マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年/辻村七子


マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年 (集英社オレンジ文庫)
マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年 (集英社オレンジ文庫)

評価:★★★★★
2018年2月刊。
デビュー作「螺旋時空のラビリンス」に一目惚れして以来、ずっと待ち望んでいた辻村七子先生の最新SF小説!
最っっっ高に面白かったです・・・!
読み終わった瞬間の昂ぶりを上手く表現できる自信がありません。情動領域からの言語出力はなんて難しいのでしょうか。

ワケありの野良アンドロイドと、ワケありの天才エンジニア。
立場の違いゆえに何度も衝突を繰り返す二人の共同生活を通して、自分が自分であるために必要なことはなんだろう?と考えさせられました。
丁寧に造られたSF的世界観を軽妙な筆致で描きあげているところも流石。読みやすさ抜群です。辻村作品への安心と信頼が高まる!

色々書いてるけれど、要するに人形博士と機械少年の関係がエモい!ってことを伝えたいだけなので、どうぞよろしくお願いします。

☆あらすじ☆
ノースポール合衆国自治州『キヴィタス』は、1億6千万の人口を収容する人工都市だ。アンドロイド管理局に勤める若きエリート、エルガー・オルトンは、帰り道で登録情報のない“野良アンドロイド”の少年を拾う。ワンと名乗った少年型アンドロイドとエルは不思議な共同生活を始めるが、ワンは記憶を失っていた。彼の過去を探るうち、エルは都市の闇に触れてしまい?

以下、ネタバレありの感想です。

 

大規模な気候変動により世界が変わった遠い未来において、大災害の影響を逃れた人工都市・キヴィタス
アンドロイド管理局に調律師として所属する若き天才博士エルガー・オルトンは、ある日、「野良」のアンドロイド・ワンと出会う。
秘密を抱える様子のワンを保護したエルは彼を放っておくことができず、二人(と一匹)の共同生活が始まるのです。

 

情動領域と呼ばれる機械仕掛けの心を持ち、「アンドロイド」でありながら誰よりも豊かに感情を表すワン。
そんな彼や、失われた記憶にまつわる騒動に関わるうちに、狭い自分の世界が開かれていくエル。

 

この二人の関係が、ほんとに、ほんっとうに、好きすぎました・・・・・・

 

アンドロイドであるワンに触発されて、エルの拙いコミュニケーション能力が磨かれていくところがまず萌えます。
最初はどちらが機械なの?ってくらい雰囲気が逆なんですよね(それだけにエルの成長が伝わる)
海外ドラマのハンサムみたいなワンの軽口は楽しいし、真面目にズレてるエルの返しには笑いながら脱力してしまいましたw

 

会話のテンポを変えないまま、込められた感情だけは色鮮やかに変化していくところも素敵。
特にワンは「作中で最も人間らしいのでは?」と首をかしげるほど、様々な感情が込められた言葉を豊かに紡いでいくんです。
耳の痛い皮肉もたくさん言うけれど、エルに情緒をレクチャーする面倒見のよさも見せるし、かと思えば色男顔負けの甘い誘導尋問でエルから言葉を引きずり出すし・・・・・・なんというコミュニケーション強者!(震)

 

ワンのキャラクターに深みと魅力を感じたのは、彼の言葉の端々にアンドロイドであることへの自負とコンプレックスが見え隠れしているからかもしれません。
「ワン」という名前、たぶん彼が自分で付けたんですよね?
その名を聞いて『君しかいない』という感じがすると言ったエルの感覚って、本当はとても鋭くワンの内心を暴いていたのではないでしょうか。

この点で印象的だったのは高級レストランでの加点式問答。
エルのプロポーズに対して「お前の求めるものは他のアンドロイドでも事足りる」といった趣旨のことをワンは何度も返していて。
そうして最後に告げたのが「結局お前にとって俺は、所有して管理できるアンドロイドで、それ以上でもそれ以下でもないってことだ。」という台詞。
ここ、そんな存在にだけはなりたくないっていうワンの哀しい失望を感じられて辛かった・・・・・・

所有者から「モノ」として乱暴に扱われ、いくらでも換えのきく存在であるアンドロイド。
そんな自分をよく理解している一方で、「誰かにとってかけがえのない存在」「ひとりだけ特別」になることに対して、憧れのような、期待のような何かがあったんじゃないかなぁ。無意識かもしれないけれど、自ら「ワン」と名乗るほどに。

 

また、エルが抱えるものも、ワンが抱えるものと根本的な部分は共通してると思うんです。
「数多くある類似したもの」の集団に属していることとかね。
そこから自己を確立していく、というところまで含めて似ている二人なのかもしれない。

 

ワンは自分で築いた「自分」をエルが受け入れるか何度も試し、試されるなかでエルはワンを通して「自分」を見つけていく。
この繋がりがエルの「心」を豊かに育てていくのだと思うと、ちょっと、ねぇ?尊すぎでは??
特別じゃない大量生産品であることがアイデンティティでありコンプレックスでもあった二人が、互いを通して「特別な相手」と「特別な自分」になっていくんですよ????
はぁはぁ・・・・・・しんどい・・・・・・(´;ω;`)

 

エルの寿命が長くないことも、アンドロイドの耐用年数が人間ほどにはないことにも触れられているから、共に歩むと決めた二人にどこまでの時間が残されているのかは分からないけれど。
その儚さもまた美しく感じてしまいます。

