月とライカと吸血姫3/牧野圭祐


月とライカと吸血姫3 (ガガガ文庫)
月とライカと吸血姫3 (ガガガ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2018年2月刊。
宇宙開発競争の最前線を舞台にした、人間と吸血鬼のボーイ・ミーツ・ガールから始まる青春物語第3弾。
1、2巻では敵国として描かれてきた連合王国に舞台を移し、新たな場所、新たな登場人物をメインにしたストーリーとなっています。
史実をモデルとしているからこその奥行きのある読み応えは変わらず。人種差別問題の過酷さは前巻以上に強く感じました。
その逆境の中で生まれゆく主人公とヒロインの絆は尊く、今回もとても面白かったです。

☆あらすじ☆
宙と青春の物語、連合王国編始動!
――これは人類史に残る偉大なる一歩。連合王国に、その礎を築いた若き二人がいた。
人類史上初をかけた有人宇宙飛行計画で、共和国に惨敗した連合王国。劣勢に立たされた王国議会は、途方もない計画を宣言する。
「我々は、人類を月面へ送り込み、帰還させることを約束する!」
王国南部の宇宙開発都市<ライカ・クレセント>の研究所では、同時にとあるプロジェクトが進んでいた。アーナック・ワン――それは『民族融和と科学技術大国推進』を打ち出し、汚名を払拭するための広報プロジェクトだった。
新人技術者のバート・ファイフィールドは、連合王国初の宇宙飛行士アーロンの弟であることを理由に、その人間代表に選ばれてしまう。そして、吸血鬼の末裔である新血種族代表は、アーロンの飛行を成功に導いた才媛カイエ・スカーレット。
研究所での仕事と、宣伝活動の二足の草鞋。不慣れな日々の中、バートはカイエの秘めたる想いを知っていく。
「――私は月なんて、大嫌い」
華々しい宇宙飛行の裏側には、語られることのない数多の人々の情熱が確かに存在した。宇宙を夢見る技術者の青年と新血種族の才媛が紡ぐ、宙と青春の物語がここに!

以下、ネタバレありの感想です。

 

2巻までとは変わり、今回の舞台は共和国のライバルである連合王国。
共和国の宇宙飛行成功を受けて焦りが募る連合王国のANSA。そこで新人職員のバートは新血種族の女性・カイエと出会う。
カイエが室長をつとめ、「コンピューター」を扱うDルームに配属されたバート。
完全にアウェーなその場所で、バートは差別を受ける新血種族の苦しみや彼女たちの複雑な内心を知り、彼自身の内面も少しずつ変わっていき──

 

というわけで新章・連合王国編がスタートです。

 

今回はANSA全体からみて異物である「吸血鬼の巣」と、その「吸血鬼の巣」に放り込まれた異物の「人間バート」という二重構造の中から種族間の摩擦を描いていくところが特に面白かったです。
下地となっている人種差別問題の歴史も強く感じ、読み応えあり。
全体的に暗鬱な雰囲気ではあるけれど、「吸血鬼」というファンタジー要素を上手く取り入れてエンタメ小説として読みやすく仕上げてあると思います。前巻までと同じく、このへんの塩梅がとても好みです。

 

種族間の摩擦を最も強く受ける場所に立ちながら、種族の壁を超えて相互理解を深めていくバートとカイエ。
その姿は彼らが憧れを抱くイリナとレフが通った道によく似ていて、イリナとレフが道を切り開いたことでバートとカイエの物語へと繋がっていくのだと思うと感慨深くなります。
舞台と人が変わっても、ボーイ・ミーツ・ガールの物語としては秀逸なのは変わらず。
少しずつ相手を知り、その過程で自分のことも知っていく二人。
宇宙に対するそれぞれの想いが複雑に交錯し、困難を前に手を取り合う関係を築きあげた二人の姿には胸が熱くなりました。

 

ただ、最後の展開は少し既視感の強さが気になったかも。
被差別種族である吸血鬼のヒロインが正当に評価されないことに対し、憤った人間の主人公が勇気を出して行動を起こし世間に訴える。
これ自体はカタルシスがあって好きな展開なのだけど、描き方がレフとイリナの時とほぼ一緒だなぁって。わざと似た構造にしたのかもしれないけれど・・・・・・対比的な・・・?
とはいえ、今回の話も面白かったのは間違いないのですけどね。

 

ところで、あとがきにも書いてあったけれど、今回の物語とネタが被ったらしい映画「ドリーム」が気になっています。
公開時に面白いぞって評判は耳にしてたんだよなぁ。今度レンタルしてこようかな。

 

さて、コミカライズが始まるそうなので、本作自体もまだ続くのだと思います。続くよね?
もし続くならイリナ&レフとバート&カイエが合流するのか、それとも他にも宇宙を目指すペアが新たに登場するのか。
エピローグでイリナたちが出てきたことを考えると合流展開かな?
続きがとてもが楽しみです。

 

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