間の出会いを繰り返すってどんな気持ちなんでしょう。
自分を忘れてしまった人に、自分から声をかけ続ける。それって何度も繰り返すことで慣れるようなものなのでしょうか。無理だよね。
最初は微笑んでいる由希が最後はいつも「うそつき」と零していることを考えても、彼女の心の傷の深さに胸が痛くなります。もはや自傷行為にも見えるし(目的があるからできたのだろうけど)、私だったら気が狂う・・・・・・

 

由希の負わされた運命は本当に残酷。
1週間で世界から痕跡をリセットされるとか、むしろ7歳から今に至るまでどうやって生きてきたのでしょうか。
ホテルを渡り歩いていたようだけど、お金に困ることはなかったのかな。最初の出会いのときのように万引きをして衣食を調達していたのかな。
ぶっちゃけ幽霊みたいな存在なのに「生きている」という一点において由希の身の上の悲劇性を強く感じます。
この悲劇性が本作最大の特色であり、個人的に乗り越えて欲しいポイントでもありました。

 

由希が何度も春由に声をかけ続けたのは何故か。
彼女が春由に恋をしてほしかったのは何故か。

その答えはあまりにも切実。世界から居場所を奪われてしまった少女の、精一杯の意趣返しのようにも見えました。
春由との日々自体は幸せなものだったとしても、由希の願いはあまりにも可哀想で・・・・・・

 

だから、私はこの結末に不満があるんですよね。

 

ラストシーンの「由希の生きた意味」と「ふたりの恋の意味」を懸命に交わし合うシーンは素敵でした。めちゃくちゃ胸が熱くなったし感動しました。
でも結局は春由の中から約束は消えてるし(彼の中に残ったものはあるにせよ)、ラストシーンの解釈をどうすればいいのか迷ってしまいます。

 

そもそも、由希は生き続けることを選択したはずなのに、なんで幽霊恋愛モノの成仏エンドみたいになってるの・・・・・・
いや、生きてるよね? どこに行ったの? 215回目のHelloはないの?
孤独な1週間を繰り返す由希の生活については現状維持なの?

 

この結末、私は彼女の今後を想像して暗鬱とした気分になるのですが(;▽;)
由希の心が救われたのは間違いないし、「彼らの恋は確かに何かを残せたのだ」という儚い余韻を楽しめればよかったのだけど。
こじらせたハピエン厨だからかなぁ。根本的な問題を一切解決することなく投げられた気分になっています。
うーん、「待ってる」と由希は言ったのだから、いつかまたどこかで出会うのかもしれませんが(でもそれまで由希は1人なのか・・・)。

 

途中まではすごく好みな物語だっただけに、結末にモヤっとしたのは残念でした。
心理描写は本当に好きです。次は不思議要素なしの青春モノを書いてほしいかも。

 

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