 

人間とアンドロイドという立ち位置の違いゆえに、不安定でヒリヒリとした緊張感に何度も包まれるエルとワンの関係。
衝突を繰り返しながら相互理解を深めていき、同じ景色を見える場所に立つことができた二人の姿に感慨深くなりました。
最後までどうなるかハラハラしたけれど、クライマックスを迎えたときの解放感たるや・・・!
本当に素晴らしいSFロマンスでした。

 

「螺旋時空のラビリンス」といい、本作といい、辻村さんのSFは世界観がきちんと構築されている割に読みやすいところも好きです。
ぜひまたSF小説を書いてほしい。
というか本作をシリーズ化してくれてもいいんですよ!
この世界観は堀り甲斐がありそうですしね。

 

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「マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年/辻村七子」への4件のフィードバック

  1. 以前の記事にコメント失礼します!
    別記事にてこのお話と86が気になってるとコメントさせて頂いた者です(その節は温かなご返信有難うございました!)
    読んだ結果、こちら大変良かったです…!ワンとエルのやり取り終始ツボでしたし、ニヤニヤしたり切なくなったり、最後は幸せな読了感でした。レストランの所、私も印象的でした!初めて読んだ作家さんなんですが、とても素敵ですね。
    また、86も良かったです!こちらが積読期間が長かったんですが、読み始めたら一気に引き込まれました。
    心理にズブズブくるお話が好きなので、両者とてもツボでした!
    改めまして、素敵な本との出会いをくださり有難うございました。他にも気になる作品あるので、参考にしつつ読書を楽しみたいと思います!

    1. くじらんさん、コメントありがとうございます。

      >別記事にてこのお話と86が気になってるとコメントさせて頂いた者です(その節は温かなご返信有難うございました!)

      こちらこそです!その節は、コメントと温かい応援をありがとうございました。

      >読んだ結果、こちら大変良かったです…!ワンとエルのやり取り終始ツボでしたし、ニヤニヤしたり切なくなったり、最後は幸せな読了感でした。レストランの所、私も印象的でした!初めて読んだ作家さんなんですが、とても素敵ですね。

      「マグナ・キヴィタス」をお読みになられたのですね。この作品、本当に良いですよね。
      エルとワンのやり取りは私も本当に好きで、いつまでも読んでいられる・・・むしろ読んでいたい・・・って思うまであります(笑)

      辻村七子さんの作品は他にも「宝石商リチャード氏の謎鑑定」シリーズが続いていて、こちらもとても素晴らしいです。
      ですが! マグナがお好きであれば、ぜひデビュー作の「螺旋時空のラビリンス」をオススメしたいです。
      時間SFなのですが、マグナと雰囲気がよく似ていて辻村さんの原点を感じる作品なので・・・!

      >また、86も良かったです!こちらが積読期間が長かったんですが、読み始めたら一気に引き込まれました。

      「86」も素晴らしい作品ですよね!
      お恥ずかしい話ですが、私は1巻しか読んでいなくて2巻以降積みっぱなしなのです・・・・・・1巻で完全に満足してしまって・・・・・・
      でも、くじらんさんのコメントを見て「86」への気持ちが盛り上がってきたので2巻以降も近日中に読みたいと思いました!

      >改めまして、素敵な本との出会いをくださり有難うございました。他にも気になる作品あるので、参考にしつつ読書を楽しみたいと思います!

      こちらこそ、嬉しいコメントを本当にありがとうございました。
      ぜひぜひ、一緒に色んな読書を楽しみましょう!

  2. コメントわかりづらくすみませんでした(><)はい、マグナ・キヴィタスを読みました!
    螺旋時空も気になってたので、今度書店で探したいと思います!
    86は続編もあるんですよね。店員さんが教えてくれたんですが、私も1巻しか読んでなくて…死が深く関わる作品の続編は1巻が面白い分追うのは気力がいりますよね。
    マグナがもし続編出たら全力で読みに行くかもです。
    みかこ様の感想読むの好きなので、他の作品の感想も楽しみに拝読してます^ ^ はい、今後も読書たのしんでいきたいと思います!有難うございました!

    1. >コメントわかりづらくすみませんでした(><)はい、マグナ・キヴィタスを読みました!

      いえいえ、分かりづらいなんてことは全くないですよ!

      >螺旋時空も気になってたので、今度書店で探したいと思います!

      ぜひぜひ!
      発売から時間が経っているので、もしかしたら入手難易度が高いかもしれません。無事に見つかるよう、お祈りしていますね!

      >86は続編もあるんですよね。店員さんが教えてくれたんですが、私も1巻しか読んでなくて…死が深く関わる作品の続編は1巻が面白い分追うのは気力がいりますよね。

      わかりますー!!
      私が続刊になかなか手を付けられない理由も同じで・・・・・・重い設定だから読んだら体力を奪われそうですもんね(´;ω;`)

      >マグナがもし続編出たら全力で読みに行くかもです。

      続編、本当に出てほしいです・・・!私も全力で読みに行きます!

      >みかこ様の感想読むの好きなので、他の作品の感想も楽しみに拝読してます^ ^
      はい、今後も読書たのしんでいきたいと思います!有難うございました!

      本当に本当に嬉しいです。ありがとうございます。励みになります(;_;)
      今後ともよろしくお願いします!

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