淋しき王は天を堕とす ―千年の、或ル師弟―/守野伊音


淋しき王は天を堕とす ―千年の、或ル師弟― (角川ビーンズ文庫)
淋しき王は天を堕とす ―千年の、或ル師弟― (角川ビーンズ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2017年12月刊。
第15回ビーンズ小説大賞「優秀賞」受賞作。
天人と人間の争いが続く世界で出会った、とある師弟。
悲劇的な運命を背負う二人の関係を、時にシリアスに、時にコミカルに描いていくラブファンタジーです。
ストーリーラインや設定は重いのだけど、主人公の明るさとコミカルなノリに包み込まれているため、とても楽しく読むことができました。
ていうか、「背中に羽を持つ天人」とか、「戦場の神殺し」とか、「愛してるけど殺さなきゃいけない」とか、「愛してるから殺してあげる」とか、そういう中二あふれるゴシックファンタジーな雰囲気が好きて・・・・・・
ぶっちゃけ性癖に刺さりすぎてしんどい!

☆あらすじ☆
天人の“師匠”は、敵対する人間の王・ルタに殺された。彼女の最期の願いは、愛してしまったルタの幸せ。しかし千年後、人間・アセビに転生した“師匠”が見たのは、神話として語られ孤独に生きるルタだった。
互いに恋しても、種族が、世界が、誤解が、邪魔をして“相手を幸せにできない”と空回る想い。共に在ることが叶わないなら──変えるべきは世界か。
第15回ビーンズ小説大賞優秀賞受賞、魂に刻まれた恋物語。電子特典としてルタとアセビの“その後”を描いたショートストーリーを収録。

以下、ネタバレありの感想です。

 

孤独を癒やしてくれた弟子に無償の愛を捧げ、殺される瞬間まで彼の幸せを願った女。
託された悲願を隠して弟子入りした結果、愛した女を失う代償に孤独となった男。

 

正直、この設定だけで大変エモい・・・!
特に、討つべき相手であるアセビを愛してしまったルタの心境が美味しすぎて。
第二章のルタ視点とかエモすぎて心がどうにかなりそうでした。
「・・・・・・もう、許してくれ」の台詞の切なさよ・・・・・・

 

拠って立つ種族の違いに引き裂かれ、一度は不幸な結末を迎えたアセビとルタ。
序盤から壮絶なバッドエンドに殴られて動揺したものの、続く日常は予想外にコミカルで更にびっくりしました。
「殺した男と殺された女」という悲惨すぎる背景があるのに、「そんなことよりもルタが可愛い!」っていうアセビの無尽蔵な愛情によって暗鬱な空気は押し流されてしまうんですよね。アセビの愛が強い。

 

とはいえ別にシリアスが死んでいるわけでもなく、のほほんとした日常の中に見え隠れするほの暗さが、やがてアセビに牙を剥くのです。この塩梅がまた良い。
ほんとねー、1章終盤の展開といい3章中盤の展開といい、ポーンと上げたところでドーンと落としやがって・・・・・・おかげで最後まで物語から目が離せなかったよ!

 

何度も何度も血に塗れる師弟の恋路。
優しく積み重なる幸せがあっという間にひっくり返される絶望感といったら・・・・・・なんて凶悪な鞭展開なのか。

終盤でルカを解放するために舞い戻ったアセビの心境とか、本当に切なくて。
ただ、アセビの覚悟自体は痛々しいのだけど、このシーンの彼女の心情描写は哀しみを忘れるほどにロマンチックなんですよねぇ。

今度は私が終わらせる。もう少しだけ待っていて。星を散らして会いに行くから。あなたが月に溶けてしまう前に、私の手で、あなたに終わりを持っていくから。

翼を持つ天人ならではの表現が本当に素敵。
アセビのまっすぐな愛情を一際強く感じる場面でした。

 

様々な苦難に襲われ、互いに負い目を抱えながら、それでも愛を貫いたアセビとルタ。
二人の恋が悲恋に終わらずに心の底からホッとしました。
こんなに切ない物語がバッドエンドで終わったら立ち直れないところだった・・・・・・

何でも「全部」与えてきたアセビが、ルタと生きるために「半分」を自分に残したっていう結末も最高です。
見返りを求めないアセビの愛は危うさも感じていただけに、ラストシーンは感動もひとしお。与える師匠と与えられる弟子の関係が、分かち合う恋人同士になったんだなって。

 

また、アセビとルタを取り囲む周囲の人々の温かさも尊くて、この世界に浸っている間の多幸感もすごかった。居心地良すぎです。
天井裏と床下でムーディーな演出に励むおじいちゃんたちも好きだし、アセビの親友ローリヤも最高。

「十年間の鬱憤、ここで晴らさずしていつ晴らすの! あなたはきっと帰ってくるって信じてたけど、それが百年後か二百年後だったら流石に待てないから、子ども達に待っていてもらおうと頑張って産んだんだからね!」

この台詞、勢いあまって泣いた・・・・・・
ルタへの恩義を1000年も抱え続けた人々が象徴的だけど、この物語って連鎖し受け継がれるのは憎しみだけではないっていうのがまた良いものでした。

 

天人のように長命ではないけれど、人の愛は時間を超えるし次代へ繋がっていく。
こんな人々と一緒に居られるのなら、アセビとルタの未来もきっと温かいものになるはず。
ようやく掴んだ明るい未来に思いを馳せ、とても幸せな気持ちになれる読後感でした。

 

綺麗に終わっているから単巻ものかな?
守野伊音さんの次回作も楽しみにしています!

 

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