どこよりも遠い場所にいる君へ/阿部暁子


どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)
どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

評価:★★★★☆
2017年10月刊。
心に傷を追った少年と、40年前の過去からやってきた少女のボーイ・ミーツ・ガール。
学校教育に力をいれている離島の高校を舞台にした、爽やかで切ない青春小説でした。
主人公とヒロインの甘酸っぱい恋模様も素敵だったのだけど、個人的には主人公と親友の関係の方が印象に強く残っていたり・・・・・・
周囲から「王子」と「乳母」って呼ばれるような、仲良し(すぎる)男子高校生コンビ、どう思います? 尊くないです??

☆あらすじ☆
ある秘密を抱えた月ヶ瀬和希は、知り合いのいない環境を求め離島の采岐島高校に進学した。
采岐島には「神隠しの入り江」と呼ばれる場所があり、夏の初め、和希は神隠しの入り江で少女が倒れているのを発見する。病院で意識をとり戻した少女の名は七緒、16歳。そして、身元不明。入り江で七緒がつぶやいた「1974年」という言葉は? 感動のボーイ・ミーツ・ガール!

以下、ネタバレありの感想です。

 

とある事情を抱え、実家から遠い離島の高校に進学した少年・月ヶ瀬和希
「神隠しの入り江」で倒れている少女・七緒を助けたことをきっかけに、和希は島に伝わる神隠しとマレビトの伝承を知ることになるのです。

 

 

和希の心を暗くする過去の事情、七緒のタイムスリップの秘密と彼女の事情、そして文化祭に向けて賑やかになっていく高校生活と友人たち――
寮のルームメイトである仲良し四人組の軽快なやり取りにフフッと笑ったり、和希と七緒の甘酸っぱい距離感にニヨニヨしたり、かと思えば、方舟の悪夢を通して語られる和希の心の闇にゾッとしたり、思わぬヤンデレ登場にさらにゾッっとしたりと、青春の明暗が入り乱れてテンポよく進んでいく物語はとても読み応えがありました。

 

特に和希の過去については、思春期の繊細な心がズタズタに引き裂かれていく様が真に迫っていて、こちらの胸が痛くなるほど。
ある日突然に「加害者(犯罪者)の家族」になることの苦しみと、「正義で裁いても良い人間」を見つけたときの人の醜さ。それを一方的に押し付けられて、どんどん疑心暗鬼に囚われていく和希を哀れに思わずにいられません。
彼が見る悪夢は破滅的なんだけど、自分の大切な人たちだけを逃して大嫌いな世界は自分ごと消えてなくなればいいっていうのが・・・・・・
投げやりな願いの中に優しさが残っているのが彼の人柄そのものって感じがします。
本質的に善良な人間なんだと思うほど、そんな子がここまで追い詰められていることがただただ辛いのです。

 

 

和希が抱える苦しみはあまりにも重いのだけど、物語が重くなりすぎないのは周囲の人々の優しさと温かさに包まれているからでしょう。
特に和希の親友・幹也は本っ当に良いキャラをしてました。
最初は「え・・・・・・DKってDKをこんなにお世話するもの・・・?親を切り捨てても離島までついてくるとか愛が重くない・・・?」とか震えてたんだけど、幹也が和希を過剰に気にする理由がわかると、なんかもう胸が苦しくて(萌えで)
自分のせいで親友の家族を壊したとき、そこから逃げてしまう人も多いと思うんです。だって自分の罪を見続けるのは絶対に辛いでしょ。
うざがられても和希につきまとった幹也の心にあったのは、罪悪感以上に深い友情があったからだと思うし、その思いやりは押し付けがましいものであっても、和希の心を救っていた部分は絶対あったはず。最終的に和希の心を救ったのは七緒だけど、そこに繋いだのは幹也ですよね?
なんかもう・・・・・・なんなの!なんなの!?この男子高校生コンビ・・・!

 

ボーイミーツガールの小説なのに、男子高校生の友情の方が心に残りすぎてどうしよう・・・・・・
いやだって、おっとりしててお人好しなところがあって「王子」なんてあだ名ついてる男子高校生と、王子のお世話を「お前あいつの何なの?」って戸惑うくらい焼く「乳母」の男子高校生ですよ???ちょっと可愛すぎじゃない???
和希が意識を取り戻したときに横で幹也が手を握ってたシーンとかも「いやいやお前はヒロインかよ!!」って心の中で総ツッコミでした。幹也、お前はほんとに和希の何なの?

 

そんな感じで終盤まで私の中では「幹也ヒロイン説(もしくは和希が幹也のヒロイン説)」が濃厚だったのだけど、終盤で七緒がヒロインとしてどんどん存在感を増してきたのにはちょっとホッとしたりw
だって一応ボーイミーツガールとして読んだんだし!

 

七緒と和希の恋の結末については切ないけれど、爽やかな読後感が残るもので良かったです。
完璧なハピエンとは言えないけれど、逃げ出した先で出会った和希のために、巡り巡って七緒が逃げ場所を用意してあげていたっていうのが素敵ですよね。七緒の願いが込められたお手紙は正直泣きました。

 

ちなみに七緒の正体の伏線は最後まで全く気づかなかったので「ええっ!?」ってなりました。これはやられた・・・・・・

 

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